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第314回 ロシア語を遊ぶ

2019-04-12 | エッセイ

 「なんたらビッチ」「かんたらノフ」「なんとかスカヤ」など人名が覚えられないので、どうにもロシアの小説に馴染めません。使われてるキリル文字も、アルファベットが裏返ったような見慣れないのがあったりして、発音も難しそう(な気がします)。

 そんなロシア語の世界を「怖いもの見たさ」と「遊び感覚」のノリで、ちょっと覗いてみようと考えました。

 ガイド役は「黒田龍之助(くろだ・りゅうのすけ)」というロシア語を中心に、広く外国語を学ぶのが趣味という奇特な方で、数多くの楽しいエッセイを世に送り出しています。
 今回は、「ロシア語の余白」(現代書館)から楽しそうな話題を拾ってきましたので、気軽にお付き合いください。
(発音は、著者によるカタカナ表記を利用しました。ひらがなの「ら行」は、巻き舌音です)

 まずは、あいさつ。基本ですからね。
<こんにちは>
 「ロシア語で「こんにちは」って、なんていうんですか?」
 ロシア語の専門家を前にしたら、とりあえず教えてもらいたくなります。黒田も、気軽に訊かれるらしいのです。

 「ええと、ズドらーストヴィチェ!といいます」
 「え?なんですって?」
 「ですから、ズドらーストヴィチェ!です」
 「もう一度お願いできますか?」
 「ええ、ズドらーストヴィチェ」
 「ズドラ・・・・」
 「ラは巻き舌なんですが」
 「ズドラァァァ・・・ええと、なんでしたっけ」
 「だから、ズドらーストヴィチェです」
 「ああ、もういいです。いや~、ロシア語って、難しいですねぇ」

 たいていは、こんなやりとりで、終わるそうです。
 「ボンジュール」「ニイハオ」「グーテン・ターク」「アンニョンハセヨ」など、他の外国語が羨ましくなるのは、こんな時だ、と書いてるのを見て、頬が緩みました。

<ありがとう>
 「スパシーボ、だろ。知ってるよ」という人が多そうですが、黒田によれば、発音に難があるらしいのです。ロシア語のルール上、最後は、「ボ」ではなく、「バ」でなければならない。そして、「シー」は、「スィー」が原音に近いとのこと。

 「スパスィーバ」これで、だいぶ良くなったんですが、最後は、イントネーション。
 「スパ」と「スィー」と「バ」を、高・低・低のイントネーションでやれば、ほぼ完璧とのこと。短い言葉ですが、感謝の気持ちを「正しく」表すのは、大変そうです。

 さて、ご存知「マトリョーシカ」の画像を挟んで、後半をお楽しみください。



<英語からの発想>
 外国語を学ぶためには、とにかく単語を覚えなきゃいけないんですが、ロシア語には、英語によく似た単語がある(たぶん、どこかでつながってると思うんですが)ので、それを活用すれば、記憶の省力化が図れる、というのが、黒田の説明。例えば・・・

スターンツィヤ(駅)  station(ステイション)
ナーツィヤ(民族)   nation(ネイション)
トらヂーツィヤ(伝統) tradition(トラディション)

 なんかが例として揚げられています。そして、なによりの重要語「革命」は、英語では,
revolution(レボルーション)、そして、ロシア語では、りヴァリューツィヤ。なるほど、利用できるものは、なんでも利用するのが、語学上達のコツかも。

<世界と平和>
 黒田によれば、ロシア語で、世界でもっとも有名な同音異義語は、おそらく「ミーる」だろう、という。ひとつは、「世界」で、もうひとつは、「平和」という意味。そういえば、そういう名前の人工衛星を打ち上げてたことを、私も覚えています。

 ソビエト時代、これをうまく使ったスローガンが至る所で見られたそう。
 「ミーるぅ ミーる!」(世界に平和を!)
 はじめの「ミーるぅ」は、文法上、与格という形で「世界に」を表し、あとの「ミーる」は、対格で「平和を」を表す、というわけで、なるほど、よく出来た「スローガン」です。

 いかがでしたか?あくまで知識として、話題として、楽しんでいただければ、ご紹介した甲斐があります。もう少しネタがありますので、いずれ、続編をお送りする予定です。

 それでは、次回をお楽しみに。

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