★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
           毎週金曜日更新

第268回 アメリカの1コマ漫画ー1

2018-05-18 | エッセイ

 学生時代、輸入版のPLAYBOYを、仲間内で回し読みしてました。一番のお目当ては「美人の女性の写真」です。ついでに、1コマ漫画(Cartoon)も、チェックしてました。必ず登場人物がしゃべっていて、そのセリフがキャプションになってるというのがお約束です。残念ながら、社会的・文化的背景への知識不足もあって、笑えたのは半分くらいでしたけど・・・・

 そんな時代に読んだ「進化した猿たち」(星新一 早川書房 1968年)と「新・進化した猿たち」(同 1971年)には、衝撃というか、笑撃(?)を受けました。

 著者の「星新一」といえば、ショート・ショートですが、アメリカの1コマ漫画の大収集家としても知られた人でした。「ザ・ニューヨーカー」のような高級誌から、パルプマガジンの類いまで、カバーしていたといいます。

 その成果を、テーマ別に、豊富な図版と軽妙な解説で集大成したのが、この2冊です(のちに、ハヤカワ文庫と新潮文庫から、各3分冊で出版)。
 最近、よりぬき版である「進化した猿たち The Best」(新潮文庫)が出版されたので、懐かしく読み返しました。

 どうせなら、全部を読み直そうと、得意の古書店回りで、新潮文庫版3冊を、苦労の末、入手できました。アメリカならではのテーマを中心に、ごく一部ですが、ご紹介しようと思います。半世紀を経て変わらぬ笑いのエッセンスをお楽しみください。

 星が、一番最初に選んだジャンルは、<死刑>です(章のタイトルは、「死刑を楽しく」)。シリーズの第1弾なので、あえてインパクトのあるジャンルを選んだと書いています。

 日本ではマンガになりにくい深刻なテーマです。でも、死刑になるくらいの悪いヤツを笑いのめすのだから、ということなのでしょうか、高級誌などは扱わないややマイナーな分野ながら、ひとつのジャンルになっているようです。

 死刑といえば、(かつては)電気椅子。ひとりの死刑囚のひざの上に、もうひとりの死刑囚が乗っかって、執行を待っている。刑吏の言葉「電気代が値上げになったのでね」
 二人同時に執行して、「節電」というわけです。

 電気椅子の座面に、画鋲が置いてある。気づいた死刑囚「うっかり座るとこだったぜ」。刑吏のにんまりした顔。

 電気椅子の上で、最後の抵抗とばかり暴れまくる死刑囚。それをガラス越しに見る被害者の家族(州によってはこういう制度があります)の一言「この見物が楽しみなんですよ」



 銃殺という手段もあります。塀際に縛られて立つ二人の死刑囚。ひとりが、もう一人に声をかける。「ふるえてるところをみると、おまえははじめてらしいな」

 <アダムとイブ>も、日本人が考えるほどの宗教的タブーではないようです。とにかく、この世のなかに、男女一人ずつしかいない(はず)の状況ですから、格好のネタになってます。

 石の上にふてくされて座ってるイブにアダムが言っている。
 「信じてくれよ。君を愛しているんだ。君以外の女性には、目もくれたことがない」

 木の下で、色っぽくポーズをとるイブ。通りがかったアダムが声をかける。
 「美人だな。その辺でお茶でも飲まないかい」アダムの顔が、中年のスケベそうなオッサンになってるのが笑えます。



 <結婚カウンセラー(実態は、離婚カウンセラーのようですが)>が、商売として成り立つのもアメリカという国。「結婚の修理屋」とのタイトルで紹介されるのは・・・・

 カウンセラーを前にした夫婦。夫が、足を机の上にほうりだして、ぞんざいな態度で答えている。「夫婦で取り組んでること、ありますよー--喧嘩です」

 変なカウンセラーも当然登場する。相談に来た夫婦を前に、電話で怒鳴っている。
 「ばか。仕事の邪魔だ。事務所に電話するなと何度言ったらわかるんだ。しかも、結婚記念日などという、くだらんことで」

 お楽しみいただけましたか?それでは、次回をお楽しみに。

<追記>続編を、第324回でアップしています。リンクは<こちら>です。合わせてご覧いただければ嬉しいです。

この記事についてブログを書く
« 第267回 facebookの今 | トップ | 第269回 韓国旅行ハプニング集 »
最新の画像もっと見る