小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

与党が質問時間を5:5にしろというなら、そうすればいい。ただし野党に十分な質問時間を与えたうえでだ。

2017-11-14 08:46:08 | Weblog
 11月1日に召集された特別国会が、すでに2週間になろうというのにばかばかしい問題で与野党の折り合いがつかず、時間ばかりを浪費している。
 もともと特別国会は、与党の当初予定では首相指名や正副議長の選出など最小限にとどめ、11月8日までの日程を考えていた。が、憲法の規定に基づく野党要求の臨時国会を開催せず、短期間の特別国会でモリカケ疑惑にふたをしてしまおうという自民党の姿勢に野党が猛反発、特別国会の会期が12月9日までの39日間に延ばされることになった。
 その結果、来年1月まで行うつもりがなかった総理の所信表明演説や代表質問、予算委員会でのモリカケ疑惑の審議が行われることに、いったんはなった。が、安倍総理としてはモリカケ疑惑の審議はできるだけ避けたい。避けられないものなら、せめて審議時間を極力短くして野党の追及を逃れたい。
 そこで、政権中枢のだれが思いついたかはわからないが(そういう姑息なアイデアを出しそうなのは前副総裁のような気がするが…)、自民党の石崎議員ら3人の3回生議員が同党の森山国対委員長に「質問時間を議席数に比例配分してほしい」と申し入れたという。が、それは建前で、自民党の萩生田幹事長代行によると、質問時間の見直しを支持したのは安倍総理自身だという(朝日新聞)。「選挙でこれだけの民意をいただいた。我々(自民党)の発言内容にも国民が注目しているので、機会をきちんと確保していこう」と首相官邸で話したという。
 野党は、モリカケ疑惑について言いたいことだけ言って聞く耳を持たないなどとは言っていない。総理をはじめ、関係者全員に十分説明をしてもらいたいと言っている。たとえば野党議員の5分間の質問に対して、総理自身が選挙後に誓ったように「丁寧に」1時間でも2時間でも国民が納得できるまで説明をしてもらいたい、と野党は主張している。
 安倍総理は野党議員の質問に対して「何度も同じことを聞かないでほしい」とうんざりした顔を見せるケースが多いが、質問にちゃんと答えないから同じ質問を繰り返さざるを得ないことになる。質疑応答がしばしば堂々巡りになるのは、その結果であり、質問時間の配分の問題ではない。

 質問時間の配分は民主党政権当時に自民党の要求によって「与党2:野党8」になり(それまでは「与党4:野党6」)、以降この配分が慣例化してきた。
 民主主義の最大の欠陥は、これまで何十回も繰り返してきたように「多数決原理」にある。「少数意見にも十分耳を傾けよ」というのは、その欠陥を補う唯一の方法だからだ。しかし、採決においては少数意見が採用されることはあり得ない。だからこそ開かれた政治は、国民が少数意見を聞く機会を多くして、次の選挙に民意が反映できるようにすることなのだ。実際、国会図書館の調査によれば、欧米主要国の大半は野党に質問の機会を多く与えているという。
 選挙後、小泉議員がぶら下がりの番記者に「政府が与党にまったく図ることなく、勝手に事を決めている。何のための党か」と苦情を述べたことがある。この発言について菅官房長官は「政府と与党は一体だ」と小泉発言を否定した。
 小泉議員が言うように政府と与党がかい離しているのなら、与党議員にも政府に対する手厳しい質問をする機会を大いに与えるべきだろう。が、菅官房長官が言うように政府と与党が一体なら、与党議員は何を質問するのか。質問時間が余って般若心経を唱え出した自民党議員がいたが、若い議員は般若心経など知らないだろうから、委員会室にカラオケボックスでも持ち込もうというのか。
 政府・自民党が「与党議員の質問時間を増やせ」と野党に迫る理由は何か。与党議員の質問時間を増やせば、その分、野党議員の質問時間を削らざるを得ない。では、なぜ削りたいのか。
 今国会で唐突に飛び出したことを踏まえると、やはりモリカケ疑惑で野党に追及質問の時間をできるだけ少なくしたい、という思いが透けて見える。
 かつて竹下元総理(故人)は民主政治の原点として「政府は法案作成過程で与党と十分審議を重ねている。少数意見に耳を傾けるという意味においても、質問時間を野党に多く配分するというのが自民党の伝統だ」と胸を張った。選挙で圧勝した自民・安倍総裁は「謙虚に、丁寧に」と口が酸っぱくなるほど語った。なるほど野党の質問時間を削り、与党の質問(与党議員に質問することなんかあるんかい?)を増やすことが「謙虚で丁寧な」姿勢なのか。
 野党も、こういうくだらない問題で時間を浪費しないほうがいい。要は時間配分の問題ではなく、野党がモリカケ疑惑を解明するために十分な時間を獲得できればいい。だから野党は必要な時間を要求したらいい。その時間が100時間必要なら100時間質問させろ。与党議員にも100時間質問させていいから、と。それで万事めでたしめでたしだ…。