小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

狂い出したNHKにつける薬はないのか?

2018-01-15 03:00:05 | Weblog
 公共放送としてのNHKの放送姿勢が問われている。NHKスペシャルもクローズアップ現代も、政治問題から逃げ回っているのだ。NHKが大スポンサーである相撲協会の不祥事も、NHKだからこそ膿を出し切る努力をすべきなのに、それからも逃げ回っている。14日のサンデースポーツでは春日野親方が解説を担当したが、その冒頭で親方が多少謝罪めいたことを述べたが、それで禊が済んだと思っているのか。いや、NHKとしては、それで幕引きをしたいのだろう。
 日曜討論について書く。6日には各政党党首の個別インタビュー番組を放送した。問題は日本共産党の志位委員長へのインタビューだ。日本共産党は日ごろから中国共産党や北朝鮮の独裁体制を批判し、日本共産党は独裁政治は行わないと主張している。が、それが嘘っぱちであることが、明らかになった。
 先の総選挙で日本共産党は大敗した。当然、志位執行部は責任をとって総辞職して新体制を構築すべきだったが、志位執行部の支配体制は盤石である。党内で執行部の責任を問う議論も生じていないらしい。ということは日本共産党には党内民主主義がゼロの組織だということがはっきりした。日頃、日本共産党の主張には共鳴できる点も少なからずあっただけに、党内民主主義がまったく機能していない実態に、私は愕然とした。日曜討論の司会者は、日本共産党のそうした独善的姿勢をまず問うべきだった。政策論はそのあとの話である。
 私はNHKのふれあいセンターの責任者(スーパーバイザー)に「NHKは何を考えているのか」と猛烈に抗議した。責任者は恐縮して、担当者に必ず伝えると約束した。
 昨14日の日曜討論では南北会談の「成果」についておもに専門家や学者に意見を聞く討論番組を放送した。それはそれで構わないが、慰安婦問題に関する日韓合意を巡って日韓関係がぎくしゃくしている中で、あえてその問題を避けて南北会談の「成果」を、各政党の開港関係責任者に議論させるのではなく、外野席の学者たちに無責任な議論をさせたのはなぜか。
 それでも、南北会談によって朝鮮半島の緊張が多少緩和する兆しが見えたようだが(現に米トランプ大統領は、「アメリカとともに北朝鮮に対する圧力と制裁を強化する」としてきた安倍総理をつんぼ桟敷において、「金正恩委員長と良好な関係を築きたい」と述べている)、南北会談の「成功」によって日本の安全保障環境にどのような変化が生じたのかという、私たち日本国民の最大関心事に、日曜討論の司会者は全く触れなかった。私は当然NHKのふれあいセンターの責任者に猛烈に抗議して、この最重要な問題を避けてなぜ今南北会談をテーマにしたのかと厳しく追及した。責任者は「申し訳ありませんでした」と謝罪して再び「担当者には必ず伝えます」といったが、NHKの体質が変わらない限りこうした放送姿勢は変わらないだろう。
 安倍総理は第2次政権の誕生以来、一貫して「日本と取り巻く安全保障環境は厳しい状況にある」として日米同盟の深化の必要性を強調し、内閣法制局による国連憲章51条のでたらめ解釈すらひっくり返し、「交戦権」を否認した憲法9条2項も無視した集団的自衛権行使容認の安保法制を強行採決した。
 そのうえ北朝鮮がアメリカの核の脅威に対する抑止力として核・ミサイル開発を強行するようになると、安倍総理は「日本を取り巻く安全保障環境は戦後かつてないほどの厳しさを増している」と主張し、メディアがその欺瞞性を暴くことができなかったことを「これ幸い」と解散・総選挙を強行して改憲勢力の勝利を収めることに成功した。
 安倍総理は、日本の安全保障環境を再整備すると称した日米同盟の深化を図り、北朝鮮の「挑発」に対する抑止力として軍事力の強化を図りつつある。 
 が、よく考えれば、これほど矛盾した話はない。日米同盟の深化によって日本の安全保障上のリスクが軽減できるのであれば、なぜ「抑止力」として自衛隊の軍事力を強化する必要があるのか。また日米同盟の深化をうたい、「会話で解決する時期は終わった。圧力と制裁を強化して北朝鮮に核・ミサイルの開発を断念させるまで、日本はつねにアメリカと100%友にある」とことさらに北朝鮮を挑発して、北朝鮮から「有事の際には日本を真っ先に火の海にする」とあからさまな敵視宣言をされている。
 いったい安倍総理の安全保障政策は、日本の安全保障環境のリスクを軽減できたのか、それともかえってリスクを増大させることになったのか、中学生でもわかるだろう。
 南北会談について、日本政府はまったくコメントできない。当たり前だ。「会話で解決する時期は終わった」と、発言が日替わりに変わるトランプ大統領が最も強硬姿勢だった時期に、「アメリカと100%ともにある」と宣言してしまった手前、ここでまたどう転ぶかわからないトランプ大統領に振り回されて対北朝鮮政策をころころ変えたりしたら、安倍総理は鼎(かなえ)の軽重を問われることになる。
 安倍総理にとって幸いだったことは、この時期、バルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)を歴訪する日程が組まれており、いま遠く離れたバルト三国の首脳に一生懸命「北朝鮮に対する圧力・制裁の強化」で協力を求めている。バルト三国は日本の経済援助がほしいから儀礼的に安倍総理の要請に応えることを表明して安倍総理の顔を立てはしたが、もともとバルト三国の北朝鮮との関係はほとんどない。北朝鮮にとっては痛くもかゆくもない「圧力と制裁の強化」だ。
 そもそも、抑止力とは何か、ということについてメディアも政治家も真剣に、そして論理的に考えたことがないのではないか。たとえばリベラル色を強めている朝日新聞ですら、昨年末に連載した『変わる安全保障:抑止力を問う』のシリーズで、「抑止力」についてこう定義している(12月29日付朝刊)。

攻撃してくればダメージを与えるという姿勢を事前に示すことで、相手に攻撃を思いとどまらせるという軍事力の役割。相手に抑止を効かせつつ不測の事態を防ぐには、軍事的対応を実行する「意図」と「能力」を相手に正確に認識させることが必要とされる。日本の抑止力は日米安保に基づく在日米軍をはじめとする米国の攻撃力に強く依存しているのが実情だ。北朝鮮問題では、恐怖を感じている相手を追い詰めると、かえって攻撃を誘発する「抑止と挑発のジレンマ」も指摘されている。

 この定義のうち後段については、たぶん私が一番先にハルノートの挑発に乗って日本が無謀な対米開戦に踏み切ったことを例にとって、日米韓が北朝鮮に対して軍事的挑発を強めすぎると北が「窮鼠、猫を噛む」の虚に出かねないことを警告した。それを論客としても知られる丹羽宇一郎氏がそっくりパクった主張をTBSの時事放談でしたことがあるが、軍事的抑止力の強化はかえってリスクを高めることになりかねないというのが歴史的教訓だ。
 日本が北朝鮮を挑発しない限り、北朝鮮が日本に対して敵視政策をとることはあり得ないと私は考えているが、仮に北朝鮮の核・ミサイル開発によって日本の安全保障が脅かされると仮定しても、最も有効な抑止政策は、これまでも何度も書いてきたように「拉致問題を一時的に先送りしても北朝鮮との平和条約交渉を進め、北朝鮮の政策を軍事優先から経済優先に切り替えさせるために経済援助に踏み切るべき」である。
もともと北朝鮮は日本が統治していた時代に工業振興政策を進めてきた経緯もあり、かつてはアジアにおける先進工業地域でもあった。日本の援助によって韓国が先進工業国の仲間入りができるようになったのと同様、北朝鮮も先進工業国の仲間に入れるようになれば、日本をはじめアメリカや韓国、中国、ロシアなどとの経済的互恵関係が強まり、北朝鮮の政治体制の安定にもつながる。北朝鮮にとっても、また日本や韓国、アメリカにとってもそうした経済的関係を強めることが、軍事力に頼る必要がない最大の抑止力になりうる。歴史から学ぶということは、そういうことだ。アメリカの挑発に乗ってバカげた戦争を始めた日本が、今度は北朝鮮に対するバカげた挑発を繰り返して北朝鮮の暴発を招こうとしている。「馬鹿につける薬はない」という。