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第255回 大阪弁講座−30 「さん」と「はん」

2018-02-16 | エッセイ

 当大阪弁講座も、区切りの30回になりました。例によって、「単なる通過点」という認識ですので、引き続きご愛読ください。

 ひとつの区切りですので、今回は、「「さん」と「はん」」特集をお届けします。

 人を呼ぶときの呼称で、全国共通の「さん」と、大阪独自の「はん」。その使い分けは、なかなか奥が深いようです。 

 ものの本によると、人の名前とかにつける敬称は、もともと大阪・関西では、「さん」か「はん」が主流だったらしいのです。宮廷で使われる「御所ことば」でも、「禁中さん」「皇后さん」「東宮さん(皇太子殿下)」などと呼ばれていたというんですね。
 ですから、古い大阪人にとっては、「さま」というのは、東京弁に近い感覚。
 もちろん、今どきは、関西でもあらたまった呼称としては、「さま」も定着してますが・・・

 さて、「さん」と「はん」を、どう使い分けるか?「どっちでもええ」というわけではなく、大阪人なりに、使い分けてるフシがあります。

 その基準と言うのが、まあ、ビミョー。ごく大雑把にいえば、「さん」のほうがややあらたまった感じで、「はん」は、親しみを込めた呼称、ということになるでしょうか。

 現に、神仏関係は、「さん」づけが基本。「神さん」「仏さん」は当然として、「天神さん」「弁天さん」「戎(えべ)っさん(戎神社)」などと称し、決して「はん」にはなりません。こちら、「戎(えべ)っさん」です。


 そんなに有り難みとか、効能を信じてるわけではない。けど、どこでお世話になるかわからんし、怒らしてもなんやから、とりあえず「さん」づけで・・・みたいな感じですかなぁ。計算高さが顔を出してる。

 「旦那さん」という言い方も、縮めて「だんさん」にはなりますが、「だんはん」にはなりません。
 「嫁」(ちなみに、人の奥さんだけでなく、自分の妻のことも関西では、「嫁」と呼びます。)は、「さん」でも「はん」でも両方可。でも、自分の「嫁」は、「はん」が多そう(「ウチの嫁はん」のように。別に統計とった訳やないですが・・)。

 実態はともかく、他人の前では、他人行儀な関係ではない(当たり前ですけど)、仲良くやってるという記号なんでしょうね。
 で、他人(ひと)の嫁は、「さん」が多いけど、家族ぐるみの付き合いレベルだと「はん」でオッケーと言う感じ。親密度が、もう一段進めば、「アンタとこのオカン」(「とこ」は「ところ」の、「オカン」は「オカアサン」の省略形)という呼び方も。

 面と向かって、名前を呼ぶときも、やはり「さん」が普通。よっぽど親しければ、「はん」になります。
 肩でもバシッとたたきながら、「なあ、田中「はん」、男やったら、ここは一発、勝負でっせ(ですよ)」てな具合。何の勝負か知りませんが・・・

 それで思い出すのが、中学校での朝礼の時のこと。

 ちょっと強面だけど、酒が大好きな杉村という数学教師が、二日酔いの青い顔して、脇に立ってる。それにクラスの悪ガキ(誓って、私じゃないですよ!)が声を掛けた。
 「なあ、杉村「はん」、あんた、ゆんべ(ゆうべ)、だいぶメートルあげたね(飲み過ぎたね)。しっかりしなはれや(しなさいよ)」

 教師に向かって、「はん」付け!「あんた」!
 言われた教師も、思い切りバツが悪そうな顔してましたけど、声を掛けた生徒の悪ガキぶりと、口吻だけは、ありありと頭に残ってます。

 非大阪人の方々は、とりあえず「さん」を基本になさるのが、よろしいかと。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。

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