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来年秋に現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する政府方針を巡り、与党内から廃止の延期を求める意見が相次いでいる。保険証を含むマイナカードの混乱は泥沼化しており、岸田文雄首相には廃止撤回を決断するよう求める。
マイナンバーカードを巡り参院特別委で開かれた閉会中審査。河野太郎デジタル相はマイナ保険証について「迅速に普及を進める」と強調したが、与党から「利用者ではなく行政の都合が前面に出ている」「不安を抱えてむりくりやるのではだめだ」と廃止見直しを求める意見が噴き出した。
共同通信世論調査では八割近くが保険証廃止の延期または撤回を求めている。廃止を強行すれば国民の不信が募り、政権運営が揺らぎかねない状況だ。
十九日には、政府の個人情報保護委員会が公金受取口座の誤登録などでデジタル庁に対する異例の立ち入り検査を始めた。
検査が始まった以上、同庁はマイナカードに情報をひも付けする業務を直ちに停止し、問題点の洗い出しに着手すべきだが、そうした動きにはなっていない。
誤登録は全国に広がり、新たに埼玉県所沢市で行政からの公金が別人の口座に振り込まれる事案が判明した。もはや登録ミスでは済まない次元の構造的問題だ。
政府は、誤登録解消に向けて実務を担う全国の自治体に総点検を指示したが、膨大な作業が予想される。自治体側は不満を募らせており、全国知事会は負担軽減を求める要請書を政府に提出した。
河野氏は現行保険証の廃止理由の一つに「なりすまし被害」を挙げるが、厚生労働省の統計では、不正利用は全国で年平均十件程度にとどまる。総務省が公表しているマイナカードの交付枚数も廃止分が水増しされていた。
政府は現行保険証の廃止後も最大一年間は猶予期間を設けるとしているが、保険資格が変わった場合などは、マイナ保険証に切り替えざるを得なくなる。
個人情報を行政機関に委ねるには信頼が前提だが、現行保険証の廃止にこだわる政府の強硬姿勢に国民は不信感を募らせている。国民の反発を招いてまで保険証廃止を強行する意味があるのか。
廃止撤回こそ最善の選択だ。秋の臨時国会で法改正し、制度の抜本見直しに着手すべきである。