★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
           毎週金曜日更新

第382回 大阪弁講座41 「しこたま」ほか

2020-08-07 | エッセイ

 第41弾をお届けします。

<しこたま>

 程度が甚だしいとか、思いっきり○○する、という時に使える副詞です。広辞苑には、東海道中膝栗毛の「「しこたま」ちそう(馳走)になって」という用例が引用されています。古くからある言葉のようですが、今はコテコテの大阪弁になってる気がします。
 大阪人に、「しこたま」に最もふさわしい動詞を訊くと、十中八九、「飲む」という答えが返ってくるはず。
 「昨日は、「しこたま」飲んで、気がついたら、2時、3時や。あんのじょう(予想通り)、二日酔いでどんならん(どうにもならない)。せやから(だから)、ややこしい話はせんといてくれるかな」こんな風にならないようにしてください。

 これだけ「(酒を)飲む」という行為と親和性がある言葉も珍しいんじゃないでしょうか。 ほかに思いつくのは、「叱られる」くらいですかね。
 「3日続けて会社に遅刻や。上司から「しこたま」叱られてもたわ。もうアカン」

 いずれにしろ、あまり好ましくない状況にピッタリはまる表現ですので、「しこたま」使うことのないよう、せいぜいご自愛、ご注意ください。

<辛気(しんき)くさい>

 これまた大阪的な「辛気くさい」を取り上げようと思ったのはいいんですが、果たしてどんな意味だったかがパッと頭に浮かびません。
 使ってた場面を思い出すと、結構バリエーションがあるのに気がつきました。

 まずは、「辛気くさい」顔。どんな顔かというとですね、暗い、思い詰めたような、深刻な顔、といったところでしょうか。一時的な悩みとか困った事情とかあるんでしょうけど、言うほうに、あまり同情心は感じられません。
 「どないしたん?「辛気くさい」顔してからに。こっちまで、気分が落ち込むわ」

 「辛気くさい」議論、なんてのもありました。堂々巡りだったり、細部にこだわってたり、退屈な議論だったりのことで、こちらもネガティブなイメージ。
 「こんな「辛気くさい」議論やってても埒(らち)あかんわ。適当に切り上げて、飲みに行こやないか」便利ですねぇ。

 人のキャラを表すのにも使えます。う~ん、そうですねぇ、神経質で粘着質というのでしょうか。悪い意味で、モノにこだわるとか、根に持つタイプーーそんな感じです。陽気で、開けっぴろげなのが大阪人というイメージもあるようですが、中にはこんな人もいます。
 「辛気くさいやっちゃな。そんなこといちいち気にせんと、適当にやっとけや」

 「辛気くさい」仕事というのもありました。
 手数も時間もかかる、細かい作業という意味で、そうネガティブなニュアンスはありません。
 「ちょっと細かいデータを整理してほしいねん。「辛気くさい」仕事で悪いけど、やってくれるかな?」
 いかにも大阪的で、幅広く使える言葉でしょ。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。