代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

雲南省の天然林保護と山村生活

2014年10月10日 | 中国山村報告
 先月、雲南省に調査に行ったので、写真をいくつか紹介しておきます。



  


 今回調査した雲南省の村々の写真。リス、白、プミなどの少数民族が居住している。
 雲南省はじつに12年ぶりだったが、前回に比べて、ずいぶん雲南省の緑が豊かになったのが車窓から一見してわかるほどだった。この間に急激に緑が回復してきたのは、中国政府がこの間に行ってきた退耕還林(農地を林地に変える)および天然林保護(天然林の商業的伐採を禁じていく)の二つの政策の効果。
 

 ただし中国政府の急進的な環境保全政策は、地域住民の生活を混乱させ、困窮化させる場合が多い。たとえば退耕還林政策では、人々が耕していた農地を林地に変えていくので、山村で暮らすことすら困難になっていく。退牧還草では、砂漠化対策として、放牧を禁止して草原に還していくので、牧民は生活の糧を奪われる。
 今回調査したのは天然林保護政策。天然林保護政策では、自給目的以外の商業的伐採が禁止されるので、伐採を主要な収入にしていた山村住民は生活の糧を失い困窮することになる。
 



 政府の発行する「林権証」。この間の中国政府は森林の請負経営権をもつ山村住民に対し、写真のような「林権証」という証明書を発行してきた。
 



 林権証の中に張り付けられた村の集団所有林の境界線を示した地図。この村の場合、40世帯で600haほどの森林がある。政府の天然林保護政策によって、商業的な伐採は禁止された。その代わりに、林権証に示された面積に従って、政府から補助金が支給される。

 一般的に政府は、村の集団所有林を分割し、経営権を与えて各個人に分配しようとしている。このため、通常の村落では各世帯が林権証を所持している場合が多い。
 ところが雲南省の少数民族の集落では、いまでも森林は世帯分割されずに、村が集団で森林を所有している場合が多い。この村も今でも集団所有のままだった。本来、森林の集団所有を維持するのか世帯分割するのかは、村内での話し合いと合意に基づいて選択されるべきである、と私は考える。一律にどちらかを奨励するやり方はよくないのだ。

 


 村内で話し合って、森林利用のルールを細かく決めた誓約書。自給用の伐採は許される場所、自給用の伐採すらも許されない場所など細かい規定が決められている。
 キノコ、山菜、漢方薬草など、特用林産物の採取はOKであるが、自給用以外の材木の伐採は禁止されている。松茸や漢方薬の冬虫花草などで儲けている世帯が多く、伐採禁止になっても、それほど経済的に困窮してはいなかった。しかし、そうした特用林産物は減少しており、年間の取れ高も不安定であり、副業としては良いが、安定した主要な収入源が必要となっている。



 写真は天麻というラン科植物の根茎で、漢方薬として高く売れる。伐採禁止ののち、村人たちはNPOの支援を受けて、天麻の栽培を拡大させている。天然林保護を成功させるには、伐採禁止による収入の減少を代替する生業を育成すること、これが何よりも肝要なのだ。
 


 
 
 同じく村人たちがNPOの支援を受けて取り組んでいる養蜂プロジェクト。私もハチミツをお土産にもらってきたが、これは美味しいし、安全・安心を100%保障できる。最大の問題はマーケティング。もし蜂蜜の販売に興味のある方がいましたら、ご連絡ください。




 村人たちから大量のマツタケをお土産にもらう。すごい! 



 その夜さっそくNPOの事務所で松茸のお吸い物や焼き松茸をつくって晩ごはん。






 帰りの飛行機の中から、チベット仏教の聖地、チベットの人々が神の山と崇める梅里雪山がよく見えた。荘厳なまでの美しさ。1991年に日中合同学術登山隊17名が遭難し、いまでも未踏峰。合掌。

 



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