つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

脳みそは放浪してます

2006-06-09 21:07:22 | 小説全般
さて、図書館はやっぱ古いのがけっこうあるねぇの第556回は、

タイトル:麻雀放浪記(一) 青春編
著者:阿佐田哲也
出版社:角川文庫

であります。

麻雀マンガ雑誌やマガジンなど、様々なジャンルで描かれているものの原作。

時代は終戦直後。
焼け野原になった東京を舞台に、阿佐田哲也、通称坊や哲が博打の世界での活躍を描いたもの。

まずは初っぱなから哲也と戦時中のある工場で知り合いになった上州虎というおっさんのチンチロリンから。
しばらくはチンチロリンで話が進み、そして麻雀へ。

とは言うものの、初っぱなから勝負師として強いわけではなく、チンチロリンの賭場で知り合ったドサ健に連れられ、クラブの別室で行われている賭け麻雀を経て、クラブのママに博打のイロハを教えられ、そこから勝負師……バイニンとしての坊や哲が誕生する。
しばらくはこのクラブのママのもとにいた哲也は、ひとりで雀荘へ行くようになり、そして二人目の相棒である出目徳と言うバイニンとコンビを組むようになる。
だが、それはコンビ打ちの手下格。

コンビとは言ってもそのうち打ち負かしてやると心に秘めつつ、上州虎、ドサ健、出目徳、中盤から登場する女衒の達などの博打打ちたちとの戦いが終了して、青春編は終了する。

どうもこの小説を原作にしたものと言うと、マガジンで連載されていたのを思い出してしまうので、どんなもんかと思っていたら、マンガよりもこっちのほうがおもしろい。
マンガ……特に少年マンガだと、少年マンガらしさが必要なのだろうから、けっこう派手だったり、とにかく勝負の場面を見せる面が強かったりするけど、この原作のほうはそれだけではなく、主人公や、上州虎やドサ健などの他の勝負師の姿をもしっかりと描いていて、キャラがとても人間くさく見えてくる。

実際、主人公の哲也にしてもクラブのママの半分ヒモのような状態でいたりするしね。
また、出目徳と哲也に根こそぎ奪われたドサ健の姿を描いていたり、主人公だけに偏らない人物描写も、各キャラの人間くささにつながっているのではないかと思う。

まぁもちろん、文章とか、構成、流れなど、あらがないわけではない。
哲也の一人称でありながら、他のキャラ中心に展開していくのがけっこうあったりするのはどうかと言う気がしないでもない。
とは言え、それを補えるだけのパワーがあるし、ストーリーそのものは単純におもしろく読める。
ただ、麻雀の基礎知識くらいはないときついかなぁ。