★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
           毎週金曜日更新

第365回 ラジオの時代

2020-04-10 | エッセイ

 イヤな病気が世界中に蔓延して、いろんな業界に影響が出始めています。テレビ業界も例外ではないようで、つい最近観たテレビ番組でもそれを感じました。

 「つぶやき英語」(Eテレ 毎週金曜日21:30〜)というのがそれで、ツイッターなどSNSでの英語のつぶやきを紹介しながら、世界の今を知り、ついでに語学の知識も身につけようという狙いの番組です。
 この4月に、それまであった同趣向の番組のタイトルと出演者を一新し、進行役には爆笑問題の太田光を迎えてスタートしました。その記念すべき第1回の放送ですけど、当然のことながら、今、世界中を覆っている災禍がテーマです。

 テーマがテーマですから、太田もいつもの「知的っぽく」「シニカルな」コメント、ツッコミで笑いを取りに行けません。いつになく言葉少なく、終始暗く、場違いな顔で座っていたのが印象に残りました。太田も事務所もオファーがあった時は、きっと大喜びで受けたのでしょうが、まさかの展開です。事態の終息までの暗い雰囲気の中、英語圏を舞台に、今後どんなトピックを選んでいくか、制作側の苦労が思いやられます。

 そういえば、先日も、NHKと民放で、一部のドラマの収録を延期するとの報道がありました。ドラマに限らず制作全般に大きな影響が出そうです。
 情報番組の場合でも、海外ロケはもちろん、国内も、出演者、スタッフの移動手段、場所によっては宿泊ということなどを考えれば、企画にも何かと制約がありそうです。当面は再放送、総集編などでしのぐとしても、終息が長引けば、鮮度が落ちるのは避けられません。

 テレビの世界を席巻しているバラエティー番組の制作にもいろんな困難が予想されます。 
 まずは、不可欠な「ひな壇」です。あの「密着」がいつまで許されるのかな、というのが気になります。そんなに広くもないスタジオで収録しているようですから、間隔を空けるといってもそう簡単ではないでしょう。タレントさんを減らせば、番組自体がショボくなりますし。

 スタジオとか大きなホールなどに観客を入れて一緒に盛り上がる、というバラエティ必須の設営も厳しくなりますね。
 毎週日曜日の夕方、私が欠かさず観ている「笑点」も、少し前から「無観客」になりました。収録に立ち会っているスタッフであろう人たちの笑い声が、時々寂しく響きます。
 でも、「無観客」なので、出演者同士が、遠慮なくツッコミを入れあったり、勝手に盛り上がる場面もあったりして、それはそれで楽しんでいるのですが・・・

 コマーシャル制作にもいろいろ神経を使うケースがありそうです。ビール会社のコマーシャルでしたが、若者が居酒屋に大勢集まって、「カンパーイ」とやっていました。ごく当たり前の作り込みなんですけど、自粛ムードとの兼ね合いが難しそうだな、と余計な心配までしてしまいます。

 と暗い話題を取り上げながら思うのですが、テレビ業界も今回の事態を奇禍として、シンプルでコンパクトな番組作りということにも(この事態が終息してからでいいですが)目を向けてはどうでしょうか。
 2時間、3時間枠の特番は当たり前、タレント総動員で、大騒ぎ。中身はと言えば、同工異曲の横並び。「中には」そんな番組もあっていいのですが、大型企画が目白押しで、熱すぎる現状にはいささか辟易とします。
 登場人数は量より質、企画、構成に知恵を絞って、ゆったりと映像や情報に浸れる。放映も1時間程度・・・そんな番組だったら「テレビ離れ」の私も観るでしょうが、今時、かえって贅沢でしょうかね。

 一方で、ラジオというコンパクトなメディアがもっと注目されていいのかなと、常々感じています。

 私の場合、昼から車で出かける時は、お気に入りの歌謡曲とクラシックの番組を聴きます。どちらも女性アナが一人で淡々と曲紹介して進行していくのが、わずらわしくなく、心地よいのです。ほぼ同じ時間帯の「大竹まこと ゴールデンラジオ」(文化放送)にも時々耳を傾けます。(画像は番組HPから拝借しました)

 辛口の社会批評も飛び出す割合硬派な番組ですが、大竹と日替わり女性パートナーやゲストとのトークが華やかで楽しいです。「音」だけという不利を逆手に取って、しっかりした構成で魅力ある番組にしようという意欲が伝わってきます。そうそう、スマホでラジオが聞けるアプリ(NHKは「らじるらじる」、民放は「radiko」)を投入するなど、テレビに比べればマイナーなメディアであるがゆえの経営努力にも頭が下がります。

 何はともあれ、今の事態が一日も早く終息することを心から願っています。その上で、テレビ業界には少しばかりの改善を、そして、がんばっているラジオの世界にもちょっと目を向けて、じゃなかった「耳を傾けて』もらえれば、というのが、それに続く私のささやかな願いです。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。

この記事についてブログを書く
« 第364回 英国暮らしの傾向と... | トップ | 第366回 ちびっこ言語学者 »
最新の画像もっと見る