つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

次は何を読むかな

2006-06-04 17:31:14 | 小説全般
さて、久々の児童文学だねの第551回は、

タイトル:南の島のティオ
著者:池澤夏樹
出版社:文春文庫

であります。

ミクロネシアのある島をベースに架空の島で起きる出来事を、ティオという少年を中心に描いた短編連作。
のんびりとした南の島に残る不思議や、そこで出会う島民や旅行者たちの物語が10編収録されている。
例によって各話ごとに。

「絵はがき屋さん」
その絵はがきで手紙を出すと、受取人が必ずその絵はがきに描かれた場所を訪れると言う絵はがき屋さんが作った絵はがきで、ほんとうに島に観光に来た観光客と、その絵はがき屋さんの話。

「草色の空への水路」
珊瑚礁に囲まれた礁湖で起きるボートの事故を防ぐために作った水路の構築と、完成式典で勝手なことをして拗ねた神様がいたずらをした話。

「空いっぱいの大きな絵」
どこか遠くへ行きたいと願っていた少女と、ティオの父が経営するホテルに滞在している奇妙な観光客の話。
観光客がティオなどの子供たちに花火で空に絵を描く様子からのタイトル。

「十字路に埋めた宝物」
幸運を独り占めにすると同じだけの不運が訪れるから、十字路に埋めてその幸運を分ける、と言うささやかなまじないにも似た言い伝えから、せっかく舗装したばかりの道路に穴を開けて、その幸運の宝物を掘り出すひとの話。

「昔、天をささえていた木」
流木を探しに来た日本人の女性の手伝いをするティオとヘーハチロと言う島民の話。
流木を探すところと、その女性がいたく気に入ったが大きくて日本に持ち帰れなかった流木をヘーハチロがもう何年も管理している。

「地球に引っぱられた男」
神々の怒りを買ってスーパーマーケットを経営する男が転落死する話。
変人と言われながらもいわゆるシャーマンのような存在のカマイ婆の予言があり、素朴な土俗信仰の不思議さが垣間見える。

「帰りたくなかった二人」
1週間の滞在予定の観光客ふたりが、島を気に入り、どんどん滞在期間を伸ばし、島での生活を謳歌して帰っていく話。

「ホセさんの尋ね人」
第二次大戦中、恋仲となった女性を捜すために訪れたホセと、その女性を捜す手伝いをするティオとその父の話。

「星が透けて見える大きな身体」
島で医者をしているアンドー先生の娘で島の人気者のアコちゃんが、原因不明の病に倒れ、それを助ける話。
あまりにかわいい子は、天の者が天へ連れて行ってしまうと言う神隠しやチェンジリングなどの昔話のようなファンタジー性がある。

「エミリオの出発」
台風によって島に非難してきたククルイリック島の少年エミリオが、単身カヌーを駆ってククルイリック島に戻るために出発するまでを描いた話。

以上10編。

いやぁ、おもしろくなかった。
「星が透けて見える大きな身体」とか、カマイ婆の出てくる話はそれなりにファンタジーっぽい感じがあって、マシなほうだが、それ以外は、まぁ読むのがめんどくさくなるくらい。
文章もなんか薄暗くて鬱蒼とした森を歩いてるみたいにばしばし引っかかって読みにくいし、おかげで流れも悪いし。

これが児童文学の賞らしい小学館文学賞を受賞した作品なのだから、やっぱりああいう賞の選考をするひとの頭の中身はわからない。
まぁ、実際子供が読むととてもおもしろいのかもしれないけど。
……ってなんかそう思うと、年のせいか!? と、ちらっとでも思わないことはないけど(爆)