つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

燃えさかる

2006-01-17 20:38:22 | SF(国内)
さて、三夜連続企画第二弾な第413回は、

タイトル:マルドゥック・スクランブル The Second Combustion――燃焼
著者:冲方 丁
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

マルドゥック・スクランブル三部作(というか三冊で一作品)の二冊目。
一冊目についてはこちらを参照。

傷ついたバロットが訪れた地――『楽園』。
完全なる個体を目指す少年トゥイードルディ、電子の海を泳ぐイルカ・トゥイードルディム、楽園の管理者フェイスマンとの出会い。
部屋中に広がる熱帯樹林、澄んだ空気と暖かい日差し、居ながらにして世界を知ることができる情報端末……そこはバロットが知っているのとは別の『殻』だった。

だが、バロットは楽園ではなく、自分の世界を選ぶ。
自分のために、ウフコックのために、新たに得た生きる目的と向き合わなくてはならないことを彼女は知っていた。
目指すはシェルの経営するカジノ、手にすべきチップは封印された忌まわしき過去、しかしその道は平坦ではない――。

あ、不思議の国のアリスか!(今更気付く奴)

本巻は二部構成になっています。
前半は『楽園』にて、マルドゥックのアリスならぬバロットが自分とは違った道を選んだ人々と出会い、その後、ウフコックへの愛を再確認する話。
後半はシェルの経営するカジノでダークサイドに生きる人々の横顔を知り、自分の選択が引き起こすものとそれに対する覚悟を求められる話。

バロットの成長物語という意味では一貫していますが、前半はちと冗長。
ウフコックやボイルドのルーツを書くためには外せない、とは思うのですが、にしても楽園内の時間は退屈です。(イルカのセクハラは笑えたけど)
フェイスマンとボイルドのやりとりも……あー、いかにも安全圏にいる人間と飢えてる人間の会話って感じで、ムカムカします。

んで後半、前巻で傷ついたウフコックがようやく戻ってきます。
バロットとのつかず離れずの関係、ドクターとの漫才のような会話……一気に読むペースが上がりました。(笑)
正確な判断力と煮え切らない態度も健在で、カジノではバロットを支えて大活躍します、やはり彼がいないと始まらない。

問題のカジノでの戦いですが、ギャンブル嫌いの人でも楽しめると思います。
ルーレットの文字盤の説明とか見るとウンザリするかも知れませんが、細かいところは無視して心理戦を楽しめばよいかと。
特に超A級スピナーのベル・ウィングとの対決(?)は秀逸で、単なる博打ではなく、お互いの人生を語り合うような雰囲気で進行します。

非常に盛り上がるカジノ編ですが、大勝負を残して次巻に持ち越しとなります。
もちろん、最後に待ち受けるのはギャンブルの王様××××・××××。
本巻が楽しかった方は三巻も続けて読むことをオススメします。

うーん、本巻はカジノ編だけでいいかも。
次巻は? それはまた明日述べます。