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第392回 大阪弁講座42「ワテ、ワイ、ワシ」ほか

2020-10-16 | エッセイ

 第42弾をお届けします。

<ワテ、ワイ、ワシ>
 今どきの大阪の若い人たちが、自分自身のことを指して、どう呼んでいるかについては、あまり詳しくありません。でも多分、「私」とか「僕」、せいぜい「オレ」 とかの「標準的」な言い方が主流のような気がします。

 オッチャンの場合でも、基本、同じような傾向だと思うのですが、「ワテ」、「ワイ」、「ワシ」の「3大自称」(私が勝手にそう呼んでるんですが)の使用頻度が高くなるようです。
 このうち「ワシ」は、「標準的」ですが、「ワテ」、「ワイ」となると、とりわけ商売人とか、芸人の愛用頻度が高く、大阪のニオイがプンプンします。

 「こんだけワイが頼んでんねん。一生の頼みや思うて、今回だけは、無理聞いたってぇな」
 どうな事情か分かりませんが、哀れを誘います。
 
 若い女性だと、「ウチ」という言い方があります。たぶん「内」から来てると思うんですけど、幅広い年齢層で使われてる呼称です。

 「急にそんなこと言われても・・・・「ウチ」にもちょっと考える時間くれへん?」
 う~ん、可愛いですねぇ。

 で、若い女性が歳を重ねてくると、「ワテ」が使用可能になるんですね。用例はなしにして、この絵で代用しておきます。

 と書いてきて、作家の中島らも(故人)が、なにかのエッセイに書いていたエピソードを思い出しました。

 中島と親交があった一流企業の営業マン。年齢は40代の半ばとのことですが、最近、すっかり酒が弱くなったとぼやいている。その営業マン氏と中島とのやりとりです。

 「ほんとに弱くなってね、ベロベロの状態で家に帰るわけですわ」
 「そら、そうですやろな」
 「だけど、私、どういうわけか、酔うと欲情するタイプなんですわ。1時、2時ですから、女房はもう寝てますわな。けど、その寝姿を見ると、ムラムラっと来るわけです」
 「来ますか?」
 「来ます。で、「ワッシャー」と言いながら迫って行くわけです」
 「なんですか?その「ワッシャー」いうのは?」
 「つまりでんな、そんな時間にいきなり迫ったら、強盗かなんかと間違うたら大変ですやん。そやから安心せえ。おまえの亭主や~、というつもりで言うてるんでしょうなぁ」
 「ああ、「わしやあ」がちぢまって「ワッシャー」になっとるわけですな」
 「そういうことです」

 絶頂の時も「ワッシャー」と叫びながらイカれるのかな、奥さんも「あんたかぁ」とでも応答したらええのに、などと、エッセイの中でツッコミを入れているのが、いかにも中島らしくて、笑ってしまいました。

<ねき>
 自分のしゃべる言葉が標準語と信じて疑わない大阪人が、コテコテの大阪弁だと感じるのが、この言葉。「近く」とか「すぐそば」という意味ですが、若い人はあまり使わないかもしれません。
 
 若い頃、上司が「ひょっと「ねき」見たら、そいつがおってな」みたいな言い回しをしているのを聞いて、なんぼなんでも、えらい年寄り臭い言い回しやなぁ、と感じたことを思い出します。

 若い女の子に「なにを遠慮してんねんな。もっと「ねき」へ、来(こ)んかいな(来なさい)」などと、おっさんが無遠慮に使うのは、年寄り臭いし、セクハラにもなりかねないので、やめといたほうがええと思います。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。