昨年の12月1日、筆者は仕事上でお付き合いのある方に接待される形で、この一見客お断りでかつミシュランの三ツ星打診を断った京料理の名店である、京味さんを訪ねる僥倖に恵まれた。午後6時45分頃にお店に到着した。個室が一室あるだけで、後は9席のカウンター席のみの小さなお店だ。常連客の予約しか受付けないが、常に半年先まで予約で埋まっている状況だという。この日も9席のカウンター席は満席のご盛況。常連客は大企業の重役連中がほとんどであった。彼らが連れているご婦人方はいずれも美形である。山陰の蟹漁がこの日から解禁になるとあって、あらかじめ知人が蟹づくしコースを親方に依頼してくれていた。板場には親方の西さんを含め、修業中の板さんを始め10人ものスタッフがいた。この西さんのお弟子さん達が東銀座や湯島に暖簾分けしてもらいお店を構えているそうだ。
日本酒は飛騨の銘酒「飛切り」である。その名の通り飛切りうまい!一品目がもち米の上にこのわたを乗せた物。実に美味い!そして次に「卵のふくさ焼き、笹カレイにからすみをまぶした物、うど」の皿、京料理独特の繊細なる味付けで非常に美味い。三皿目は「しらこを焼いた物」。クリーミーで独特の風味がした。佐渡ではこの食材は酢の物か煮付けにするが、焼くという発想は多分佐渡の料理人からは出てこないだろう。海老芋を素揚げした物が終わると蟹づくしが始まった。香箱蟹の卵と味噌を和えたもの、茹で蟹、焼き蟹、蟹味噌、それらにかぼすを絞った汁をかけて豪快に食す。素材に対するへたな小細工は一切しない。それが京味さんの持ち味である。最後は蟹雑炊と自家製の京漬物。知り合い氏が、このお店の名物である「はらこ飯」(画像)を所望した。はらことは脂の乗った鮭のことで、これを御飯の上にかけて食べるのだが、いやもう鮭のほぐし身が美味しく、皮もパリっとしていて御飯が進むことこの上ない。筆者は夜は炭水化物を食べない主義だが、今日だけは例外だ。最後の甘味は葛きりをトロミツにつけて食べる形式だったがさすがにこれは残した。2時間近くの宴が終わりお店を出ると親方の西さんが店の外に出て待っていて筆者らを見送ってくれた。ミシュランの調査員が三ツ星を付けたがる訳がようやく分かった。何でもこのお店、昨年11月下旬に六本木のバーで暴行傷害事件の被害者となった歌舞伎役者市川海老臓や小泉元総理の行きつけのお店だそうだ。