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はしり書きの紙

2007-02-10 | poem
だれもがその列車にのろうとしていた。
みんな故郷への思いが強いから。
列車のドアが閉まらずに、車掌が人を列車の中に押し込んでいる。
列車の上に這いつくばってしがみついている者もいる。
みんな故郷への思いが強いから。
この土地に早く見切りをつけて行ってしまうのだろう。

次の便はいつになるのかわからない。
たぶん今日はこの便が最後だろう。
しかし、僕はこの列車に乗ることはなかった。
なにかに惹かれてここに残るんじゃない。
今はただ力が出なくて、このベンチから立ち上がることができなかったからだ。
僕はこの列車を見送ることにした。
そして、また自分の中に力が湧いてくるのを待つことにしたんだ。

僕の手元には友人からのはしり書きの紙がある。
友人はこの列車で故郷へ帰る。
僕はその紙を正直見たいとは思わなかった。
友人との距離が離れていくのを悲しんでいるわけではない。
友人との思いがしだいに疎遠になっていくのを認めたくないからじゃない。
列車が走りはじめる音がする。
ホームで見送る者などはいない。
もちろん友人がどこに乗っているかももうわからない。
僕は列車を見なかった。
その列車には乗らなかった。ただ、それだけのことなのだ。

僕は友人からのはしり書きの紙をズボンのポケットに押しこんだ。
もしかするとその紙を見ることはもうないかもしれない。
僕はその紙のことを早く忘れて、列車の出たホームを見渡しながら、これからのことを考えようとしていた。

"私の良き友よ。
生死の狭間をともにかいくぐってきた尊い友よ。
これからもなにがあろうと私は君との友情を忘れはしない。
君への思いはいつまでも変わらない。
私はいつも君とともにいる。
今までだって。もちろん、これからもだ。

つらい時、苦しい時、自分を見失いそうになった時。
私はそんな時に君を思い出すだろう。
そして、私は生きていく。
君もこの大地のどこかで生きていることを確信しながら。
友よ、これだけは忘れないでほしい。
私はいつまでも君の友人だから。
それはどんなことがあっても変わらないから。

私は君の変わらぬ友だから。
いつまでも変わらぬ君の心からの友だから。"


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2 Comments

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はじめまして (さくぼう)
2007-02-11 19:40:46
なんとなく覗いたこのブログでとてもいい詩を見つけました。
「はしりがきの紙」すごぃ感動しました。
というか、感動しすぎて泣きました。
私もタマにですが詩のようなものを書きます。
よかったらブログきてくださぃ。

http://bbs10.cgiboy.com/4R7299104/
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はじめまして (makoto)
2007-02-11 22:19:53
さくぼうさん。
なに気ない詩に感動していただきありがとうございました。
私にしてはめずらしく友情というものをテーマにしたものでしたけど、作った甲斐があったというものですね。

ブログに来て・・、と書いていましたが、どうもブログではないようなところに通じているみたいで。詩などがどこにあるのかわかりませんでした。
また遊びに来た時にはアドレスを残していって下さい。
創作は自由ですからね。楽しんでやっていきしょう。
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