つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

星の王女さまはどこ?

2006-01-09 23:53:23 | 文学
さて、こんなに短い話とは知らなかった第405回は、

タイトル:星の王子さま
著者:サン=テグジュベリ
文庫名:集英社文庫

であります。

名前だけ知ってて読んだことのない本でした。
有名な作品だから下手なことは書けないな――
などと私が思う筈もないので
いつものように斬るべきとこはバッサリ斬ります。

飛行機の故障で砂漠に不時着してしまった男。
彼は、そこでとても不思議な子供に出会う。
その子――星の王子さまは出会い頭に言った、「すみません、ヒツジの絵を描いて」

王子さまはしつこくヒツジの絵を描くことを要求する。
男は、ヒツジを描いたことがなかった、飛行機も早く直したかった。
しかし余りにも王子さまがしつこく同じ言葉を繰り返すので、しぶしぶペンを取り出して絵を描き始めた。

王子さまは別の星から来たのだという。
それはそれはとても小さな星から……。
王子さまはゆっくりと、ここへ来るまでに出会った人々のことを話し始めた。

遠い星からやってきた王子さまと語り部である男の対話、という形を取った物語。
男はモロにサン=テグジュベリ自身ですが、実は王子さまも作者であることはすぐに解ります。
とはいえ、この王子さまのキャラクターが素晴らしい……まさに子供そのもの、しかも賢さを備えた。

王子さまは疑問を素直に口にします、答えてくれなかったら何度でも尋ねる。
王子さまは非常に前向きです、大人が切り捨てたものを楽しむことができます。
王子さまは自分の話を最優先します、口を挟まれても無視。

人の話を聞けっ!

五分だけでもいい~♪
いや、そこが子供らしくていいんですけどね。(笑)
王子さまが出会った人々にぶつける疑問も非常にそれらしいし。

とはいえ、気になる点もないではありません。
王子様と風刺化された人々の会話が非常に説教臭いのです。
作者が自分の哲学を、直接表現で書いているとしか思えない。

あと、これは翻訳の問題……多分。
最重要キャラのキツネが語る、『仲良くなる』ことが『飼い慣らす』という言葉になっていました……どうにかしてくれ、酷い表現だ。
もっともキツネとの会話をよく読んでみると、男性至上主義の臭いがちらほらしてるので、この訳語も間違いではないのかも知れませんけど。

総評としては微妙、子供の頃に読んでいたら印象変わってた、とは思いますが。
童話、ではなく、哲学書に近いかも、あとは好みの問題ですね。

あ、最後に。
王子さまが旅立つきっかけとなった一本のバラの花――
物凄くいい女
です、これが最大の収穫かも。