代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

自主的「下放」青年たち

2006年03月25日 | 中国山村報告
 延安近郊の村での昼食の様子です。アワのお粥に小麦の饅頭、それから野菜料理がメニューでした。写真の4人は、私の共同研究者の向虎氏(右端)と、ボランティアで調査を手伝ってくれた、環境NGO活動に取り組む西安の大学生たちです。3人とも農村出身で苦学して大学に入っており、何とか中国の農村の発展のために自分の知識を役立たせたいと考える、じつに素晴らしい学生さんたちでした。

 この中の一人は、大学卒業後も、NGOのボランティア・スタッフとして、内モンゴルの砂漠化地域に入り込み、遊牧民の生活と環境保全を両立させようというプロジェクトに取り組んでいます。私の共同研究者の向虎氏は、彼らのような青年を「自主的下放青年」と呼んでいます。
 
 今の中国政府の指導部には、文革中に農村への「下放」を受けた人々が多いです。下放を受けた経験のある人々というのは、社会主義体制によって自分自信がもっとも酷い目にあった人々でありながら、逆説的ですが、農村の苦しさを骨の髄から知っているが故に、貧富の格差を是正しなければならないという使命感にも燃えており、中国社会の中でもっとも社会主義的な人々ともいえます。
 
 私は下放経験世代が中国の政治を指導している内は、中国は大丈夫だろうと思っています。少なくとも日本の東大出のアホ官僚などよりは、よほどしっかりしています。しかし中国でも、農村の苦しさを知らないポスト下放世代が権力を握ったときには、いよいよ危ないかも知れないという不安もあります。

 このような「自主的下放」をしようと考える大学生たちが、こうして出現していることは中国社会にとって大きな希望だと思います。彼らのようなNGO活動を実践する青年たちが、中国社会で正当な評価を得て、政府の政策にも影響を与えられるような存在になって欲しいと願うばかりです。
  

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