代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

放牧するモンゴル民族の少年

2008年02月18日 | 中国山村報告
 前の記事の続きです。ここは退耕還草政策の対象になっていないモンゴル民族のガチャの写真です。写真は、少年が山羊を柵の中に追い込んでいるところです。この時の気温は零下20度! わずか7―8歳の少年が、この寒さの中で働くんだからすごいよなーとホトホト感心しながら、私自身は寒さでブルブルふるえながら撮った写真です。
 この少年を見ていたら、ふと「アルプスの少女ハイジ」に出てくるペーターを思い出してしまいました……。

 このガチャ(村)では、いまでも放牧が行われています。ガチャは30万ム(2万ha)という広大な面積に27世帯しか存在しません。一世帯あたりの放牧面積は何と700ヘクタール(7平方キロ)です。ある世帯から隣の世帯までの距離がじつに2-3kmもあるのです。
 私は、遊牧民の集落は初めての経験でしたので、この雄大な景色には、本当に感動しました。

 もともとモンゴル民族のガチャでは、放牧地はガチャ全体の共有地でした。1997年から、世帯ごとに放牧地の使用権が分割されました。この少年のお父さんに聞くと、「以前の共有性の方がよかった。山羊は境界なんて理解しないから、土地を分割すると矛盾が多く出て本当にやりにくい」と言っておりました。

 もともと集団主義的な文化を持つモンゴル民族(日本人に似ている?)は、個人主義的傾向の強い漢民族と違って、人民公社時代の集団経営にもすんなりと適応できていたようです。放牧地の世帯分割は相当にやりにくいようでした。
 
 このガチャも砂漠化は進行しており、政府は何とか過放牧を規制させようとしています。この少年の背後にあるのが、「梭梭(そうそう)」という灌木の自然林です。ものすごい生命力で、極度の乾燥地、塩基性土壌でも生育できるそうです。
 中国政府は、この梭梭林を、砂漠化の進行を食い止める防波堤と考えており、この付近一帯の梭梭林を自然保護区に指定しました。

 それで「山羊の過放牧を抑えるように」との指示が下り、NGOの支援の元でガチャの中で話し合いが行われ、ついに自発的に「山羊の数を120ム(約8ヘクタール)に一頭の割合に制限する」という合意に達したそうです。
 この条件を飲むと、一世帯の山羊の所有頭数を85頭ほどに制限せねばならなくなります。どの世帯も今まで150頭以上所有していたそうですから、ほぼ半減。これは住民たちの生活を相当に悪化させます。でも、皆が話し合いでその条件を飲んだというからすごいですね。      (つぎの記事に続く)


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