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第467回 「たいたん」と「かなん」 大阪弁講座48

2022-04-08 | エッセイ
 第48弾をお届けします。

<たいたん>
 だいぶ前のことです。たまたまテレビのバラエティ番組を見ていたら、「たいたん」という言葉が飛び交ってました。「たいたん」という大阪弁を面白がって、オモチャにしていたようです。
 我が家でも当たり前に使ってますけど、そういえば、根っからの大阪弁なので、取り上げることにしました。

 「炊(た)いたもの」ー>「たいたん」と、おなじみの短縮形です。それなら「焼いたん」も「揚げたん」もある中で、なぜ「たいたん」だけが「問題」になるのでしょうか。まずは言葉の響きですね。まるで怪獣映画の悪役の名前みたいに聞こえます。その滑稽さがひとつあると思います。

 もうひとつは、調理方法への考え方ですかね。
「炊く」といえば、もっぱら「お米(ご飯)」です。その他のものを熱いお湯とかダシで調理するのは、普通は「煮る」とか「茹(ゆ)でる」と表現します。
 大阪人の場合でも、「○○を炊く」という動詞で表現するのは、「お米」と「風呂」くらいです。「大根を炊く」などとは言いません。

 ただし、「炊く」も「煮る」も「茹でる」も、素材が何であれ、概念(アタマの中)では「炊く」に一本化しているようなのです。なので、出来上がった一品に対しては、素材を問わず、「たいたん」に一本化します。「どっちも火ぃ通して出来たもんやろ。そない(そんなに)ごちゃごちゃ言い分けんでもええやん」という理屈でしょうか。いかにも横着な(面倒を嫌う)大阪人好みの用法です。
 「大根とタコの「たいたん」あるけど、食べる?」とか「夕食のおかずは、菜っ葉と薄揚げの「たいたん」にしょうかな」のような使い方になります。こんな一品はどうですか?美味しそうでしょ。あまりにも身近すぎて気がつかない大阪弁というのがあるものですね。


 
<かなん>
 といっても、非ネイティブの人には何のことか想像がつかないのではないでしょうか。「適(かな)わない」の省略形です。
 「かなわん」という形と、「かなん」という最短縮形があります。

 で、両者には微妙な使い分けがある気がするのです。 
 「かなわん」の方は、技量、能力などで相手の方が勝(まさ)ってるのを(いやいやながら)認めるニュアンスで使われます。共通語に近いです。
 ただし、あっさり負けを認めるのを良しとしないのも大阪人。なので、「あいつの要領の良さときたら、とてもやないけど「かなわん」わ」のように、イヤミや負け惜しみを込めるのを忘れません。

 さて、「かなん」となると、2つほどの意味、用法が思い浮かびます。
 まずは、相手の傍若無人ぶりであったり、非常識ぶりに、まともに太刀打ちできず、迷惑を蒙っている・・・そんなメッセージを伝えるのに最適の用法です。
 「あいつな、他人(ひと)から聞いたことを、考えもなしにパーパー、パーパーしゃべるやろ。そやから、そいつの前では大事な話が出来んわけや。ほんま「かなん」でぇ」
 だいぶボヤキも入ってますな。
 
 もうひとつは、心苦しい、気ぃを遣う、申し訳ない・・・そんな気持ちを込めて使うケースです。相手の好意が過大で、こちらが負けそう、という気持ちから派生した言い方でしょうか。
「ほんの気持ちばかりの品をお届けしただけやのに、こんな立派なお返しをしてもろて「かなん」なぁ。今回限りにしといてや(してくださいよ)」
 いろんなニュアンス、用法があって、「かなん」「かなわん」大阪弁です。
 
 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。
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