20170819今日の一手
7月8日の名南将棋大会から、TさんとIさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
金と飛歩の交換で、持ち歩があるので歩はカウントせず、馬を作られていますしほぼ損得なしと見ておきます。終盤ですから細かいところまで比較しないで良いです。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は89飛55角と持ち駒飛桂で4枚。
後手の攻め駒は47銀49馬と持ち駒金桂で4枚。
総合すれば後手有利です。
互いに攻め駒が4枚ある寄せ合いですから、何手で詰めろになるかを数えたほうが正確で、後手玉は74歩~73歩成が詰めろで現状は3手すき。
先手玉は38歩~39馬同飛同歩成が詰めろで現状3手すき。
手番があるので先手有利です。
☆ 大局観として
74歩~73歩成で詰めろですが、73同銀の時に詰めろが続くか、というとちょっと不安です。後手はまだ受ける余地があるわけです。
先手玉はというと、直前に49馬(か角成か)と入られて詰めろ、89に自陣飛車を打って受けたのが好手で、48歩と受けさせて詰めろがかからず、1手すきを1手かけて3手すきにしたわけです。さらには馬が質駒になっている状態で、持ち駒には角もある(代わりに89飛は縦に動けないので攻め駒とは言えない)と思っておいた方が良いです。実際のところは55角と持ち駒飛角桂で4枚の攻め駒です。
互いに弱みがあり、変化も多そうで、形勢不明というところでしょう。
× 受けるなら38桂と埋めるわけですが
後手の38歩あるいは38金を防いでいます。これには15香16歩(同香には16桂の筋)同香同香39馬
39同玉には19銀
で必至です。
39同飛は49金
と打たれて次の39金は詰めろではないようですが受ける手がないです。
38桂の1手で3手すきが4手すきに延びたけれど、持ち駒が少し変わってこの図は先手の負けなのです。(桂馬を持っていないのが原因です。)
× 実戦は74歩と突きだして
38歩に73歩成同銀同角成同桂74桂
とそれらしく迫ったのですが、堂々と39馬同飛同歩成
で後手玉が詰まないので、先手の負けになりました。詰みそうにも見えるのですけれど。
× 74桂は角を持てば詰めろの手ですが74同歩
で早すぎます。(角を持っても)詰めろになる手がないです。
○ 有力なのは82歩で
82同玉なら49飛が詰めろです。
受ければまだ長いと言っても、食い逃げされては駄目でしょう。
よって82歩には38歩
で寄せ合いです。81歩成同玉83歩
が継続の手筋で、39歩成49飛38と17玉25銀(あるいは39馬同飛同歩成)
で詰めろですが、82歩成同玉74桂81玉92角
という格好いい手があって、92同香82歩71玉91飛
清算して82銀で詰みます。
途中74桂に71玉でも83桂
があって、83同銀82角81玉91角成
以下の詰みがあります。
○ もう一つ有力なのが83歩で
38歩に82歩成同玉49飛
が詰めろ。ただしこの先があって71玉に飛車を逃げてよし、というわけにはいきません。48銀同銀成同飛39銀
で後手の攻めは続きます。17玉48銀成に82角(取れば詰み)62玉11飛
で詰めろで飛を打って、上部脱出もあるので先手優勢です。
最初の82歩成に62玉も11飛
が角を手に入れたら詰めろになるので先手が良いでしょう。
さらに戻って83歩に同銀
の時にどうするか。82歩38歩81歩成同玉に49飛
質駒を取って、49同歩成に73角成72金打82歩
82同金同馬同玉55角73歩74桂
74同銀同歩で詰めろ受け無しです。
× 最初に49飛だと
49同歩成83歩39と
82歩成62玉11飛で詰めろですが
後手の寄せが1手速くなっている(38歩を省略できた)わけで、29と17玉16歩26玉25飛
で詰まされてしまいます。
☆ まとめ
美濃囲いの急所、といってもいろいろなバリエーションがあるわけで、金銀3枚が低い美濃囲い(本美濃囲い)では飛で横から攻められるよりも、角桂を使って小鬢(こびん)から攻められる方が怖いです。
高美濃囲いや銀冠ならば小鬢をカバーしていますが横から攻められたら弱いわけです。
万能の囲いはないですね。(入玉したらいくらでも堅い形になりますが。)
この問題の場合は端も絡んでいませんし、55角が存在しているわけですから、82玉と呼んで74桂(あるいは74歩)を狙うのが本筋です。
82歩のほうが厳しいのですが、81歩成同玉83歩が飛角桂桂をもって詰めろになる、というところまでわからないと負けます。
83歩は詰めろがわかりやすいですが、後手もわかるので粘られた時には(桂馬を取っていないので)明快ではないです。
実は後手としては直前の89飛の受けに48歩が失敗で、38金と打ってしまえば
駒を渡しても82角に62玉とかわせば相当に詰まない形でした。38同銀同馬18玉17歩同玉25銀
詰めろは十分に続いて受けなしになるところだったのです。
将棋は終盤で形勢が逆転することも多いです。どうやったら終盤が強くなるか。やはり詰将棋だ、と思われる方も多いでしょうが、詰め将棋よりは必至問題のほうが良いでしょう。もっと良いのは自分が指した将棋の終盤を検討すること、次はプロの将棋を並べて終盤を検討することです。
目的とするスキルが限定されるなら、よりそれに近い形式で訓練するほうが効率的なのです。
訓練を重ねたら実戦で考えてアウトプットしてみることです。これでしっかり身についていきます。

先手番大山先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170818
昭和56年10月、鈴木輝彦先生と第15回早指し選手権です。

大山先生の四間飛車で、鈴木先生は6筋の位を取ろうとしていました。64歩で拒否されて、75歩で玉頭位取りを目指すのは63銀~72飛の時に66銀の応援が利きません。

64歩を突かせたのは、97角から65歩で53角成が狙えるからです。

95歩に64角と出て

飛角交換で96歩までがワンセット。互いの陣形が違うことがありますが、手順は共通です。飛角交換は序盤は角の方が有利、というのですが、手が進めば飛の打ち込みのほうが気になってきます。

鈴木先生は端を謝っておけば穏やかなのですが、94歩と垂らして(一回金を締まり)

取れば91飛で良し、と判断しました。

大山先生は歩得を生かすべく、角を打っての84歩は狙いがあって

角を切って83銀打で飛を捕獲できました。駒損なのですが、先手陣が薄くなっています。

と金ができて

王手金取り

どんどん手が続きます。鈴木先生はすべての筋を守りようがないので、24歩~23歩成~32と と進めているのですが、形つくりみたいなものです。

大山先生は好調な攻めが続いて

竜と金の取り合いになり

上から押さえつける形ができました。

角銀を取ってしまえば

簡単に詰めろがかかります。鈴木先生は手駒をためての最後の攻撃で

詰みはなくて投了です。
早指しゆえの一直線の変化でした。時間があればもっとゆっくりした展開になったのでしょうけれど、気合も大切です。鈴木先生から技をかけに行ったので、逆用されたら(飛を捕獲、端を逆襲)簡単に悪くなるというのが理屈です。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:鈴木輝彦5段
後手:大山王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二銀(71)
13 9六歩(97)
14 9四歩(93)
15 6八銀(79)
16 7一玉(62)
17 5七銀(48)
18 4三銀(32)
19 6六歩(67)
20 6四歩(63)
21 9七角(88)
22 6二飛(42)
23 6五歩(66)
24 4五歩(44)
25 7七銀(68)
26 9五歩(94)
27 6四角(97)
28 同 飛(62)
29 同 歩(65)
30 9六歩(95)
31 9四歩打
32 5二銀(43)
33 6八金(69)
34 9四香(91)
35 9一飛打
36 9三角打
37 9二飛成(91)
38 8四歩(83)
39 2五歩(26)
40 7七角成(22)
41 同 桂(89)
42 8三銀打
43 9三龍(92)
44 同 桂(81)
45 2四歩(25)
46 9七歩成(96)
47 2三歩成(24)
48 8七と(97)
49 同 玉(78)
50 8九飛打
51 7八玉(87)
52 4九飛成(89)
53 3二と(23)
54 2七歩打
55 同 飛(28)
56 6六歩打
57 同 銀(57)
58 6七歩打
59 同 玉(78)
60 4七龍(49)
61 5七角打
62 4六金打
63 4八歩打
64 5六金(46)
65 7八玉(67)
66 6七歩打
67 4七歩(48)
68 6八歩成(67)
69 同 玉(78)
70 6七金打
71 5九玉(68)
72 5七金(56)
73 4九玉(59)
74 4七金(57)
75 3九玉(49)
76 6六金(67)
77 9四香(99)
78 3八銀打
79 2八玉(39)
80 2七銀成(38)
81 同 玉(28)
82 3八角打
83 1八玉(27)
84 9九飛打
85 9一飛打
86 8一銀(72)
87 8二銀打
88 同 玉(71)
89 9三香成(94)
90 9一玉(82)
91 投了
まで90手で後手の勝ち

後手番中原先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170817
昭和56年10月、石田和雄先生と第40期名人挑戦者リーグです。

大山先生の先手三間飛車、石田先生の64歩は見ない手で

67に銀を上がらせて急戦にするという意味のようでした。大山先生は腰掛銀で受けます。

石田先生は65歩を警戒している感じですが、良い指し方には見えません。

中央位取りに切り替えて、玉頭銀を力づくで受けます。

角筋の止まった位取りですが

落ち着いてしまえばまあまあです。

65歩は本格的な攻めではなくて1歩持つということかと。大山先生は端攻めです。

香を吊り上げられては端が受からなくなりました。石田先生は端を謝って玉を逃げ出すのが良かったでしょう。

居飛車党だと、こうやって金を寄せて攻めの形になればずいぶんうまいように見えるかもしれないのですが

香を取られたのは痛いです。代償に26歩の拠点ですが

23香、13歩まで決められてはうまくないです。

金で玉頭の駒を払いに行きますが、大山先生の55金は気持ちよいです。

銀の取り合いから21銀が入って

飛を取って43金と捨てます。43同金は52飛成32金33角成同金寄42竜での寄り筋。

飛車を成れれば簡単で

投了図。
大山先生の快勝譜です。居飛車が仕掛けを失敗して第二次の駒組みになると、ほとんどは大山先生の作戦勝ちになってしまうのです。石田先生は端の応接が悪かったのだと思います。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:石田和雄8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 8五歩(84)
5 7七角(88)
6 3四歩(33)
7 6六歩(67)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 5八金(69)
16 6四歩(63)
17 6七銀(68)
18 7四歩(73)
19 5六銀(67)
20 5四歩(53)
21 2八玉(38)
22 4二銀(31)
23 3八銀(39)
24 5三銀(62)
25 4六歩(47)
26 1四歩(13)
27 1六歩(17)
28 6三金(52)
29 9六歩(97)
30 7三桂(81)
31 6八飛(78)
32 5五歩(54)
33 4五銀(56)
34 3三銀(42)
35 5六歩(57)
36 4四歩(43)
37 3六銀(45)
38 5六歩(55)
39 6七金(58)
40 5四銀(53)
41 5八飛(68)
42 5二飛(82)
43 5六飛(58)
44 2四歩(23)
45 5九飛(56)
46 5五歩打
47 2六歩(27)
48 2三玉(32)
49 2七銀(38)
50 3二金(41)
51 3八金(49)
52 3一角(22)
53 6八角(77)
54 5一飛(52)
55 2五歩(26)
56 同 歩(24)
57 同 銀(36)
58 2四歩打
59 3六銀(25)
60 4二角(31)
61 2六銀(27)
62 2二玉(23)
63 2七銀(36)
64 6五歩(64)
65 1五歩(16)
66 同 歩(14)
67 1四歩打
68 同 香(11)
69 4五歩(46)
70 同 歩(44)
71 2五歩打
72 5三金(63)
73 2四歩(25)
74 6六歩(65)
75 同 金(67)
76 6一飛(51)
77 7七角(68)
78 4四金(53)
79 2五銀(26)
80 3五金(44)
81 1四銀(25)
82 2六歩打
83 2三香打
84 1二玉(22)
85 1三歩打
86 同 桂(21)
87 1八銀(27)
88 2五金(35)
89 5五金(66)
90 2四金(25)
91 5四金(55)
92 1四金(24)
93 2一銀打
94 同 飛(61)
95 同 香成(23)
96 4六歩(45)
97 4三金(54)
98 2一玉(12)
99 4二金(43)
100 同 金(32)
101 5一飛成(59)
102 3二玉(21)
103 3一飛打
104 2三玉(32)
105 3三角成(77)
106 同 金(42)
107 同 飛成(31)
108 同 玉(23)
109 4二角打
110 投了
まで109手で先手の勝ち
20170817今日の一手
7月8日の名南将棋大会から、IさんとTさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
角と金歩の交換で、歩をカウントしないので先手の駒損です。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は86飛と持ち駒金銀で3枚。
後手の攻め駒は24飛と持ち駒角銀銀で4枚。十分です。
総合すれば互角です。
☆ 大局観として
相振り飛車で、角銀交換ながら攻勢を取り、61に銀を割り打って1枚金を剥がしたところ。玉の堅さが大きく上回っていますが、持ち駒を多く渡してしまいました。
こういう相手の守り駒を持ち駒にさせる攻め、金銀を金銀ではがす攻めですが、相手の持ち駒の価値が高いかどうかというのが判断のポイントです。渡した駒で攻められたら悪いですし、盤上に守り駒が無くなって相手玉が薄くなったことを利用できれば良いです。
この場合は後手玉が薄すぎて、後手からは駒を渡しにくい(先手の攻め駒が増える)ので得をしていると思います。
また後手玉のまわりに金銀を打って守られないうちに攻撃続行できれば有利になるのですが。
駒損ですし、ゆっくりしないで攻める手を探しましょう。
○ 9筋から順にみていきます。95歩の突き捨ては
攻めの幅が広がります。突き捨ては得になることが多いでしょう。理想的には95同歩93歩同香85桂94香74歩
74同歩73歩同桂93金
71玉73桂成同金82銀
で金を取って飛を成れば勝ちです。
うまくいきすぎました。後手はどこかで84銀
と打って守ります。これで継続がなかなか難しいのです。
少し工夫しましょう。92歩から連打して
92同香93歩同香85桂94香74歩
74同歩に95香同香73歩
73同桂93金71玉73桂成同金82銀
とすればよいですね。
後手はこうならないようにどこかで変化を考えるわけですが、先手が十分指せていると思います。
△ 84歩は
84同歩に83歩同金63銀71銀
で62金と絡んでいく感じです。
また、83歩に同玉
というのもあります。2歩あれば85歩同歩84歩で終わりなんですが、歩切れですからこれだけでは難しいです。
△ 実戦は74歩で、75銀と打たれました。
74同歩には85桂で73歩を狙ってまあまあでした。以下は73歩成同金88飛84歩(85桂を避けた)74歩同金63銀
こういう時は83銀と埋めておくものなのですが、73金74金63金
83歩72玉を入れるか入れないか、で75金と銀を取れば先手有利でした。金のほうを取ったので83銀と埋められ、以下は後手玉が上に逃げ出されることになり、後手Mさんの勝ちに終わりました。
△ 65歩は
桂馬を使う手で、65同歩に同桂
とするのでしょう。後手の飛の横利きが通ったのが気になります。いろいろ考えられますが、77角26飛25歩46飛45銀76飛99角成
は後手を持ちたい感じです。
○ 見えにくいですが、35金23飛24銀
で飛を取れます。金銀を打って飛を取るのですから威張れた感じでもないのですが、飛をもって角取りに打ち込めそうです。これは先手有利。
△ 32金と打つこともできます。
13角33金
はまあまあ。33金の働きが弱い(攻め駒でも守り駒でもない)のですが2枚換えです。金を左に寄せていくことも考えましょう。
角を見切って62銀22金同飛
は駒の損得が無くなります。これはほとんど互角。54歩などと攻めていきます。
△他には28玉と入城する手で、13角くらいか。
35金や32金を防がれたわけですが、13角自体は働きが良くない(45桂~55角と使いたかった)わけで、ここから95歩か84歩か74歩か65歩か、攻めることを考えます。
☆ まとめ
相居飛車や相振り飛車では、相手の玉を攻めるだけではあまりうまくいかないときがあります。そういう時に「攻め駒を責める」とか「B面攻撃」とか言いますが、反対側に手を探してみるのです。
間違うとひどいことになりますが、案外に有効であることも多いです。
35金や32金、後手から見ると74歩に75銀ですね。
普通に攻めるなら持ち歩が少ないということもあり、端を絡めたいです。香車を捨てて1歩得ることも選択肢に入るわけで、攻めの幅が広がります。

後手番田丸先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170816
昭和56年10月、中原誠先生と第22期王位戦第7局です。

大山先生の先手三間飛車、中原先生は天守閣美濃で

74歩と突いておいての44歩、これは欲張りなのです。でも45に位を取られないので収まってしまえば少し作戦勝ちになりやすいです。

後手のほうが玉が堅いですね。大山先生は左翼で利を得られるか。

抑え込んで74歩~73歩成がまわればよくなります。

中原先生は行きがかり上で角金交換。

46の歩を払えば大山先生が良く見えるのですが

44金から35歩というのが中原先生の勝負手です。91角成36歩46角45金92馬46金、というのは指しにくいのでしょうか

角を引かせて金を出ていけば後手もちに見えます。

隠居していた飛を使えました。

67金の飛取りに、大山先生は と金を寄ります。飛を逃げて悪くもないようなのですが

角損でも と金を捨てて金の両取りで

竜を引き付ければまずまず、という判断でした。ところが88歩が取りにくくて

また竜を潜って寄せに行くのでは調子が変です。

2枚の攻めですから、とりあえず後手玉を乱しただけで

桂を取って一息つけば、中原先生は攻め合いに出ます。

大山先生の手筋の寄せに

中原先生の飛切りからの角の王手も厳しいです。

中原先生は角を捨てて自玉を固めました。金金桂と飛角の交換で、やや大山先生の駒得、後手玉のほうが堅くて、形勢は互角です。大山先生は金銀が少ないので自玉を固めにくいのですよね。後手玉を寄せるか、入玉をみせるか。どちらもまだ難しそうです。

22に銀を打たせつつ、左翼の香を取り馬を作ります。これは入玉の準備です。
中原先生は手が難しそうなのですが、じっと98と で歩の入手を図った、というのが本に出てくる手。見たことがありますか?

1歩入手しての36歩が急所で

打たされた桂が使えて

上から押さえていけば寄りです。

投了図。
大山中原の名局です。形勢の判断も難しく、どちらの大局観が優っているか、という勝負でした。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:中原誠王位
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 8五歩(84)
5 7七角(88)
6 3四歩(33)
7 6六歩(67)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 2八玉(38)
16 1四歩(13)
17 1六歩(17)
18 7四歩(73)
19 3八銀(39)
20 5四歩(53)
21 5八金(69)
22 2四歩(23)
23 4六歩(47)
24 2三玉(32)
25 3六歩(37)
26 3二銀(31)
27 4七金(58)
28 5三銀(62)
29 5六歩(57)
30 4四銀(53)
31 5七銀(68)
32 3一角(22)
33 5九角(77)
34 3三銀(44)
35 6五歩(66)
36 4四歩(43)
37 2六歩(27)
38 4三金(52)
39 6六銀(57)
40 6四歩(63)
41 同 歩(65)
42 同 角(31)
43 7五歩(76)
44 8六歩(85)
45 同 歩(87)
46 4五歩(44)
47 6五歩打
48 4六角(64)
49 同 金(47)
50 同 歩(45)
51 6四角打
52 9二飛(82)
53 7四歩(75)
54 6三歩打
55 4六角(64)
56 4四金(43)
57 3七角(59)
58 3五歩(34)
59 同 歩(36)
60 3六歩打
61 4八角(37)
62 4五金(44)
63 4七歩打
64 5六金(45)
65 7三歩成(74)
66 4二飛(92)
67 5七銀(66)
68 6七金(56)
69 6三と(73)
70 4六飛(42)
71 同 歩(47)
72 7八金(67)
73 5二と(63)
74 同 金(41)
75 7二飛打
76 4七歩打
77 3九角(48)
78 4三金(52)
79 7八飛成(72)
80 8八歩打
81 3一金打
82 8九歩成(88)
83 7二龍(78)
84 4二銀(33)
85 3二金(31)
86 同 玉(23)
87 5二銀打
88 5三金打
89 4三銀成(52)
90 同 金(53)
91 8一龍(72)
92 3七桂打
93 同 桂(29)
94 同 歩成(36)
95 同 玉(28)
96 4四桂打
97 2八桂打
98 6九飛打
99 5二金打
100 3一金打
101 2三桂打
102 同 玉(32)
103 4二金(52)
104 4九飛成(69)
105 同 銀(38)
106 5九角打
107 4八銀打
108 同 歩成(47)
109 同 銀(57)
110 4二金(31)
111 5九銀(48)
112 3二銀打
113 7五角(39)
114 5三桂打
115 3一龍(81)
116 2二銀打
117 9一龍(31)
118 9九と(89)
119 9三角成(75)
120 9八と(99)
121 6四歩(65)
122 3三桂(21)
123 4七香打
124 9七と(98)
125 6三歩成(64)
126 3六歩打
127 同 桂(28)
128 同 桂(44)
129 同 玉(37)
130 4四桂打
131 3七玉(36)
132 5五香打
133 5七歩打
134 4五桂(53)
135 同 歩(46)
136 同 桂(33)
137 同 香(47)
138 3六金打
139 4八玉(37)
140 4七金打
141 3九玉(48)
142 5七香成(55)
143 4八歩打
144 3八歩打
145 2九玉(39)
146 3七金(47)
147 6四角打
148 4六歩打
149 8三馬(93)
150 4七成香(57)
151 同 歩(48)
152 2七金(36)
153 投了
まで152手で後手の勝ち

後手番大山先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170815
昭和56年9月、田丸昇先生と第39期棋聖戦です。

大山先生の四間飛車に田丸先生は天守閣美濃

攻め将棋ですからもちろん急戦です。

大山先生はの56銀から65歩というのは見たことのない受け方です。

田丸先生は角交換を避けたので、銀が戻って

87同銀から飛交換。

飛の打ち込みがあるのならば、攻めの銀の位置の違いで居飛車よしです。

79角67飛成82飛というのは大山先生苦心の受け。

駒を交換してから金が離れて行くのは大山流ではなくて森安流という感じです。

ここからは田丸先生の強手連発です。まずは銀を捨てて香を取り

竜取りに88歩で

少し駒得です。

大山先生は2枚飛車から歩の手筋で乱しにかかりましたが

田丸先生は角で飛を取って

馬を引いて端攻めです。

大山先生は端を受ける前に47香が危険でした。

強く馬を入られて、左は壁なのです。

これで田丸先生が有利。

79と も利いていますね。ぴったりの手が続きます。

大山先生は79竜と と金を払ったのですが、68玉から入玉をみせるのが勝負手ではなかったか。

ぴったりの香があって

桂馬も打って

合駒を請求して

竜を消して金を取れば寄りです。

大山先生の抵抗もうまくいきません。

投了図。
田丸先生の会心譜。たまにこういうきれいに攻め切った将棋が出てくるのです。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:田丸昇7段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 5四歩(53)
13 2八玉(38)
14 1四歩(13)
15 1六歩(17)
16 5二金(61)
17 3八銀(39)
18 2四歩(23)
19 5八金(69)
20 2三玉(32)
21 4六歩(47)
22 3二銀(31)
23 6七銀(78)
24 5三銀(62)
25 3六歩(37)
26 8五歩(84)
27 7七角(88)
28 7四歩(73)
29 4七金(58)
30 7二飛(82)
31 7八飛(68)
32 6四銀(53)
33 5六銀(67)
34 7五歩(74)
35 6五歩(66)
36 5五銀(64)
37 7五歩(76)
38 同 飛(72)
39 6七銀(56)
40 7六歩打
41 8八角(77)
42 8六歩(85)
43 7六銀(67)
44 8七歩成(86)
45 同 銀(76)
46 7八飛成(75)
47 同 銀(87)
48 8七歩打
49 同 銀(78)
50 6八飛打
51 7九角(88)
52 6七飛成(68)
53 8二飛打
54 7三桂(81)
55 5九金(49)
56 4六銀(55)
57 同 金(47)
58 9九角成(22)
59 7八銀打
60 6六龍(67)
61 5六金(46)
62 8八歩打
63 6六金(56)
64 8九歩成(88)
65 6七銀(78)
66 7九と(89)
67 7二飛打
68 5一香打
69 4二歩打
70 同 金(41)
71 6四歩(65)
72 同 歩(63)
73 4四歩打
74 6五歩(64)
75 4三歩成(44)
76 同 銀(32)
77 4四歩打
78 3二銀(43)
79 5六金(66)
80 3三桂(21)
81 3七桂(29)
82 9四角打
83 5八銀(67)
84 7二角(94)
85 同 飛成(82)
86 4四馬(99)
87 6四角打
88 4一金(42)
89 7三角成(64)
90 1五歩(14)
91 9一馬(73)
92 1六歩(15)
93 4七香打
94 4六歩打
95 同 香(47)
96 1七馬(44)
97 同 香(19)
98 同 歩成(16)
99 3九玉(28)
100 1八飛打
101 4九金(59)
102 2八と(17)
103 4八玉(39)
104 3八と(28)
105 同 金(49)
106 5九銀打
107 同 玉(48)
108 3八飛成(18)
109 7九龍(72)
110 6七香打
111 4八歩打
112 4七歩打
113 同 銀(58)
114 6六桂打
115 同 金(56)
116 3九龍(38)
117 4九桂打
118 6九金打
119 同 龍(79)
120 同 香成(67)
121 同 玉(59)
122 6六歩(65)
123 5八角打
124 7七金打
125 4一香成(46)
126 同 銀(32)
127 7八金打
128 6七歩成(66)
129 同 角(58)
130 同 金(77)
131 同 金(78)
132 4九龍(39)
133 5九金打
134 8九飛打
135 7九香打
136 8七飛成(89)
137 7八銀打
138 6六歩打
139 7七金(67)
140 6八香打
141 投了
まで140手で後手の勝ち
20170815今日の一手
7月8日の名南将棋大会から、NさんとMさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
飛金歩と角銀の交換です。持ち歩があるので歩をカウントせず、やや先手の駒損ですが、終盤なので重視しません。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は77角と持ち駒角銀で3枚。
後手の攻め駒は(先手玉に向かっているものだけ数えて)持ち駒飛金金銀で4枚。
総合すれば互角です。
☆ 大局観として
後手玉の薄さが目立ちます。攻め駒が3枚ですが、後手玉を攻略する手段を考えたいです。
ゆっくりした展開にしてもひどくはないですが、小さな駒損でも響いてきます。
× 両取りの見える方なら(私には難しいですが)11角成同玉66角
で王手飛車です。これは22銀84角79飛
わずかに先手の駒得ですが、後手に取り返されそうです。
○ もう少し欲張って66角打としてみます。
89飛成11角成13玉15歩
これで後手玉は詰めろ。以下は簡単なようですが案外に難しくて、15同歩に14歩同玉26銀
24歩12馬23桂15香同桂19香
でやっと勝ちになります。条件が悪いと39竜以下の詰み筋に入る場合があって、簡単とは言えませんが。
△ 15歩は「端玉には端歩」
という手筋で、19香が4枚目の攻め駒になります。89飛成に14歩
後手としては17歩同香16歩同香15歩同香16桂
というのが駒を渡さない寄せの手筋ですが、18玉39竜に13銀同桂同歩成21玉43角
でぴったり詰んでいます。
では先手の勝ち、ではなくて、途中17銀
と打たれて、17同玉25桂28玉17金同桂18金同玉19飛
という詰み筋があります。
また戻って16歩の時に13銀
から清算しかなく、13同桂同歩成同玉16香15歩同香14歩25桂
どんどん王手をかけて、詰みはないのですが24玉33角打35玉44角引成46玉58銀
で先手の勝ちです。
後手としてはどこかで22銀
と1枚打って守るくらい。13銀と打ちこんで13同桂同歩成同銀同香成同玉14歩同玉15歩同玉26銀14玉15歩13玉11角成
で先手の勝ちのようでも、39竜同玉47桂
で詰みです。
では22銀と打たれたら先手も何か守って・・・とよくわからないことになります。
△ 15歩が難解だったので、85歩から
飛車先を止めると、85同飛86歩82飛15歩33銀14歩22玉
と少し落ち着きます。13歩成がどれだけの効果があるか。
× 実戦は52角と打ちました。
41歩成狙いですが、かなり遅いです。89飛成から攻められたら負けだったでしょう。32銀と受けたので、41歩成同銀同角成同金22銀
いっぺんに後手玉が危なくなりました。受けとしては(歩を打てないので)44金ですが、44同角同飛33銀打
で詰めろ。32金打21銀不成同玉44銀成
で先手有利、というところでした。
実戦は33金と打って守ったつもりでしたが
33同角成で無効ですね。Oさんは気が付かず、33同銀成同桂同角成22金
ここに金を打ったのは悪手で、13銀と打てば詰みです。22には銀を打たねばなりませんでした。
ところが25桂24銀13銀
1回溜めてから銀を打ったので詰みがありません。13同銀同桂成同玉66馬89飛成15歩に39竜
からの詰みで、後手のKさんの勝ちになりました。
○ 52角とは打たずに41歩成
のほうが得です。22同金には22角打
がかなりの厳しさです。
無視して89飛成31と
は後手玉が詰めろ、先手玉は詰みません。なので先手優勢。
ということは32金
と逃げることになります。これで66角打なら得をしているかもしれません。42と同金66角打はさらに厳しくなっています。
詰めろ飛取りですね。
☆ まとめ
攻め駒が3枚しかない、というときには何かしらの工夫が必要です。
66角打は飛取りで、11香を取って4枚目の攻め駒ができます。
15歩は19の香を4枚目の攻め駒に使います。
41歩成が取れないのならば4枚目の攻め駒。もう一回42と と捨てることになりそうですが。
これらの攻め筋と、89飛成~39竜の詰み筋を考えながらの寄せ合いです。
最初に書きませんでしたが(いつもなら形勢判断のところで追加で書いています)
66角打~11角成13玉15歩が詰めろで2手すきの手です。
15歩~14歩も詰めろで2手すきの手。
41歩成~31と も詰めろで2手すきの手なのです。
後手の89飛成は場合によって39竜からの詰み筋です。が、駒を渡さないあるいは上部の関係で詰む詰まないが変わります。現状はもう1手必要なので3手すき(89飛成は2手すき)で、手番の先手が有利
ということなのでした。
攻め駒の数、何手で詰めろになるか、ということがわかる問題でした。何度も出てくるのですが、理解していただけたでしょうか。この二つが寄せの基本となる考え方です。

先手番大山先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170814
昭和56年9月、河口俊彦先生と第31回NHK杯です。

大山先生の四間飛車に河口先生は腰掛銀から右四間飛車のようです。

今の目で見れば35歩には48飛とすべき。32飛に45歩で攻めます。

6筋の位を取る作戦でした。でも三間飛車で動こうとしているのに位取りは方向が違います。

3筋の歩交換に45歩、ちょっと無理をしている感じはありますが

この飛まわりの感触は良いです。41金をにらんでいるので

大山先生はおとなしく受けます。このまま収まると河口先生は作戦負けになりそうなので

自陣角。24飛には44歩同歩36歩同銀61角成同玉44飛、というつもりでしょうか。

でも25角と合わせるのが筋悪のようで(25同角同桂というのがつまらなく見える)難しいです。河口先生は多分とっさに44歩と突き捨てたのですが

角と金の取り合いは大山先生のほうが良さそうです。27馬の利きと

45桂と逃げ出すこともできましたし。河口先生は食いついておくくらい。

34角は好点で、形勢が開いていきます。

56金と手放すのは仕方ないですが、攻撃力が下がります。

大山先生は自玉を受けないで自然に大駒で攻めていきます。

桂を成り捨てれば駒が取れて

2手すきくらいの攻めが続きます。

河口先生も攻め駒が増えたので形にはなりました。でも金が無いので詰めろではないのです。

銀を投入して抵抗しますが

銀取りだったので首を差し出しました。

投了図。
16角と打つ構想は、河口先生の渾身の一手、という感じですが不発でした。位を取っての急戦という無理な流れがあるので、一気に優勢にはもっていけません。
有利になった後に大山先生の自然な好手が目につきました。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:河口俊彦5段
後手:大山王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 4八銀(39)
4 4四歩(43)
5 6八玉(59)
6 3二銀(31)
7 7八玉(68)
8 4二飛(82)
9 4六歩(47)
10 4三銀(32)
11 4七銀(48)
12 6二玉(51)
13 5六銀(47)
14 3五歩(34)
15 5八金(49)
16 7二玉(62)
17 6六歩(67)
18 3二飛(42)
19 6五歩(66)
20 3六歩(35)
21 同 歩(37)
22 同 飛(32)
23 3七歩打
24 3四飛(36)
25 4五歩(46)
26 3三角(22)
27 4四歩(45)
28 同 銀(43)
29 4八飛(28)
30 3二金(41)
31 4五歩打
32 3五銀(44)
33 3三角成(88)
34 同 桂(21)
35 5五銀(56)
36 4三歩打
37 6四歩(65)
38 同 歩(63)
39 1六角打
40 2五角打
41 4四歩(45)
42 1六角(25)
43 4三歩成(44)
44 2七角成(16)
45 3二と(43)
46 4五桂(33)
47 4二と(32)
48 2四飛(34)
49 5二金打
50 同 金(61)
51 同 と(42)
52 3四角打
53 5六金打
54 4七歩打
55 同 飛(48)
56 4四歩打
57 5三と(52)
58 3八馬(27)
59 6三歩打
60 2九飛成(24)
61 3六歩(37)
62 5七桂成(45)
63 6二歩成(63)
64 同 銀(71)
65 同 と(53)
66 同 玉(72)
67 5七飛(47)
68 5六角(34)
69 6七歩打
70 6五桂打
71 3五歩(36)
72 5七桂成(65)
73 同 金(58)
74 4五角(56)
75 5四桂打
76 7二玉(62)
77 7五桂打
78 3六角(45)
79 5九歩打
80 2八飛打
81 6八銀打
82 3七馬(38)
83 6三銀打
84 8二玉(72)
85 4六銀(55)
86 6九角成(36)
87 同 玉(78)
88 5九馬(37)
89 7八玉(69)
90 6八馬(59)
91 同 銀(79)
92 8九龍(29)
93 投了
まで92手で後手の勝ち

先手番大山先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170813
昭和56年9月、中原誠王位と第22期王位戦第6局です。

大山先生の先手三間飛車、中原先生は74歩を突いてからの天守閣美濃です。

74歩を突いているので急戦、ということになるのですが、44歩と止めるのは

引き角棒銀ですね。大山先生は57銀型で軽く受けています。

駒組みを進めて、後手番ながら中原先生から動きました。

大山先生は金を繰り出して受けます。

中原先生は75歩を打ちたくなかったんですね。飛をまわって、75歩には同銀同金65桂という筋でしょう。

大山先生は5筋で飛を使います。

中原先生は桂を捨てて取り返す手筋、大山先生は控えの桂の手筋です。

中原先生は5筋をたたいてから端に味をつけます。

大山先生は65歩を待って

75歩から63桂成を決行しました。(75歩に65銀を避けた意味)

銀を捨てて飛を成られましたが

金を取り返す間に角が取れました。これで駒得です。

97角から65銀と気持ちの良い手があって

一気に寄せようと端を攻めます。端を詰めて54飛同竜42角成が実現すれば、ということなんですが、63銀のほうが安全です。、

左に壁があるので逆襲されると怖いのです。

食いつかれて危なさそうですが

13金を打って(23桂を避ける)清算できたので一息付けました。

飛を追われたら

75角右の2枚角がうまい返し技です。86桂の犠打も

2枚角が復活しました。

15桂は攻防で(空間を埋めた)

後手玉は寄りです。

中原先生は先手玉に詰めろが続くか。

下から追っているのでやや細く

23桂成が詰めろ逃れになって

投了図。
中原先生が少し苦しそうな中盤でしたが、端にアヤをつければ、かなり難しそうに見えます。大山先生はそれを否定して、強く端から逆襲して勝ってしまいました。綱渡りのようでも受かるとみているのですね。
これで7番勝負はフルセット。大山先生は中原先生に分が悪く、おかしな将棋も多いのですが、やはり実力には差がなくて、気持ちの問題だったのでしょうか。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:中原誠王位
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 8五歩(84)
7 7七角(88)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 5八金(69)
16 1四歩(13)
17 1六歩(17)
18 5四歩(53)
19 2八玉(38)
20 7四歩(73)
21 3八銀(39)
22 2四歩(23)
23 5六歩(57)
24 2三玉(32)
25 4六歩(47)
26 3二銀(31)
27 3六歩(37)
28 4四歩(43)
29 5七銀(68)
30 4三金(52)
31 2六歩(27)
32 3一角(22)
33 5九角(77)
34 7三銀(62)
35 8八飛(78)
36 3三桂(21)
37 9六歩(97)
38 2二玉(23)
39 3七角(59)
40 2三銀(32)
41 4八銀(57)
42 3二金(41)
43 4七銀(48)
44 9四歩(93)
45 4八角(37)
46 9二香(91)
47 3七桂(29)
48 7五歩(74)
49 同 歩(76)
50 同 角(31)
51 6七金(58)
52 7四銀(73)
53 7六金(67)
54 4二角(75)
55 6五歩(66)
56 7三桂(81)
57 7七桂(89)
58 7二飛(82)
59 5五歩(56)
60 同 歩(54)
61 5八飛(88)
62 6五桂(73)
63 同 桂(77)
64 6四歩(63)
65 6七桂打
66 5四金(43)
67 5五桂(67)
68 5七歩打
69 同 飛(58)
70 5六歩打
71 同 銀(47)
72 1五歩(14)
73 同 歩(16)
74 1六歩打
75 7三歩打
76 8二飛(72)
77 1六香(19)
78 6五歩(64)
79 7二歩成(73)
80 同 飛(82)
81 7五歩打
82 同 銀(74)
83 6三桂成(55)
84 6六銀(75)
85 同 金(76)
86 7九飛成(72)
87 5二成桂(63)
88 6六歩(65)
89 4二成桂(52)
90 同 金(32)
91 9七角打
92 7二龍(79)
93 7三歩打
94 5二龍(72)
95 6五銀(56)
96 5三歩打
97 5四銀(65)
98 同 歩(53)
99 1四銀打
100 同 銀(23)
101 同 歩(15)
102 1五歩打
103 同 香(16)
104 1六桂打
105 2七玉(28)
106 2八銀打
107 1八銀打
108 1四香(11)
109 同 香(15)
110 1七歩打
111 1三金打
112 3二玉(22)
113 1七銀(18)
114 6三龍(52)
115 1六玉(27)
116 1七銀成(28)
117 同 玉(16)
118 6七歩成(66)
119 5九飛(57)
120 6八と(67)
121 8九飛(59)
122 7八と(68)
123 7五角(48)
124 8六桂打
125 同 歩(87)
126 8九と(78)
127 8五歩(86)
128 5三銀打
129 1五桂打
130 9九と(89)
131 6六香打
132 6五香打
133 7二銀打
134 7三龍(63)
135 7四歩打
136 1九飛打
137 1八歩打
138 1六歩打
139 同 玉(17)
140 1八飛成(19)
141 1七歩打
142 2八銀打
143 2九桂打
144 3七銀(28)
145 同 桂(29)
146 2五桂打
147 同 歩(26)
148 同 桂(33)
149 同 桂(37)
150 同 歩(24)
151 2三桂成(15)
152 4三玉(32)
153 3二銀打
154 投了
まで153手で先手の勝ち

7月8日の名南将棋大会から、OさんとKさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
私が見たのはここからで

四間飛車に右64銀の急戦だと思うのですが、スムーズに75銀を許しては振り飛車が失敗しています。59角に66銀同銀同角77歩

悪いなりに頑張っているのですが、77同歩成同飛76歩65銀

銀を使っての飛交換です。77歩成74銀に57銀

と打ったのがやや疑問(67と同金99角成77角89馬で後手よし)、57同金同角成77角33桂で問題図です。

☆形勢判断をします。
金と銀の交換で馬を作られていますから、少し先手の駒損です。
玉の堅さはやや後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は77角と持ち駒飛銀で3枚。74の銀が働けば4枚です。(後手玉からは少し遠いので74銀は入れませんでしたが、63に利きがあるので4枚とみてもよいです。)
後手の攻め駒は57馬と持ち駒飛金で3枚。
総合すればやや後手が有利です。
☆ 大局観として
2つの要素で劣っているので方針が難しいです。形勢が良くないと好手が出にくいわけで、こういう時ほど考えねばなりません。
攻め駒が4枚に近いので後手玉への寄せを考えるのが第一候補。後手玉の守りを崩せば堅さで上回ることになります。
駒得を考える場合は先手玉の薄さが目立ちます。となれば自玉を固めてから駒損を回復していくことを考えます。
× 実戦は82飛と打って、69飛に65歩

と63銀成を狙いました。76歩63銀成42金寄

角を逃げると39金で寄せられます。(後手は76歩ではなくて39金でも良かった。)
33角成と切っても足らず、33同玉25桂24玉でここまで。39銀に66角

で受けが無くなりました。
途中65歩では遅すぎるので、81飛成として

42金寄59銀89飛成48桂

と埋めればまだ粘れそうですが、15歩か67馬か、後手の攻め筋は消し切れていません。
△ 71飛あるいは61飛

と1段目に打てば33角成をみた先手です。82飛よりは優るのですが、42金寄の時に81飛成では同じことです。(後で述べる58銀はあるのですが。)
× 他の攻め筋は33角成ですが

33同玉45桂22玉33銀21玉

74銀が働いていないということもあって、まだ寄り筋ではありません。
○ 58銀と守りを固めたいところです。

馬取りなので強い指し手で、56馬71飛42銀(この場合は42金寄よりよいか)57歩89馬81飛成

後手玉より堅くなって、竜を作ったので駒損も緩和、形勢は互角です。
75馬と逃げられたら

71飛42金寄63銀成

84馬でも同じようなことですが、馬取りで手を稼げます。73歩81飛成79飛69歩

底歩も利くので少し指しやすいはず。69歩の前に26桂も魅力的です。
怖いのは58同馬

ですが、58同金69飛(79飛は88角打ちがある)に66角打42金寄59飛

手堅く守れます。こういう時に飛は手持ちのほうが良いので、71飛42金寄58銀、とするよりも単に58銀のほうが優ります。
△ 48銀と打つこともできますが

75馬71飛42金寄63銀成73歩

と進んだ時に、69飛~48馬がある分だけ先手玉が薄いです。
△ 68銀と打てば

後で79歩

と後手の78金を避けつつ底歩を打つ展開です。48金と打たれる筋が残っているので(今は大丈夫ですが)劣ります。
× 46銀は

ほぼ無意味。この銀が使えるなら良いのですが。
× 69歩

もそれらしい手ですが、76歩95角88飛

と打ち込みを許すのは損です。
☆ まとめ
私は振り飛車党ではないから思うのかもしれませんが
振り飛車(対抗型だとして)は居飛車に作戦選択を任せることになり、舟囲いで急戦、左美濃で中間、居飛穴など持久戦、と玉の堅さのバリエーションで指し方が変わってきます。
対急戦は左翼はやや悪くなって、玉の堅さで勝負
対左美濃(あるいは相穴熊)では小さな差が問題になりますし
対持久戦では左翼で有利を求めねばなりません。
この3つの方針の違いが難しすぎるのではないか、と思うのです。
その対応策として
①序盤研究をして、不利にならないようにする
②悪くなっても終盤で勝負できるようにする
というどちらかの技術を求められます。
そんなことを言っても居飛車をもっての対振り飛車でも同じではないか、ともいえるのですが、自分で戦型を選べます。選択権があればどちらか一つできればよいでしょう。
初心者が居飛車を選ぶか振り飛車を選ぶか(指導者がどちらを選ばせるか)で、安易に振り飛車のほうが玉が堅いから少々間違ってもひどくならないですよ、と勧めるのことが多いのではないか(そのためにアマチュアには振り飛車の人気が強い)というのが私の思い込みです。
選択権が無いと、②の難易度が高い、あるいは②が向いていない人のほうが多い、けれどもやむを得なくそうなってしまい、ずるずると負けてしまう、ということが多くなっていないでしょうか。
わかりにくく書いてしまったかもしれませんが、対抗型なら居飛車を持ったほうがわかりやすいというのが私の主張です。序盤研究を生かしやすいと思うのです。
この問題図の場合、さばき合いでかなり不利になり、居飛車の疑問手でやや盛り返したものの、まだ不利だった、という図です。形勢が悪いと手を選択するのも難しいです。
寄せ合いは負けになり、銀を埋めて粘りに行けば実はまだ難しい、というか振り飛車が有望だ、というのが結論です。
多分実戦なら先手で飛車を打ち込めるので、61飛か71飛か82飛か、どれにしようかな、としか考えないのではないでしょうか。ノータイムで銀を埋める、というところにたどり着くのにはかなりの修練が必要でしょう。不利な局面での難しい指し手を要求されることが多いので、振り飛車は難しいです。