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第221回 インドネシア語講座

2017-06-16 | エッセイ

 この前、居庵さんと、お店でご一緒した時、「お互い、「言葉好き」やねぇ」という話題で盛り上がりました。現に私は、当ブログで「大阪弁講座」「英語弁講座」なんかを不定期連載してます。
 居庵さんも、スラヴ系の言語とかフランス語に強そうで、私の言葉ネタにも、いろいろツッコミを入れていただいてます。
 その席でのお約束通り、インドネシア語講座をお届けしようと思います。まっ、いたって気楽な中味で、シリーズ化の予定もありませんので、よろしくお付き合いください。

 さて、インドネシア語に興味を持ったのは、ちょっと古いエッセイですが、椎名誠の「あやしい探検隊 バリ島横恋慕」(山と渓谷社 1998年)を読んでから。バリ島は行ってませんが、ジャワ島までは、仕事で行ったことがあります。懐かしさも手伝って読み始めたら、最初の方で、インドネシア語をめぐる楽しい話題が出てきます。

 同書のネタをベースに、私の体験などもちょっと加えて、インドネシア語の世界をご紹介します。
 インドネシア語の特徴のひとつは、同じ言葉を重ねて、言葉の意味を拡張したり、強調したりするのが多いこと。
 例えば、ジャラン(jalan)というのは、「道」という意味ですが、ジャラン・ジャランというと、
「歩く」という意味になります。商社の現地駐在員から教えてもらいました。朝の散歩に出かける時、ホテルのスタッフに「ちょっと「ジャラン・ジャラン」してくる」とチャンポンで言ったら、通じたみたいで、にっこりされたのを思い出します。
 朝は「パギ」です。それが、「パギ・パギ」となると、「早朝」。同じように、夜を意味する「マラム」を重ねると、「深夜」を表すと言う具合。
 「キラ」というのは、「計算する」です。じゃあ、「キラ・キラ」というのは、じっくり、きちっと計算する、という意味かな、と思いきや、さにあらず。「おおよそ」という意味だというから、見事に肩すかし。
 「マタ」は「目」を表します。では、「マタ・マタ」は、どういう意味でしょう?じっくり見る、ジロジロ見る?
 残念でした。「スパイ」のことなんですね。確かに、じっくり見るのが、仕事ですけど・・・
 なんだか、インドネシア語を勉強してみたくなりませんか?

 「ポラン」は、ゆっくり、のんびりを表す言葉ですが、たいていの場合、「ポラン・ポラン」と重ねて使われることが多く、インドネシアの人たちの会話での使用頻度は、極めて高い。「まっ、ボラン・ボランとやりましょうや」てな調子。
 ここで、またまた、クエスチョン。「ゆっくり歩く」をインドネシア語で言うと?
 答えは、「ジャラン・ボラン」です。「ちゃらんぽらん」と似ていて、なんだか可笑しい。重ね言葉ではないが、「ゲラゲラ」というのが、「笑う」というのも、すぐ覚えられますよね。

 さて、もう一つの特徴は、日本語によく似た言葉があること。
 インドネシア語で、2人称を表す言葉は、代表的なものだけで、10ほどあります。相手との距離感に応じて、微妙に使い分けるというのは、日本とも似ています。そんな中で、比較的使い勝手がいいのが、「アンダ」(日本語の「あんた」に近い語感)。名前は「ナマ」。したがって、人の名前を訊くには、「スィアパ・ナマ・アンダ」(スィアパは「誰」という意味)と、ちょっと東北人になった気分で言えば、オッケーという次第。
 ほかにも、「飲む」は「ミノム」、「済んだ」は「スダ」、「取り替える」は「トカル」、「好き」は「スカ」、「戻る」は「モンドール」など。そして、極め付きは、「まさか」が「マサ・カ~」で、まさかと思うほど似てる。

 昔、大野晋という言語学者が、日本語の起源(ルーツ)は、南インドのタミル語だ、という説を発表して話題になったことがあります。
 タミルにしろ、インドネシアにしろ、アジアの南の方に、日本語とよく似た言葉があるというのは、なかなか興味深いなぁ、と思います。

 いかがでしたか?居庵さん、「よかったら」ツッコミ入れてくださいね。
 それでは、次回をお楽しみに。


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