小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

安倍さん、日米同盟深化が唯一の安全保障策というなら、いっそのことアメリカに自衛隊基地を作ったら…

2017-11-24 06:40:51 | Weblog
 「印象操作選挙」――先の総選挙を、そう命名することにした。なぜか。
 安倍総理は臨時国会の冒頭解散について「国難突破解散」と命名した。もともとは、安倍総理は解散の大義を「消費税増税分の一部を教育支援に充てることについて、国民に信を問う」とするつもりだった。14年11月の解散のとき、「消費税増税の延期について国民に信を問う」ことを大義にしたからと言うが、それは真っ赤なウソである。
 確かに安倍総理はそのつもりではあった。民主党政権最後の総理であった野田氏が、自民党総裁の安倍氏、公明党代表の山口氏との間で約束した3党合意では15年10月に消費税を10%に引き上げることになっていた。が、景気回復が思うように進まず、消費税の増税時期を延期せざるを得ないと判断した安倍総理は、消費税増税延期を解散の大義にすれば民主党は「3党合意の違反だ」と反対するだろう、しかし国民は増税延期を主張する自民党を支持してくれるだろうと読んだのだ。
 が、民主党は消費税増税延期に異を唱えなかった。かといって海外歴訪中に安倍総理の指示によって永田町で吹き荒れていた「解散風」に今更ストップをかけることはできず、安倍総理はいとも簡単に解散の大義を「アベノミクスの継続を国民に問う」と変更して解散・総選挙に踏み切った。つまり14年の総選挙の争点は「消費税増税延期の是非」ではなかった。そのことをすっかり忘れているとしたら、安倍総理は健忘症か、あるいは認知症の可能性がある。
 アベノミクスの継続について国民に信を問う、と言われても有権者は戸惑うばかりだ。だから私はこの時の選挙を「選択肢のない選挙」と命名し、憲政史上最低の投票率を記録するだろうとブログで予測した。
 14年の選挙のときも私は『総選挙を考える』シリーズを7回にわたって書いたが、その1回目のタイトルは『解散の大義はアベノミクスの継続のためか?』であった。7回のシリーズのうちタイトルにアベノミクスを入れたのが4回ある。一方、タイトルに「消費税」を付けたのは1回もない。さらに念を押すと、シリーズの最終回の冒頭部分で私はこう書いている。

 当初は消費税増税時期延期を選挙の争点にしたかった安倍総理としては、解散の大義を「消費税増税について国民に信を問う」と、小泉首相が行った「郵政解散」のような選挙に持ち込みたかったのだが、国民も野党もメディアも、安倍総理の思惑に乗ってこなかった。

 ここまで念を押せば、安倍総理が健忘症か認知症か、あるいは大ウソつきかのいずれかだということが明白だろう。
 それはともかく、前回の解散の大義を巡って混乱したことをすっかり忘れていた安倍総理は、「消費税増税分の使途」は選挙の争点にならないことがわかって急きょ「国難突破解散」と、大義を変更した。国難は二つあり、少子高齢化と北朝鮮対策だという。少子化問題については前回のブログで書いたので、北朝鮮問題について書く。
 どうもよくわからないのは、トランプ大統領の北朝鮮対策である。アジア歴訪の後、「金正恩委員長と友達になりたい」と言って、米朝関係が雪解けに進むのかと期待したが、その舌の根も乾かないうちに北朝鮮を再び「テロ支援国家」に指定して、北朝鮮の反発を招いた。単なる気まぐれなのか、それとも安倍総理と同様、健忘症または認知症なのか。
 少なくともトランプ大統領が「友達になりたい」と発言して以降、北朝鮮はトランプ大統領が態度を一変させるような「挑発」行動は何もしていない。
 もっと訳が分からないのは、安倍総理が直ちにトランプ大統領の「テロ支援国家」指定を無条件に支持し、100%アメリカと常に行動を共にするとまで宣言したことだ。ということは、もし米朝間で軍事衝突が生じた場合、集団的自衛権行使容認の「新3要件」に該当しない場合でも、日本の自衛隊は米朝衝突に参戦するということなのか。
 北朝鮮がグアム周辺の海にミサイルを発射する計画があることを発表した時、小野寺防衛相は「グアムの米軍基地が攻撃されたら日本の抑止力が低下する。集団的自衛権行使の可能性がある」と発言した。この発言をメディアも野党もあまり問題視しなかったが、そこまで「新3要件」の解釈を拡大するなら、いっそのことグアムに自衛隊基地を置いて米軍を守ったらどうか。
 グアムに駐留している米軍はただの飾り物ではない。日本の米軍基地も日本防衛のためだけではない。有事の際にはグアムや日本の米軍は戦場に赴く。日本の抑止力は当然だが、低下する。
 実際、そういう事態が生じたことが過去にある。朝鮮戦争のときやベトナム戦争のとき、日本に駐留していた米軍は戦場に向かい、日本の防衛力は著しく低下したことがある。当時はまだ冷戦下で、旧ソ連を盟主とする東側と、アメリカを盟主とする西側が常に一触即発の状態にあった。とりわけ朝鮮戦争時には日本を占領していた米軍がすべて戦場に向かって、日本は空っぽになっていた。その事態が、そもそも自衛隊創設の契機になったという事実もある。
 安倍総理が、とことん運命をアメリカと共にするというなら、もう一度日本をアメリカに占領してもらったらどうか。もし日本国民が容認するならば、の話だが…。
 次の総理候補と目されている石破氏も、「いざというとき、アメリカが日本のために血を流してくれるという保証はない」と、日米同盟の危うさを危惧している。
 が、もっと問題なのは日米同盟の深化が日本の抑止力の強化につながっているのか、という根本的な問題についての検証がなおざりにされていることだ。
 安倍総理は国会の所信表明演説で「いま、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後、最も厳しいといっても過言ではありません」と述べた。本当は朝鮮戦争やベトナム戦争のときのほうが厳しかったのだが、ま、認知症総理の所信表明だから、と黙認するわけにはいかない。
 北朝鮮問題の「危機」をそうやって煽り立てて、安倍自民党は総選挙で大勝した。「印象操作」に見事に成功した。だから麻生副総理は「自民党の大勝は北朝鮮のおかげ」と、つい本音を漏らしたのだ。
北朝鮮は核・ミサイル開発について一貫して「アメリカの核の脅威に対抗するため」と明言している。石破氏が「非核3原則(核は持たず・作らず・持ち込ませず)のうち『持ち込ませず』は考えたほうがいい」と主張したのも、北朝鮮の核・ミサイルに対抗するため米軍基地に核を配備することを考えようという意味だ。いちおう日本の核ではないから「持たず・作らず」は維持できる。
 北朝鮮が日本を敵視するかのような発言を繰り返しているのは、日本がアメリカの手先になってアメリカと一緒に軍事的圧力をかけるなら、という前提での警告だ。日本が北朝鮮の核・ミサイルを脅威として自衛のために核配備をするというなら、北朝鮮がアメリカの核を脅威と感じて自衛のために核・ミサイル開発に狂奔することを非難できるのか。
 まして、日本が国際社会に向かって「日本の核武装は北朝鮮の脅威に対抗するためで、他意はない」と弁解しても、中国や韓国、アジアの諸国が善意で解釈してくれるとは限らない。いまはとりあえず北朝鮮の核に対抗するためだとしても、いったん核を持てば、それは日本のすべての周辺国にとって脅威になる。北朝鮮と同様、日本が国際社会で孤立化することは目に見えている。
 北朝鮮の核・ミサイルに国際社会が反発しているのは、「いまは対米を口実にしているが、その核がいつ他国への軍事的圧力として機能するかわからない」という不安感からだ。同様に、日本の軍事力強化は、いまは「北朝鮮に対する自衛力の強化」という口実で行われても、いったん強化された軍事力は日本の周辺国にとっては大いなる脅威に転化する。そのくらいの理屈は中学生でもわかろうというものだ。
 日米同盟は、冷戦下においては確かに日本の安全保障にとって大きな役割を果たしてきた。が、冷戦時代が終わり、日本の周辺国で日本を侵略しようなどという野望を持っている国は一つもない。安倍自民党が主張するように、日米同盟の深化が日本の安全保障や抑止力の強化になるというなら、なぜ安倍総理は所信表明演説で「いま、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後、最も厳しいといっても過言ではありません」などという必要があるのか。
 日米同盟の深化によって日本の安全保障と抑止力が高まるのであれば、日本は軍事力を強化する必要などまったくないはずだ。
 もし、「日本がアメリカのために血を流す必要がないのに、アメリカがなぜ日本のために血を流す必要があるのか」という日米安保条約に対する反発の声がアメリカ国内に多いことは私も承知している。
 だったら、日本もアメリカのために血を流す覚悟があることを示せばいい。グアムだけでなくアメリカ本土のワシントンDCやニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの主要都市周辺に自衛隊基地を設置して、日本もアメリカのために血を流す用意があることをアメリカ人に示せばいい。その代り、もちろん地位協定は結ばせてもらう。
 念のため、アメリカに駐留する自衛隊が「戦争に巻き込まれる危険性」は限りなくゼロである。アメリカを攻撃しようなどという国はあり得ないからだ。北朝鮮にしても、自ら暴発することは考えられない。アメリカは北朝鮮を暴発させようと挑発の限りを尽くしているが、北朝鮮は極めて冷静である。
 はっきり言ってアメリカが北朝鮮に対する敵視政策をやめれば、北朝鮮も核・ミサイル開発に血道を上げることをやめる。日本にとって北朝鮮との関係で拉致問題はのど元に刺さったとげで、そのとげは簡単には抜くことはできないだろうが、アメリカに北朝鮮に対する挑発行動をやめさせ、北朝鮮の体制維持のためには中国のように経済発展で国際社会に貢献することだ、と説得することはできる。そのために資本・技術の支援を日本は惜しまないという意思を北朝鮮に伝えれば、北朝鮮の態度も急速に軟化に向かう。軍事力の強化に使う金があるなら、北朝鮮の経済発展のために使うほうが、日本の安全保障にとってもよほど効果があるのではないだろうか。
 少なくとも、北朝鮮の脅威を煽り立てた「印象操作」選挙で圧勝した安倍・自民党は、日米同盟の深化にのめり込むことで、かえって安全保障上の大きなリスクを抱え込むことになったことだけは間違いないだろう。