代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

温暖化対策のための7000億円をどうやって捻り出す?

2005年03月09日 | エコロジカル・ニューディール政策
 環境省の中央環境審議会は、京都議定書で義務付けられた「6%の温室効果ガス削減」を達成するために、年間7000億円の追加的な対策費用が必要であるという答申案をまとめたそうです。7000億円は「まだまだ少ない」という感じもいたしますが、とりあえず支持したいと思います。
 さて、問題は財源をどうやって捻り出すかです。中央環境審議会の答申案では、「財政事情が厳しく、既存の予算から捻出するのは困難」で、環境税の導入の検討が早急に必要との認識を示したそうです(『毎日新聞』3月9日朝刊)。
 もちろん、環境税は早急に必要だと私も思います。しかし、同時に「既存の予算から捻出する」努力も必要だと思います。その努力を放棄してしまっては、日本の改革は不可能だと思います。

 7000億円という数字はそんなに巨額で、「既存の予算から捻出するのは困難」なものでしょうか? 例えば、「無駄の典型」として悪名が高い、熊本県の川辺川ダムの建設予算は3300億円、群馬県の八ツ場ダムの建設予算は4600億円です。二つあわせて7900億円です。(もちろん、両ダムとも、関連事業を含めるとさらに多くの予算を使います)。こういう「無駄な事業」をちょっと削っただけで、年間7000億円くらい軽く捻り出せるでしょう。

 おそらく小泉氏は、「温暖化対策費7000億円追加」に関しても、財政難を理由に可能な限り減額しようとすることでしょう。そしておそらくは、緊縮予算を煽りつづけるマスコミも、そうした姿勢を批判しようとはしないでしょう。

 このブログで繰り返し述べているように、財政赤字を長期的に減らす方法は一つです。政府の財政出動をテコにして、新しい環境保全型産業への民間設備投資の波を引き起こします。その上潮が発生した後に、初めて国債発行額の削減が可能になるのです。ですから、7000億円でも不十分というのが、私の感想です。
 3月2日のブログで書いた「全ての公立学校の屋上で太陽光発電」という事業も、温暖化対策の一環ですが、おそらく総額で1兆円ほどかかるでしょう。しかし、環境保全型産業のコンドラチェフ循環の波を引き起こすためには、必要な事業なのです。

 小泉氏が首相になってからやっていることは、基本的に、官僚のメンツを守るために無駄な巨大公共事業を温存し、一方で生活関連の必要な予算を削ることでした。それによって、不必要な「痛み」のみが強制されてきたのです。
 これのどこが「改革」なのでしょうか? 小泉氏こそ、官僚の既得権益にメスを入れることができない、官僚の操り人形であり、守旧派なのです。
 「無駄を削って、その上で、人間の生活を守り、地球環境を保全するための予算を増やす」、これこそが「改革」のあるべき姿なのです。

 ちなみに、小泉氏の政敵である亀井静香氏は、自民党の政調会長だった折、中海の干拓事業など合計223の「無駄な公共事業」を中止させ、総額2兆8000億円を捻出し、他の用途に転用しようとしました。もし亀井氏が首相であったなら、「温室効果ガス削減のための7000億円」くらい、「無駄な公共事業」を削ることによって、軽く捻り出してくれたのではないか、と思ってしまいます。
 もちろん、官僚の操り人形である小泉氏に、こんな芸当ができるわけもありません。

 

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1 コメント

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やっぱり・・・ ()
2005-03-12 13:15:09
 3月9日に書いた、温暖化対策の追加費用の問題の続報です。新しく記事にするほどのことではないので、コメントとして付記します。



「京都議定書の発効を受けて政府がまとめる温暖化ガス排出削減目標の達成計画案が11日明らかになった。焦点だった削減対策費用は盛り込まず、環境税についても導入の是非を含め結論を先送りする内容。

 …環境省は当初、温暖化ガス削減のため、省エネルギー製品の普及などに2006年度から毎年4000-7000億円を政府が追加負担する必要があるとしていた。

 しかし産業界や経済産業省は『根拠があいまいで予算のバラマキになる』と反発。政府計画案では個別の削減策は盛り込むものの、必要な対策費用は一切明記しないことになった。…」(『日本経済新聞』3月12日朝刊)



 やっぱり…。小泉が地球温暖化対策推進本部長なのだから当然ですけどね。本当に、あまりの愚かさに、発する言葉もありません。

 郵政と温暖化対策とどっちが大事なのでしょうか。多分、世論調査をやってみれば8割方の人は、「温暖化対策の方が大事」と答えると思いますが・・・。



 これで「6%削減」という京都議定書の公約を達成することも、ほぼ絶望的になった感じがします。今年中に首相を変えて、よっぽど真剣に取り組みはじめれば、まだ希望もあると思いますが…。



 それにしても、「財政難」「バラマキ反対」という大義名分が、あらゆる前向きな政策を否定する際の「脅し文句」として使われています。納税者もそれで納得してしまっています。

 困ったことです。

 
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