小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

「106万円の壁」「130万円の壁」の緩和はジェンダー差別の解消にはならない。むしろ少子化が進むだけだ。

2023-10-02 05:47:17 | Weblog
10月1日、NHK『日曜討論』は日本のジェンダー座別問題を、与野党女性国会議員たちが取り上げ討論した。NHKによれば世界145過去中、日本のジェンダー差別は125位に当たるらしい。
ジェンダー差別を何とかしようという試みはいいが、なぜか女性議員の感覚は現実と大きくずれている。
ジェンダー差別の国際比較は国会や地方議会に占める議員の男女比や企業の経営幹部に占める男女比で比較されているが、日本はいずれの分野でも女性の占める比率が低いようだ。
確かに日本ではまだ「男尊女卑」的感覚の持ち主は、特に高齢男性に多いことは確かだが、問題はそれだけではない。

●日本の女性は甘えの構造の中で能力発揮の機会を自らセーブしているのではないか
世界では扶養家族に対する支援をどのように行っているか、ネットで調べてみた。厚労省はほぼ全世界の制度を調べていると思うが(調べていなかったら怠慢と言わざるを得ない)、「子供手当」以外の扶養家族に対する手当を行っている国を見つけることはできなかった。
いろいろなキーワードでネット検索したが、「扶養家族手当 世界」で検索しても主な国で「扶養家族」の名目で妻に対する手当を支給している国は見つからなかった。ただ、このキーワードで調べた結果、「子供手当」は日本以外にもイギリス、フランス、ドイツなどがあったが、アメリカや韓国は「該当なし」である。
専業主婦や一定の収入以内の妻への扶養家族手当を支給している国は一つも見つけることができなかった。まして「第3号被保険者」という制度(企業規模によって妻の年収が106万円、130万円を超えると妻が「第3号被保険者」の資格を失い、自分自身で健康保険や厚生年金などの社会保険に加入しなければならなくなる制度)など、どの国にもない。
いま岸田内閣は、この「106万円の壁」「130万円の壁」が女性の働く意欲をそいでいると考え、「壁の拡大」を行おうとしているが、基本的に個人主義の欧米では結婚するもしないも個人の自由であり責任、だから結婚したからといって甘やかす制度を設けたりはしていない。
これは他の福祉制度でもそうだが、勤務地への交通手段も個人の自由であり責任という考えだから、通勤手当や住宅手当といったものはない。基本的に通勤費と住宅費は反比例の関係にあり、都心の勤務地に近い地域に住居を構えれば通勤費は安くてすむが住宅費は高くなる。
勤務地に近い場所に住居を構えれば、住宅費は高くなるが通勤疲労は少なくてすみ、会社への貢献度も大きくなる。が、住宅手当は定額で、通勤手当は実費(上限を設けている会社が多いようだが)というのは、いくら福祉厚生が目的とはいえ、結果的には逆効果になっている。

●第3号被保険者制度を廃止すればジェンダー差別は解消する。
いまの社会福祉制度は戦後の貧しい時代に結婚促進策として設けられ、それなりに日本の経済復興に大きな役割を果たしてきたことは間違いないが、日本が高度経済成長期を経て多くの家庭が豊かさを享受するようになり、また子供たちの高学歴化も急速に進んだ。
高度経済成長時代の初期、東北方面の中卒就業者は東京・鎌田の部品工場地域に、関西以西の中卒就業者は東大阪市のやはり部品工場地帯に、それぞれ「金の卵」として就職し、精密部品製造の熟練工として日本の先端工業力を支えた。
私が小学生だった時代、東京・世田谷区の有名校だったが、大学に進学した女性は全学年でせいぜい数%だった。実際、内閣府男女共同参画局の調査によれば、1960年の女性の大学・短大への進学率はともに5%未満だった。
が、75年の女性の高等教育校進学率は大学12.7%、短大32.9%と増え、現在では短大、専門学校も含めると女性の高等教育校進学率は男性より上回っているようだ。
こうした女性の高学歴化によって女性の価値観や幸福感、生き方も大きく変化し、かつてのような「良妻賢母」型生き方を目指す女性は激減している。前にも何度か書いたが、いまの女性は【結婚→妊娠→出産→子育て】【家庭を守り夫を支える】といった考え方はみじんも持っていない。自分自身の生き方や社会で自分の能力をいかに発揮できるかに関心の重点を移している。少子化もそうした女性を取り巻く社会環境の変化がもたらしており、OECD34か国中合計特殊出生率が人口を維持するのに必要とされる2.18を上回っているのはアラブ諸国と常に緊張状態にあるイスラエル(2.90)だけだ。
ちなみに多民族国家のフランスは4位で1.83、アメリカは9位で1.63である。なお日本は30位で1.26、最下位の韓国に至っては0.83と、国家の存亡そのものが危うい状態だ。
だから少子化対策は重要だが、世界中で共稼ぎ世帯に最も過保護とすらいえる「第3号被保険者制度」を働き手確保のために改悪することはさらに少子化を進める結果になることは間違いない。
いかなる政策もメリットもあるが副作用も伴う。薬と同じで、効果が大きければ大きいほど副作用も大きくなる。だから女性労働力の活用を拡大する政策を進めれば進めるほど、副作用として少子化も急速に進むことを覚悟しなければならない。
日本の政治家は、なぜ副作用のことを考えずに一面的な効果だけを重要視するのか。例えば女性の働く環境を改善して女性の労働力をもっと活用しながら少子化対策はしっかり行うというなら、たとえば妊娠適齢期を超えた女性や3人以上の子供を出産した女性に限って働きやすい環境整備を整えることだって可能なはずだ。
すべて全部一律にという硬直した考え方では、これからの日本はやっていけない。第3号被保険者制度という画一的な過保護福祉政策を廃止して、女性が働きやすい環境をフレキシブルに構築すれば、女性が社会で活躍できる機会は大きく増えるし、そうなればジェンダー差別も解消する。また女性も将来の不安なく結婚・出産・子育てができるようになる。

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