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第330回 新古書店の今

2019-08-02 | エッセイ

 少し前のことですが、新古書店の代表格であるブックオフの一部の店で、漫画を「立ち読み禁止」にした、というのが、ネットで話題になっていました。ただし、ご覧のような看板を出してるだけで、もっぱらお客の良心に訴える作戦のようです。




 私には縁のないジャンルですが、ブックオフといえば、漫画の立ち読み、というくらい定着した風景です。売り上げにはまったく貢献しませんが、店内になんとなく活気があるように見えますから、大目に見てきたのでしょう。今のところは、ごく限られた店舗での「試行」のようですが、余裕がなくなりつつあるのかな、と感じます。

 あんなのは古本屋じゃない、などという人もいますが、私は、こだわりなく新古書店も割合利用する方です。
 20年くらい前から最近までのちょっと古い本がメインで、独自の分類・整理が割合行き届いてますから、分野を絞った古本のチェックができるのが何かと便利で、思わぬ発見もあります。

 もちろん(ネットとの比較で)値段が折り合えば買うのですが、「情報収集」が主たる目的と割り切って、気軽に足を運び続けています。
 時には溜まった本を売ったりもしますが、客の立場から見ると、この業態も経営環境が厳しくなり、曲がり角に来ているのを実感します。以下、ブックオフに限定して、最近の状況を私なりに実感レポートしてみますので、お付き合いください。

 多摩エリア在住16年になります。自宅から、車で1時間ほどの範囲に、今でも10数店舗がありますが、移り住んで以来、知る限りでは新規出店はなく、廃止になったのが3店舗です。その内、2店舗は、駅にも近い繁華な立地でしたから、創業(1990年)から、30年近くを経て、勢いの衰えは隠せません。実物を手に取れるというのは強みですが、品揃え、検索機能などで勝るネット古書店粗手に苦戦模様です。

 2~3年くらい前からでしょうか、スマホ、タブレットなどのデジタル機器を中心に、ハード物の扱いを始めました。「多角化」ということなのでしょう。スマホの場合だと、利用できるキャリア、OS、発売時期、状態など、商品毎の情報の提供には力をいれており、動作チェックもぬかりはないようです。しかしながら、人の背丈ほどのショーケースを2つか3つ置いてる程度という店が多く、あまり意気込みは感じられません。

 今や飽和状態ともいえるデジタル機器への参入のうまみは少ないでしょう。何より、中古の場合、リチウム電池のヘタリ具合が使ってみないと分からない、というのが買う方にとっては最大のハードルじゃないでしょうか。中古といっても、ものによっては、何万円もしますから、なかなか手が出ない事情も理解できます。時々、ショーケースを覗いてみますが、並んでいる商品の入れ替えもあまりないようで、苦戦してますね。

 さて、要らなくなった本を売る(店側からは「買い取り」)場面でも変化を感じています。

 本のバーコードを読み取って、自社のデータベースと突合して、自動的に値付けをするシステムを導入する店が増えています。査定がスピーディーで、買い取り金額も、店とか担当者での差は、基本的に出ない「明朗な」仕組みです。

 ただ、ここ最近の経験ですが、買い取りが少しシビアになった気がします。今までなら値が付いていたはずの本で、「値が付かない」と言われることが多くなったのです。つい最近も、10数冊ほど持ち込んだ時、2冊に値が付かないと言われました。
 1冊は2006年出版の語学書で、CD付き、書き込みもありません。もう1冊は1988年出版ですから、いささか古いですが、これまでの経験上、値が付かないのは腑に落ちません。
 男の店員が「この2冊は値段が付きませんでした。引き取ってもいいですか」と、店で(無料で)引き取るのを前提にしたような言い方をしたので、少々ムッとして、「いや、「私の方で」引き取ります。ほかの店で売れるので」と、ちょっとイヤミを言って引き取りました。

 後日、別の店に持ち込んで、語学書は売れましたが、もう1冊は、やはり、値が付きませんでした。買い取り現場にも、「仕入れコストの低減」というプレッシャーがかかっている様子ですね。

 ネットという代替手段はありますから、なくなってもそう困らないとは思うのですが、冒頭の方にも書きましたように何かと便利な存在です。取り巻く環境は厳しいですが、がんばって生き延びて欲しいですね。
 
 いかがでしたか?次回をお楽しみに。