林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

蝶ネクタイ

2009-07-31 | 遠い雲

就職先ではネクタイ着用を義務付けられていた。
夏、一生懸命に働いているフリをするには、背広は着なくても、ネクタイは必要だった。上司の評価は、むしろ背広は着ない方が良かったようだから。

ネクタイは、力仕事もさせられる駆け出し社員にとって邪魔なモノだった。
昼飯のラーメンの丼に垂らしてしまうこともあり、大損害を蒙った。
ホンコンシャツが発売されたあの頃は、まだ蝶ネクタイが結構使われていて、ネクタイの代わりとして、人事部も認めてくれていた。

蝶ネクタイをしてみると、胸のまわりがサッパリして、気持ちがいい。
値段はネクタイよりずっと安く、色柄も豊富だった。

ボータイなど普通の蝶ネクタイは結ぶのがややこしい。
だからワイシャツの襟にパチンと挟むだけの簡単着脱仕掛けがあるものを使った。
これは首周りの襟裏に紐を通さず、首が楽で便利なものだった。

だが、痩せた人が付けると食堂の給仕係か楽団員に見えてしまう。
若い男がするとキザかナマイキに見え、今思い出すと我ながら恥ずかしい。
サスペンダー同様、少しメタボな人や団塊以上の人に似合う。

ネット通販で調べてみると、蝶ネクタイは礼装用、芸人用、そしてお犬さま用しか無く、まさに絶滅危惧種である。
特に夏場、復活させたいものの一つですね。

挿絵は山藤章二画「熊倉一雄」。スポーツニッポン社刊「軟派にっぽんの100人」から。



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