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第301回 プロレス界の悪役の変遷

2019-01-11 | エッセイ

 お待たせしましたっ!新年第1回目であり、400回に向けての第一歩でもありますので、「おめでたく」関西ネタをお届けします。

 いきなりプロレスの話題から入りますが、「関西・大阪」に落とし込む予定ですので、最後までお付き合いください。

 さて、私は、力道山の時代から、ジャイアント馬場、アントニオ猪木あたりまでをカバーしてきたごく普通のプロレスファンです。

 人並みに、日本人レスラー(当時は、「力道山」の出自が朝鮮半島だというのは、知りませんでした)に肩入れして、テレビの中継を観てました。
 でも、なんだかんだ言っても、強烈な印象を残し、存在感を示したのは、業界で「ヒール」と呼ばれる悪役レスラーたちで、もっぱら「外人の担当」と決まっていました。

 力道山の時代だと、フレッド・ブラッシーなんて名前を思い出します。得意技は、金髪を振り乱しての「噛み付き」です。グレート東郷という日系レスラーとの対戦がテレビ中継されましたが、流血まみれの凄惨な試合で、数名のお年寄りがショック死するという「事件」まで起こりました。新聞でも、結構大きく報道されたのを覚えています。

 さて、そのグレート東郷ですけど、得意技は、頭突きと凶器攻撃。一応、日本人側なんですけど、反則と凶器攻撃で、日本人レスラーの足を引っ張るというちょっと困った「ヒール」でした。
 実は、日本でリングに上がる前に、本場アメリカで、徹底的にヒールをやってきた筋金入りのレスラーです。日露戦争勝利の立役者である東郷元帥を連想させるリングネームからして、アメリカ人の神経を逆なでします。
 そこへ持ってきて、得意ワザは、相手の背後から下駄で襲うというもの。名付けて「パールーハーバー・アタック」
 ますますアメリカの観客の神経を逆なでして、命の危険にさらされたこともあるといいますから、ヒールに徹したレスラー人生だったと言えます。

 馬場、猪木時代だと、得意技は栓抜き攻撃と頭突きのアブドラ・ザ・ブッチャーとか、たいしたワザはないんですけど、やたらサーベルを振り回すタイガー・ジェット・シンなんかも頭に浮かびます。

 そんな事を思い出すきっかけになったのは、「関西人の正体」(井上章一 朝日文庫)という本です。京都出身の著者が、関西人にまつわるあれやこれやを、時に自虐的に、時に批判的に語って、なかなか読ませるのですが、その中に、なぜか「みちのくプロレス」の話題が出てきます。

 東北地方を中心に興行を行っている団体で、代表的なレスラーには、ザ・グレート・サスケなんかがいます。プロレス団体として興行していくのですから、ヒール役が必要なのですが、この団体がユニークなのは、地域性を重視して、「関西人」にそれを割り当てていることです。

 まあ、東北人同士で、敵味方というわけにもいかないでしょうし、四国、九州あたりでも、その地方の人からは恨みを買いそう・・・・関西やったら、本気で怒るヤツなんかおらんやろし、かえって面白がるんちゃうか・・・そんなことじゃなかったんでしょうか。関西出身の私でもそうすると思います。

 まずは、「スペル・デルフィン」。得意技は、「大阪弁」。
 「このボケェ~、さっさっとかかってきたらんかい!」
 「じゃっかましわ、おまえの方から、先にいてもたろかぁ~」
 居合わせたわけじゃないですが、きっとこんな大阪弁で、東北人の観客や相手レスラーを挑発したんでしょうね。そんな憎たらしい大阪人を、岩手出身の正義の味方サスケがやっつけて、東北人はやんやの喝采、溜飲を下げる、というのが、概ねの流れ。

 もう一人は、愚乱・浪花(ぐらん・なにわ)という覆面レスラー。
 で、その仮面(写真左)というのが、大阪ではお馴染みの「かに道楽」のでかい動く看板を模したもの。ホンモノの看板(写真右)より、ちょっとショボいのもご愛嬌。



 そして、リングに登場するときのテーマ曲は、もちろん「とーれ、とーれ、ピーチ、ピチ、かに料理~」と店のコマーシャルソング(関西では、誰でも知ってるナニワの巨匠キダ・タローの作曲)だというから、徹底した大阪のノリ。

 残念ながら、「スペル」は引退して、今や、大阪府和泉市議、「愚乱」は、2010年に33歳で急逝していて、上記のエピソードは、過去形になりますが・・・・
 でも、「みちのくプロレス」のウェブサイトを見ると、「バッド・ボーイ」と称する7名のヒールとおぼしきメンバーのプロフィールが載っています。そのうち2人は京都出身で、足立区2人、神奈川、北海道、秋田各1人という構成です。

 大阪出身がいないのが寂しいですが、東北対関西という対決の構図は、ぎりぎり維持されているようなので、それぞれのポジション、キャラでがんばって欲しいものです。「ヒール」あってのプロレスですから。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。