小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

検察庁法改正――何が問題なのか。【追記 15日、16日、18日】

2020-05-14 04:45:10 | Weblog
 私はブログの更新は閲覧者数が一定の数字を割り込んだときに行うことを原則としてきた。が、前回のブログがすでに1か月を超えているのに、閲覧してくださる方が一向に減らず、その間に書き溜めてきた記事で賞味期限切れになったケースもかなりある。実はまだ閲覧者はブログ更新の基準をかなり上回っているのだが、緊急に問題提起せざるを得ない状況が生じた。政府が唐突に国会に上程した「検察庁法改正」である。この問題はないがしろにできないことなので、ブログ更新の原則を破って急遽、アップすることにした。
 改正法はかなり難文で、意味不明な部分もあり、メディアや評論家、野党の政治家も含めて理解不可能な内容である。もっとも私がブログを書き始めたころ、オートチャージ式PASMOを当時通っていたフィットネスクラブでロッカー荒らしに盗難され、不正使用されたため損害を被ったことがある。そのPASMOとセットで入手した小田急グループのクレジットカードにクレジット補償を求めたところ、「オートチャージはパスモ社が行っており、当社のクレジットカードからのチャージではないため、補償はできません」と回答され、訴訟を起こしたことがある。訴訟は弁護士を付けず(弁護士に頼めるほどの損害額ではなかったため)一人で裁判に臨んだ。被告側はかなりの大弁護団を組み、結果的に訴訟は負けたのだが、その理由はパスモ社が発行したカタログの最後に付け加えられていた約款に、理解困難な「免責事項」が記載されており、裁判ではその「免責事項」が根拠とされ私は敗訴した。私は裁判を起こすにあたって、キャラバン営業をしていた人(小田急エージェンシーの社員)にクレジット補償について質問し、「小田急のクレジットカードからチャージされるため紛失・盗難にあってもクレジット補償が適用されます」という説明を受け、さらにその内容を紙に書いてもらった。また、フィットネスクラブで知り合った人でオートチャージPASMOを持っている人にクレジット補償について尋ねたところ、「同じ説明を受けた」という方の署名も集め、それらも証拠として提出したが、判決ではそれらの証拠はすべて「メモに過ぎない」「個人の記憶に過ぎない」というおかしな理由で退けられ、読解困難な「免責事項」が重視されて私は敗訴した。なぜこんなことを書いたかというと、政府が提出した法案にはこうした読解困難な一文が含まれていて、実はその読解困難な一文に、何が何でもこの法案を早期に成立させたい意図が込められていることが分かったからだ。
 いかに読解困難か。いろいろな意味で有名な学者・高橋洋一氏の解釈をが12日付け夕刊フジが記載したので、それをまずご紹介しよう。その前に高橋氏について略歴を紹介しておく。高橋氏は東大理学部数学家を卒業した後東大経済学部に学士入学して卒業、大蔵省に異色の官僚として入省、小泉内閣の経済財政政策担当大臣に任じられた竹中平蔵氏の補佐官として小泉総理の構造改革に取り組んだ。2008年に財務省を体感して東洋大学の教授に就任したが、豊島園「庭の湯」でロッカー荒らしを行い、現金や腕時計など30万円相当を盗んで練馬警察署から窃盗罪で書類送検され(不起訴にはなった)、東洋大学を懲戒免職される。その後、嘉悦大学ビジネス創造学部教授に招聘され、評論家としても活躍している。その高橋氏が、夕刊フジによれば、芸能人たちが始めた#検察庁法改正反対のツイート運動に噛みついたというのだ。どういう噛みつき方をしたのか、夕刊フジの記事を転載する。

 高橋氏は「反対する人たちは法案を読んだ方がいい。人事院の意見具申を受けて、2008年から進めてきた国家公務員法の一部改正の最終段階にすぎない。民主党政権(09~12年)も経ており、党派にも黒川氏の人事にも関係がない。『検察庁法改正案に反対』という人は、検察官OBが年金難民になってもいいのか。著名人らも、法案の詳細を知らずに発信していると考えられる」と語っている。

 この記事に対して私が行ったコメントも転載しておく。
法案をまったく理解していないのは高橋洋一氏。国家公務員法改正では現在60歳の定年を「段階を踏んで」2030年までに65歳に延長するということ。この国家公務員法に準じて検察官の定年を延長するというなら、黒川氏はとっくに定年退職していなければならない。むしろ検察官は職務の特殊性から一般国家公務員より優遇されている。その事実を隠して、2030年までに「段階的に」定年を65歳まで延長するという法改正ではなく、黒川を検事総長にするために(黒川だけを特別扱いすることがさすがに自民党内でも問題になったため)検察官全員を段階を踏まずに「一気に」定年延長してしまおうというのが今の政府の目論見。そんなことも知らずにえらそうなことをいうのが、このバカ学者。
 実は、政府は今年3月13日、一般国家公務員の定年を現在の60歳から段階的に引き上げ(22年度から2年度ごとに1歳ずつ引き上げる)2030年度に65歳定年にする国家公務員法改正案を閣議決定している。ただし、60歳を超えた一般国家公務員は原則として管理職から外し、給与も当分の間、直近の7割に抑える。この国家公務員法改正に合わせて検察官と自衛官の事務官も定年を65歳に引き上げる。検察官の場合、現在63歳の定年を22,24年度にそれぞれ1歳ずつ引き上げて65歳定年にする。一般国家公務員と同様、検事総長を除き、検事長、検事正などの管理職から外して平検事にする(給与の削減については不明)。国家公務員の60歳以降の管理職外し、給与の3割カットは、官民格差が広がることで民間の反発が生じかねないことを考慮したのだろう。
 この法案改正を政府がそのまま国会に提出していたら、野党も反対する理由はないし、国家公務員法改正も検察庁法改正もすんなり決議されていたと思う。が、なぜか政府はこの改正案をたなざらしにしてきた。この法案を成立させてしまうと。検察庁NO。2の黒川・東京高検検事長も今年2月に63歳の定年(現行法)を迎えると同時に定年退職するか、特例で定年を延長しても東京高検検事長という役職から外れ平検事に格下げせざるを得なくなるからだ。
 黒川氏がなぜ「官邸の守護神」と言われるようになったのかを、この際、検証しておく。実は黒川氏は検察畑より、法務省官僚としての勤務期間の方が長い異例の足跡をたどってきた。東大法学部を卒業後、司法修習を経て89年に検察庁に入庁、検事として東京・新潟・名古屋・青森など地方検察庁に勤務した後、98年に法務省に移動し、大臣官房、大臣官房審議官、大臣官房長を経て、16年には法務省の事務方トップである法務事務次官にまで上り詰めている。若いころから将来の検事総長候補として期待されていたらしい。検察庁に戻ったのは19年1月で、いきなり検察庁NO。2の席と言われる東京高検の検事長に就任した。このキャリアから見ても黒川氏の場合、検察庁勤務より、法務省で官邸とつねに密着してきた人物とはいえる。
 問題は黒川氏がなぜ「官邸の守護神」と言われるようになったかである。実は森友学園問題が火を噴いたのは、黒川氏が法務省事務次官をしていた時である。この問題は読者の皆さんも覚えておられると思うが、安倍総理の昭恵夫人が籠池氏に異常なほど肩入れし、国有地払い下げに際しての不当な値引きや、公文書改ざん問題など、官邸に激震が襲った。とくに安倍総理が国会で「もし、私や私の妻が関係していたら、私は総理大臣だけでなく国会議員の職も辞します」と大見得を切ったことで、法務省トップの事務次官として黒川氏自身が窮地に立たされた。
 かつては時の権力者・田中角栄氏をも逮捕・起訴(ロッキード事件)した当時の検察の権威はその後、リクルート事件で一気に失われる。総理であろうと大物政治家であろうと、一人や二人の贈収賄事件だったら検察も徹底的にやったと思うが、何しろ関係者が多すぎた。当時朝日新聞が1面トップでリクルート・コスモス株を譲渡(有料)された人物の一覧をスクープしたが、当時警察庁NO。3だった金子氏(警察大学校長)の名前は伏せたほどの事件だった。この事件を東京地検だけの手におえるわけがなく、全国から特捜担当の検事を集めても、おそらく手におえる事件ではなかっただろう。またリクルートの江副社長の側にも贈賄意識がほとんどなく、どうせ株を公開するなら社会的地位が高い人に持ってもらいたいという程度の感覚だったように思う。たとえばバブル時代、事業経営者とくに起業家の場合、ゴルフ場のオーナーになることが一種のステータスだったこともあり、かつ作ったゴルフ場に有名人を特別縁故扱いで募集してゴルフ場の格をあげようとしていた時期でもあった。検察官のあいだに無力感が覆ったのは、大物政治家の「秘書が、秘書が」という逃げ口上のハードルを破れなかったこと、また江副氏自身が見返りを求めての株譲渡という意識をあまり持っていなかったこと(実際には利害関係がある政治家にもばらまいているが、利害関係が全くない政治家などにもばらまいていたから特定の譲渡についてだけやるというのは難しいという判断もあったと思う)などから贈収賄事件としての立件ができなかったのだと思う。
 こうした場合、検察としても難しいのは世論の動向で、検察としては利害関係者だけをやろうとした場合、あの政治家も貰ってるじゃないか、どうして公平にやらないんだという短絡した検察批判が出てくるのが一番怖い。そういう意味でも、森友事件については安倍総理が国会で断言してしまったことがものすごく大きなプレッシャーになったと思う。とくに法務省という行政機関でありながら、検察の捜査の在り方にも目を光らせなければならない立場のトップにいた人間としては、黒川氏はかなり悩んだのではないかと思われる。そういう人物が検事総長として検察庁に君臨することになった場合、国民の見る目は相当厳しいものになるから、黒川氏はジェスチャーとしても権力の腐敗を徹底的にあぶりだそうとする可能性の方が、「官邸の守護神」を続けるより大きいのではないかと、私は思う。というのも、黒川氏自身、突然の定年延長は寝耳に水だったようで、すでにかなりの規模の歓送パーティが予定されていたからだ。
 話がちょっと横道にそれたのは、それなりの理由があってのことだ。今回、政府が国会に提出した検察庁法の改正の目的が、実は見過ごされかねない一文に安倍総理の本音が隠されていると思われるからだ。その一文とは、昨年秋に閣議決定した検察官の定年延長に続けて「但し、内閣が必要と認めた場合、役職を続けることができる」というものだ。つまり、昨年秋に閣議決定した「①検察官の定年を現在の63歳から22年に64歳、24年に65歳に引き上げる ②ただし、63歳になった時点で(検事総長を除き)検事長や検事正といった役職からは外れ平検事にする」という改正案に、「③ただし、内閣が必要と認めた場合、役職を続けることができる」という条文が付け加えられたからだ。で、黒川氏の定年延長によってどういう事態が生じる可能性があるのか。7月に現検事総長の稲田氏が定年退職し、黒川氏が検事総長になったとして黒川氏の任期はいつまでになるのかという問題だ。今回の法改正には検事総長の任期については記載されていないが、従来通り検事総長の任期型の検察官よりプラス2年と考えれば、黒川氏は67歳まで検事総長を務めることができることになる。ただ、改正法の実施が22年度からということになっているから、改正案通りに法が運用された場合、黒川氏は法改正の実施時期とされている22年4月1日時点ではすでに現在の総長定年65歳を超えており、定年延長の恩恵は受けられないことになる(黒川氏が65歳の誕生日を迎えるのは22年2月7日)。
 そうなると、1月31日に閣議決定した黒川氏の6か月定年延長では、たとえ稲田総長の後を黒川氏が今年7月に継いだとしても、黒川氏の総長任期は22年2月7日までということになり、③項目を付け加える意味がなくなる。なぜ政府は無意味な③条文を付け加えることにしたのか。ひょっとしたら、ものすごくどす黒いたくらみが隠されているのではないかという疑問が生じる。すでに黒川氏は今年1月に東京高検検事長の定年を6か月延長されている。その定年延長を黒川氏が67歳になっても6か月延長は生きている(つまり黒川氏の誕生日を2月7日から8月7日まで延長したという、とんでもない解釈が政府によってなされる可能性があるということ)とすれば、黒川氏の総長定年は22年8月7日まで伸びることを意味する。それ以上の定年延期はいくら何でもできないと思う。
 だが、政府はなぜそこまでやるのか。安倍総理の自民党総裁任期は来年9月までだ。憲法改正に執念を燃やす安倍氏だが、コロナ騒動もあって任期中の憲法改正はまず不可能だ。二階幹事長や麻生副総理はさらに党則を変えて人気の再延長をつぶやいているようだが、いくらなんでもそれは無理だろう。メディアは後継総裁として岸田政調会長を安倍氏が指名するのではないかと憶測しているが、私はウルトラCがあるとみている。ショートリリーフとして二階氏を後継総裁に担ぐというハプニング人事だ。岸田氏はまだ若いから、ショートリリーフなんかは絶対に引き受けない。が、二階氏の場合、半年か1年で「総裁の激務には耐えられない」と辞任すれば、安倍氏は新たに総裁選に立候補できる。仮に21年9月に二階氏が総裁に就任して、1年後には体力を理由に退任すれば、22年9月の総裁選に安倍氏は再び立候補できる。それまで安倍氏の「黒い霧」(モリカケ問題、桜を見る会、河合夫婦議員の公職選挙法違反事件などなど)を守ってくれる人を検事総長にしたいと考えたのではないか。 
 ただ、すでに書いたように、黒川氏がそこまで政権の飼い犬に徹しきれるかは、私は疑問に思っている。実際、いま広島地検は大阪地検特捜部の応援を得ながら、河合夫婦の公職選挙法違反事件に全力を挙げてる。それも本丸は河合杏里氏ではなく、杏里氏の選挙をすべて仕切ってきた克之氏だという。克之氏は杏里氏の選挙違反が週刊誌で報道されるや、間髪を入れず法相を辞任している。国会開会中は国会議員は不逮捕特権が認められているが、広島地検はすでに立件を視野に入れ、着々と証拠固めを進めている。しかも応援部隊を広島に派遣している大阪地検特捜部は、逐一状況を東京地検特捜部に報告し、アドバイスも得ているという。こうした状況の中で黒川氏はこの事件について何も指揮権を行使していないようだ。「黒川=官邸の守護神」という構図が本当だとすれば、河合夫婦の逮捕・起訴は安倍政権にとって相当大きな痛手になるはずだ。官邸は、最後は黒川氏が乗り出して収めてくれるだろうと期待しているかもしれないが、国民はそれほど無知ではない。少なくとも、芸能人でも高橋洋一氏より本能でいま生じている事態を察知している。コロナ禍で外出自粛状態になっていなければ、いまごろ国会や首相官邸はデモ隊の渦で埋まっているだろう。

【追記】今日早朝、ブログを更新しましたが、私は日本の「三権分立」問題には一切触れませんでした。ブログ記事の原稿自体は昨日に完成していましたが、いったい検察官は司法官なのか、行政官なのかが昨日の段階ではわからなかったからです。今日(14日)あらためて確認するため、内閣府に問い合わせ、法務省に電話しました。
 その結果、びっくりした事情が分かりました。私たちは中学生のころから社会科の教科書で「日本は民主主義国家であり、民主主義の原則の一つである三権分立の制度がある」と教わってきました。いうまでもなく三権分立とは司法・行政・立法がそれぞれ独立した機関であることを意味します。そのこと自体は今も変わっていないようです。問題は検察は司法機関なのかどうかです。
 その疑問があったので、今日更新したブログでは、国民の間で広まっている「検察庁法改正は三権分立の破壊だ」という主張については一切書いていません。で、先ほど法務省に電話をして確認しましたが、「三権分立の基本原則は変わっていない。しかし、検察庁は司法機関ではなく行政機関である法務省の管轄です。司法機関は裁判所で、裁判官は独立した権限を持っています」ということだった。
 そうなると、黒川氏は司法官ではなく行政官ということになる。つまり、国家公務員だ。だったら国家公務員法により60歳で定年退職していなければおかしい。なぜメディアはその矛盾を追及しないのか。

【さらに追記】ますますわけが分からなくなった。私が電話で問い合わせた法務省の担当職員は、「検察官は国家公務員であるが、職務の特殊性から一般国家公務員を対象とした『国家公務員法』とは別に『検察庁法』が定められている」との説明を受けた。
 ところがいまネットで、今日テレビ番組で田崎氏と若狭氏が対談し、田崎氏が「検察官は国家公務員」と理解sているのに対して若狭氏が「検察官は国家公務員ではない。特別公務員だ」と、田崎氏の無知を指摘したようだ。若狭氏は黒川氏と同期の元検察官であり、若狭氏がそんな単純なケアレスミスの発言をするとは到底思えない。ということは、私に説明した法務省担当職員も田崎氏と同様の勘違いをしていたということになる。それでなぜ、「検察庁法改正」の国会法務委員会に、法務大臣の森氏が欠席した理由が分かった。森大臣はこれまで「国家公務員の定年延長に合わせて検察官の定年も延長するのが改正の目的」と説明してきたことがウソだったことが明白になったからだ。もちろん大臣の答弁は担当省庁の官僚が作成する。私が電話した法務省の担当者レベルではなく、キャリア官僚か相当のベテラン官僚が答弁文を作る。法務省官僚ですら理解できなかった検察庁法を、一般国民やメディアの記者が理解できるわけがない。
 そういう状態ということが分かった以上、今国会での法改正を無理押しすべきではなく、秋の臨時国会で改正案を練りなあして審議したほうがいいと思う。その場合、黒川氏の延長された定年も切れるから、黒川氏の検事総長就任計画は幻になるけど。

【追記3】公務員には3種類あることが分かった。①国家公務員(一般職および特別職)、②地方公務員、そして③特別公務員である。特別公務員に該当するのは裁判官・検察官・警察官である。
 一方司法権は裁判所だけである。検察官や警察官には司法権はない。が、検察官は政府や法務省が勝手に思い込んでいるように「一般職の国家公務員」でもない。安倍総理が国会で答弁したように「検察官は強い独立性を持っているが、行政官であることには間違いない」のか。その疑問を今朝、法務省の担当職員にぶつけたら「特別公務員は刑法上の概念であり、総理大臣の答弁を信用できないというなら電話を切ります」と、実際電話を切られた。
 私は法務省に電話をする前にネットでいろいろ調べて「司法権は裁判所にのみ帰属する」ことは確認していた。だから検察官には司法権がないことも分かっていた。が、そうなると、検察官が裁判官と同様「特別公務員」という位置づけになっていることに疑問が生じた。で、法務省に「特別公務員」の位置づけについて聞いたのだが、「刑法上の概念」だという。概念という意味は実際には存在しないが、考え方であるという意味だ。となると、「特別公務員」という存在は単に概念上の(つまりバーチャルな)位置づけだということになる。ということは、すべて法律はバーチャルであって、実存しないことになる。我々国民はコンピュータの中にしか存在しない法律によって拘束されていることになる。もちろん安倍総理もバーチャルな存在で、実際には実存しない総理大臣ということになる。
 いったい、「特別公務員」である検察官が一般職の国家公務員で「行政官であることは間違いない」(安倍総理)なら、同じ公務員資格の裁判官はなぜ行政官ではないのか、もう私の頭脳では理解可能の限界を超えている。(15日)


【追記4】ますますわけが分からなくなった。ネット上のメディアであるHUFFPOSTが松尾元検事総長や堀田力元法務省官房長ら検察官出身者による意見書を15日、法務省に提出したことを報じた。その意見書によると、検察官は安倍総理や法務省が言い続けているように「行政官」(国家公務員)ではなく、刑事訴訟の担い手ということになる。であれば、裁判官・検察官・警察官の身分である「特別公務員」という位置づけはバーチャルではなく実体的身分であることになる。そもそも最初から「特別公務員」ではなく、「特別国家公務員」と位置づけ、国家公務員(一般職及び特別職)とは別枠の国家公務員と位置付けていれば、すべての矛盾は解消していたはずだ。その代わり、松尾氏らが主張するように、政府の都合のいいように検察官の処遇を解釈変更で変えることは政府の権力乱用に当たることが明白になる。とりあえず、松尾氏らが法務省に提出した意見書(要旨)をHUFFPOSTの記事から転載する。

検察官の定年を延長する検察庁法改正案をめぐり、松尾邦弘元検事総長ら検察出身者による意見書が5月15日、法務省に提出された。
検察幹部の定年延長を認める規定の撤回を求め、改正によって政権の介入が強まってしまった場合に「日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない」と危機感を示した。
意見書は、松尾邦弘元検事総長、堀田力元法務省官房長ら元検察庁幹部ら10数人の連名で出された。黒川弘務東京高検検事長の定年延長や、内閣が認めた場合に幹部の「役職定年」が延長できるという改正案の規定を批判した。
黒川検事長は閣議決定で定年延長され、安倍晋三首相は「国家公務員法の定年関係の規定は検察官には適用されない」という従来の解釈を変更したと説明している。
意見書は、「検察庁法に基づかないものであり留任には法的根拠はない」と指摘。唯一起訴権限を持つ検察官の特殊性に触れて「検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たない」と訴えた。
続けて「本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更した」と批判した上で、「近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない」と危機感を示した。
改正案では、検事長など幹部が63歳で退職する「役職定年」を設けた上で、内閣が認めればその年齢を過ぎても役職にとどまることができるとする内容が盛りこまれた。
この点については「黒川検事長の定年延長を決定した違法な決裁を後追いで容認しようとするものである」と批判した。
意見書は検察庁人事の内情にも触れている。検察法上は検事総長や検事長といった幹部は内閣が任命すると定められている。
だが実際は、「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」として、検察官の人事に政治は介入しないという慣例が守られてきたという。
それを踏まえて、改正案について「検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の助き(ママ。「動き」」)を封じ込め、検察の力をそぐことを意図していると考えられる」と疑った。
さらに、検察の不祥事にも言及。大阪地検特捜部が証拠を改ざんして逮捕された事件を「謙虚でなければならない」と反省する一方で、「検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴不の決定など公訴権の行使にまで掣肘を受けるようになったら、検察は国民の信託に応えられない」と強調した。
その上で「正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない」と訴えた。
当時の首相が逮捕されたロッキード事件に触れながら「ロッキード世代として看過し得ない」ともつづった。
最後に「国会職員と法曹人、そして心ある国民すべてが断固反対の声を上げて阻止する行動に出ることを期待する」と結んだ。

 百歩譲って、検察官が一般職の国家公務員であり、行政官であるとするなら、検察庁は政府機構の一つと言うことになり、であるならば検察官の定年も一般国家公務員と同様60歳でなければならない(実際には検察官の定年は63歳)。なぜ検察官だけ定年を優遇してきたのか。「業務の特殊性」などという言い訳は通用しない。
さらに現在検察庁のトップは検事総長だが、もし検察庁が行政機関ということになると、検事総長の地位は他の省庁と同様事務方トップの事務次官や長官職と同等ということになる。当然検事総長の上に担当大臣をつくる必要が生じる。実際、政府は検察庁を完全に政府機構に組み込むことをすでに考えているのではないか。安倍総理は口先では「検察は強い独立性を持っている」としながら、検察官の人事権を内閣人事局が掌握しようとしているわけだから、「強い独立性」なんか維持しようがないことになる。
またおかしなこともある。これは「三権分立」の基本的概念に関することなのだが、私はもう時代にそぐわなくなっている側面も生じてきたと考えている。三権分立という概念は1789年のフランス人権宣言で確立された概念だが、①法律を定める立法権(立法府は国会) ②法律政策を実行する行政権(行政府は政府=内閣、その実行金が国家公務員が所属する各省庁などの行政機関) ③法律違反を処罰する司法権(裁判所) という位置づけになっている。その位置づけから外れるのが検察官と警察官ということになっており、そのため裁判官と同様国家公務員とは別に「特別公務員」という身分に位置づけられてきた。そこで、検察庁が行政機関ということになり、法務省の管轄ということになると、警察官に対する事件捜査の指揮命令権を持つ検察官が属する検察庁と警察庁の関係はどうなるのか。
警察庁は内閣府の外局である国家公安委員会(委員長は国務大臣)の下部機構であり、法務省の管轄ではない。検察庁を行政機関に組み込み、法務省の管轄ということになると、検察官の警察官に対する捜査指揮命令権はどうなるのか。なお国家公安委員会は法務省と同格の行政機関であり(国家公安委員会のトップは国務大臣だから)、理論上検察官の警察官に対する捜査指揮命令権は失われることになる。つまり、完全に二重行政ということになり、事件によっては警察が検察に捜査協力を拒否する可能性も出てくる。とくに地検特捜部が担当する政治家がらみの事件の捜査について、警察が協力しなかったり、協力するふりをしながら裏で政府の指示を受けて無罪の証拠をでっちあげたりする不祥事も予想できる。
そういう可能性がある以上、三権分立の目的を現代の状況に合わせて実現するには、検察・警察、それに国税など捜査逮捕権を持つ職務を政府機構から分離独立させ、四権分立にするのが一番いいのではないかと私は思う。とにかく政府の権限できるだけ小さくすること、それが民主主義が求める理想的な政治である。安倍内閣は民主主義の理想さえ破壊しようとしているとしか思えない。(16日)


【追記5】16・17日、検察庁法改正についての緊急世論調査を朝日新聞が電話で行った。その調査結果を書く前に、あらかじめお断りしておくが、世論調査はメディアの立ち位置によって質問項目や質問の仕方がかなり誘導的になったりすることがしばしばある。ただし、数字については絶対にねつ造はしない。なぜこんな但し書きを書いたかというと、ある左翼系護憲団体の事務局長が「ねつ造することもあるからね」と世論調査について主張したことがあり、私が全否定したことがあったからだ。もしメディアが世論調査の結果をねつ造したりして、そのことが外部に漏れたら(間違いなく漏れる。宗教組織的政党である公明党や共産党のような一枚岩ではメディアはないからだ)、そのメディアは一瞬にして崩壊する。そうした認識を持って朝日の世論調査の結果を読み解いていきたい。なお、私が朝日新聞の世論調査だけを参考にしたのは、朝日以外に検察庁法改正についての世論調査を行ったメディアは1社もないからにすぎない。他社はおそらく15日に政府が衆院内閣委で強行採決を行うだろうと観測し、採決後の世論調査は意味がないと準備をしていなかったからではないか。私はいま朝日の「お客様オフイス」と喧嘩しているが、そういうこととは関係なく朝日の世論調査結果を現時点では信頼するしかないという前提で分析する。
 まず、法改正については「賛成」は15%にとどまり、「反対」は64%に上った。単純計算で「反対」が「賛成」の4倍を上回り、明確に意思表示した有権者の8割強が法改正に反対したことを意味する。
 政府は今週中の法改正成立を目指しているが、内閣委員会の自民党議員委員が「強行採決するなら、私は採決の時退席する」と表明した途端、政府は委員を挿(す)げ替えたが、そこまでやって採決を急ぐべきかという疑問は多くの国民が持っている(これは私の考え。朝日はこうした誘導的質問はしていない)。朝日は単純に成立を急ぐべきか否かを質問し、「急ぐべき」は5%、「急ぐべきではない」が80%だった。法改正に賛成した人でも「急ぐべき」は18%に過ぎず、「急ぐべきではない」が68%と大きく上回った。
 また朝日は「改正案で懸念されている『検察人事への政治介入』について、安倍晋三首相は国会で『あり得ない』などと答弁している。こうした首相の言葉(※発言)」について質問したところ、「信用できる」が16%、「信用できない」が69%に上った。この数字は、法改正に賛成・反対の割合、さらに法改正に賛成の人でも「急ぐべき」と答えた人と「急ぐべきではない」と答えた人の割合とほぼ同一である。このことは何を意味するのだろうか。朝日はこの結果についてきちんと分析すべきだと思う。
 次に芸能人らがツイッターなどで活発に意見を述べていることについて、こうした発言への関心度を質問したところ「大いに」が14%、「ある程度」が38%で、計52%に達し、「関心がない」と答えたうち「あまり」が32%、「全く」が14%で、計46%だったという。ただ、この質問はあまり意味がないと私は思う。私もだれだれが#で法改正に反対と主張した場合、有名な芸能人だったら「へえ」と思うくらいの関心は持つが、彼らの主張に感化されることはない。実際芸能人の意見に感化されて「反対派」になった人がいるのだろうか。もしいると朝日が考えているのだったら、「反対派」の中で芸能人に感化された人の割合も調査すべきだった。こんな質問は時間の無駄。
 最後に関心を持つ人の年代別割合を朝日は分析しているが、30代、40代は4割超、60代は6割が関心あると答えており、年代が上がるほど関心度も高まっているようだ。そして「関心がある」層に限ると法改正に賛成は10%、反対は79%だったという。一方、無関心層では賛成21%、反対48%だった。この質問もおかしいと思うのは、無関心層に法改正の賛否を問うこと自体、意味がないと思われるからだ。朝日だけではないが、メディアはしばしば世論調査で無意味な質問をするケースがある。
 
 なお内閣支持率は前回(4月)の41%から33%に急落した。これはモリカケ問題で世論が沸騰した18年3,4月の31%に次ぐ低さで、危険水域とされる30%を割り込む勢い。もし、今週中に政府与党が強行採決に踏み切るようだと、一気に30%を割り込むことは必至だ。その場合(強行採決した場合)、朝日はもう一度週末に内閣支持率の世論調査をしてもらいたい。(18日)





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