つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

萌えてくれ

2006-01-13 23:59:13 | ファンタジー(現世界)
さて、いや私は萌えはしませんがねの第409回は、

タイトル:乃木坂春香の秘密
著者:五十嵐雄策
出版社:電撃文庫

であります。

このところ、加納朋子のおかげでいいぞいいぞと言い続けてきたので、たまには辛口(?)のもありかなぁ、と思って、以前の「ご愁傷様 二ノ宮くん」のように、いかにもな表紙、帯の煽り文句、裏表紙などの作品解説を参考に、買ってみた。

で、物語はと言うと、ヒロインを完全無欠の「お嬢さま」と、平凡で、のらりくらりとどっちつかずの主人公の、これでもかと言わんばかりのベタベタなラブコメ。
おそらく、そういうのが苦手なひとには、まずもって「手に取るな」と忠告したくなるほど、ベタ。

まずラノベなので、主人公より先にヒロインのキャラだが、完全無欠と言うように、主人公が通う高校において知らぬ者はいないと言えるほどの富豪の長女であり、数多くの習い事をこなしつつ、そのすべてにおいてプロ級であり、常に学年トップを走る頭脳明晰であり、性格もかわいらしく、穏やかで、誰にでも分け隔てなく、学校のほぼすべての男子(一部女子)の人気を一身に受け、いくつものファンクラブが発足する、と言う徹底的なベタ設定。

タイトルそのままの名前だが、これもお約束で、お嬢さまだが本来はドジであり、アキバ系趣味だが、周囲が勝手に作るイメージから、こうした趣味を秘密にしている。
もっとも、中学時代、このことがばれて、学校での生徒たちの変化がトラウマになっている、と言う設定もあるのだが、これもお約束と言っていいだろう。

主人公の綾瀬裕人は、ある出来事から、この春香の秘密を知ってしまい、そこから定まりのラブコメが展開する。
ストーリーは、読もうと思うなら、さぶいぼは確実に覚悟しておくようにと言えるほど、ベタ甘なので注意(笑)

この他、女性キャラとしてはサブキャラとして、姉とは正反対のしっかり者で、姉思いだが、基本的に甘えん坊タイプのキャラである春香の妹の美夏。
乃木坂姉妹の世話を一手に引き受ける、無表情でぶっきらぼうだが、ドアを開けない春香に対してチェーンソーを持ち出すメイド長の桜坂葉月。
だらしないが弟に対しては傍若無人な裕人の姉と、高校の音楽教師であり、姉の親友の女性。

……など、狙いまくってんな、作者……としか言いようがないキャラ設定。

で、肝心の評価と言うと、意外に読めた、というところ。
もちろん、酷評するために買ったものだから、そのぶんを差し引いたとしても、裕人の一人称で軽快に語られる文章は読みやすかった。
構成も、この作者、短編の賞でデビューした関係か、短編連作のスタイルで、1話が比較的短く、これも軽く読むには適しているだろう。

そして何より、このベタっぷりに突き抜けた設定と展開がいい。
上記の「ご愁傷様~」のように、だらだらとどうでもいいような説明をすることなく、ここまで徹底的にベタっぷりを貫き通してくれると、いっそのこと気持ちがいい。

なので、完全無欠の萌え系の小説ではあるが、これには及第点と言っていいだろう。
ただし、何度も言うように、こういうのが苦手なひとはバカを見ること必至なので手に取らないように。

と言うか、おそらく、そういうひとは、表紙絵だけですでに退いてしまうだろう。
かくゆう私も、「さて、酷評するか」という気がなければ、かなり退いてしまう表紙絵なので。
(怖いもの見たさに確認したいひとは、上記アマゾンリンクから。ただこのリンクには画像はないが、2巻、3巻にはあるので、そちらを見てみよう。ただし、苦情はいっさい受け付けませんのであしからず(笑))



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