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第393回 握手の作法

2020-10-23 | エッセイ

 残念なことですが、時節柄、気軽に握手というのが、いささか憚られる状況になっています。アメリカでも日本式お辞儀、インド式合掌のナマステー、軽く足をぶつけあうフット・シェイクなどいろいろ模索が続いているようです。でも、手軽さではやはり握手です。現在の事態が一日も速く終息し、日本的なものであれ、本格的なものであれ、気遣いなく握手できる日が来ることを祈りつつ、あくまで話題として、握手の作法を取り上げることにします。

 握手は、もともと欧米から入ってきたマナーです。でも、日本人同士でも、ごく自然で便利な習慣としてすっかり定着しています。

 上司が部下の肩でもたたきながら「おまえもがんばれよ」との激励握手、
 久しぶりに合ったもの同士が「元気にしてたか~」と旧交温め握手、
 親しく飲み交わしていたもの同士が別れ際に「それじゃな」と名残り惜しみ握手、
 恋人同士が、お互いに目を見つめ合いながらの「愛してる?」確認握手・・・などのバリエーションが思い浮かびます。

 考えてみると、言葉だけじゃ何か物足りないーそんな時に、プラスアルファのアクションとして付加するのが、日本人の握手の基本的役割のような気がします。あらたまった場とか、初対面同士とかだと、いきなり握手ではなく、まずは、お辞儀から、というのが普通じゃないでしょうか。

 とはいえ、本来のマナー、やり方を知っておくのも悪くはないと思います。受け売りですが、話のネタくらいにはなりそうですので、最後までお付き合いください。

 で、やり方云々の前に、握手する手は、ドライでなければならないというのです。日本人の場合は、握手と言っても、軽く「指」を握り合う「握指」が普通ですから、ドライかどうかは、そう気にならないようです。でも、本来の握手は、後ほど書きますが、「手のひら」同士をしっかり付けますから、汗ばんだ手、飲み物の水分が付いた手などは最悪とされます。
 なので、パーティーでは、飲み物は左手で持つ、手が濡れている場合は、握手の前に、服で拭うなどの配慮も必要になるというわけです。

 いや~、なにかと大変ですが、握手で思い出すテレビの1シーンがあります。

 英国のエリザベス女王が、外国からの賓客を迎えて挨拶を交わしながらの握手です。御年90歳を超える女王様がですね、相手の手をガシッとばかりに力強く握って、そのまま元気よく上下に2回ほど「振って」いたのです。恥ずかしながら、その時、気がつきました。
「なるほど"handshake"だ」と。で、こちらは、別の機会(病院を退院される際に、スタッフと)の画像ですが、しっかり握手されてるのが分かると思います。

 日本語だと「握」手なので、「握る」ものだと思いがちです。でも、しっかり握ったうえで、
”shake ”(シェイク=振る(握手の場合は上下に))するのが大事なんですね。

 先ほど、「手のひら」を付けると書きました。具体的にいうと、親指と人差し指の間に、水かきのようなところがありますね。それを合わせるくらい深く手をお互いに差し入れ、力強くグリップする。これで「アクションとしての握手」は、一応完成です。

 さて、蛇足ながら、「握手」をする状況で必要となるマナーも、「日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術(ウィリアム・A・ヴァンス 阪急コミュニケーションズ)」からの受け売りでご紹介することにします。

 まず大事なことは、言葉を交わすことです。黙って手を握り合っていたのでは、恋人同士になってしまいますから。

 Nice to meet you.(初めまして)
 Thank you for coming.(お越しいただきありがとうございます)
 I've been looking forward to seeing you.(お会い出来るのを楽しみにしていました)
 こんな定番表現でいいですから、(機会があれば)使ってみたいですね。

 そして、日本人(私も含めて)が苦手なアイコンタクトです。相手の目をじっと見るのは失礼という意識がありますから、つい日本人は、手元を見たり、目をそらせがちですが、それはいけません。しっかり相手の目を見ましょう(結構大変ですけど)。そして、プラス微笑も忘れずに。

 とまあ、マナーとテクニックのようなことを書いてきました。でも、一番大切なことは、「熱意」ではないでしょうか。左手までも添える「熱烈」なのは、やりすぎだとしても、仕事にしろ、プライベートにしろ、この出会いを大切にしたいという気持ちを込めて握手したいものです。

 ちょっぴり英語弁講座も兼ねましたが、いかがでしたか?日本人同士であれ、欧米の人たちとであれ、心置きなく握手できる日が早く来て欲しいものです。

 それでは次回をお楽しみに。