代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

オバマ、トランプ、ヒラリー、サンダースTPPを語る

2015年10月13日 | Stop! TPP
 「TPP大筋合意」を受けた際のオバマ大統領のコメントと、TPPに反対する共和党のドナルド・トランプ候補、民主党のヒラリー・クリントン候補およびバーニー・サンダース候補の発言を比べてみた。以下、紹介する。

****以下、各候補の主張を要約*******

★オバマ大統領(10月10日の定例週間報告より要約)

 世界の全消費者の95%は国境の外に暮らしている。彼らはアメリカ製品を欲しがっている。米国の輸出産業は1200万人の雇用を支えており、それらは他の仕事より比較的収入も多い雇用だ。しかしながら古臭い貿易ルールが、米国の労働者を競争上不利な立場に追いやっている。TPPがその不利な状況を変えるだろう。我々のビジネスは公正に扱われるようになる。この協定なしには、中国のような我々の価値観を共有しない競争相手がグローバル経済のルールをつくってしまうだろう。
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2015/10/10/weekly-address-writing-rules-global-economy


★共和党ドナルド・トランプ候補(ちょっと古いですが5月11日の発言)
 
 TPPは災害だ。(TPP加盟の)他の国々は米国をカモにしようとしている。(TPPで)為替操作についても何も述べられていない。これこそ(通貨安に誘導する為替操作のこと)、他の国々が我々を打ち負かす道具なのに。TPPによって、米国企業はさらに生産拠点を海外に移し、米国の労働市場を脆弱にするだろう。
https://www.rt.com/usa/257377-tpp-deal-trump-criticism/

★民主党ヒラリー・クリントン候補(10月13日の発言)
 
 為替操作の問題が(TPP)の合意内容に含まれていないことを懸念している。アジア諸国の為替操作によって、アメリカ人の雇用がこれまでも失われてきた。TPPで製薬会社は多くを得るが、患者が得るものは少ない。
http://www.theguardian.com/us-news/2015/oct/13/hillary-clinton-trans-pacific-partnership-debate 

★民主党バーニー・サンダース候補(10月11日にインタビューに答えて)
 
 NAFTA(北米自由貿易協定)やCAFTA(中米自由貿易協定)などが発効してから、米国は数百万人の労働者が失業し、2001年から6万以上の工場が潰れた。最底辺への競争によって、賃金は下がり続けている。TPPは、製薬業界やウォール街のアメリカの大企業連中によって書かれたものだ。私は、アメリカの労働者に、時給57セントのベトナムの労働者と競争して欲しいとは思わない。
http://www.realclearpolitics.com/video/2015/10/11/bernie_sanders_tpp_written_by_corporate_america_pharmaceutical_industry_wall_street.html


**************
  

 オバマ大統領の発言の中にある「世界の消費者はアメリカ製品を欲しがっている」「古臭い貿易ルールのせいでアメリカは不利になっている」・・・・絶望的に誤った認識だ。これが事実でないと知りながら国民を騙そうとしているのか、あるいは自分で自分を騙そうとしているのか知らないが。
 TPPによってアメリカに有利なルールに作り変えるという趣旨の主張はさすがに本音を吐露しているが、他の国々からすれば「ふざけるな」という話にしかならない。また、オバマの言う「アメリカに有利なルール」とは、米国の製薬や保険や金融業界にとってそうであっても、米国の労働者にとってはそうではない。

 トランプ候補とヒラリー候補の主張の中にある、通貨安に誘導する為替操作を規制できなければさらに米国の雇用は失われるという主張は正しいだろう。しかし、為替操作禁止条項を入れてTPPを批准するのではなく、はじめからTPPなどなかったことにしてしまった方がより良い選択であろう。

 ヒラリーの「TPP反対」発言に、同候補に多額の政治献金をしながらTPPを推進してきたモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスは当惑していると報じられている。モルガンいわく「為替操作のような金融に関する条項はTPPのような貿易協定にはふさわしくないのだ」と。そりゃ、その条項を入れれば自らの手足も縛られるから入れたくないのでしょう。

 以下の記事によれば、モルガン・スタンレーは、2013年には400万ドル、2014年には500万ドルもの資金を、TPP推進のロビイング活動に投じてきたのだそうだ。この間、民主党議員が次々にTPP推進側に寝返ってきたのもこういう事情だ。
http://www.theguardian.com/us-news/2015/oct/13/hillary-clinton-trans-pacific-partnership-debate

  
 かくして、「TPP協定はウォール街や製薬業界によって書かれた」というサンダース候補の主張の正しさが裏付けられるわけだ。
 同時に、モルガンやゴールドマンからの多額の不浄なカネを手にしているヒラリーが裏切るであろうことも・・・・。
 ヒラリーを選ぶかサンダースを選ぶか、民主党員の真価が問われている。

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4 コメント

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Unknown (12434)
2015-10-14 18:09:15
稲刈りと籾すりが終わって、ようやく一安心できました。最近は雨がやたら多くて苦労しましたが。今月の下旬からは、農作業用の無人の講習がはじまるので、その免許を取りたいと思います。
しかしまあ、マスコミがTPPの問題をあまり取り上げようとしない態度は、やっぱり異常ですね。ネットを検索したら、有益な情報も確かにありますが。

TPP大筋合意優先で国益放棄 日本の損害は一兆円超えに
http://dot.asahi.com/wa/2015101300113.html?viewmode=sm

「農業は関税をやめて補助金に切り換えればいい」というのが、貿易自由化の推進派の主張ではありますが、少なくとも単純にはできません。関税収入から補助金を捻出しているのも事実なんですね。
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訂正 (12434)
2015-10-14 20:03:55
農業作業用の無人の講習→農業作業用の無人ヘリの講習
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返信おくれてすいません ()
2015-10-30 13:32:12
>「農業は関税をやめて補助金に切り換えればいい」というのが、貿易自由化の推進派の主張ではありますが、少なくとも単純にはできません。

 ご指摘内容にまったく同意です。
 先進諸国は米国も日本の欧州も、総じて財政は火の車。
 「なけなしの関税収入を放棄して、補助金で置き換えろ」という新古典派経済学者たちの主張は、現実が見えないピグマリオン症そのものです。
 農業補助金のための安定財源など確保できませんから。まったく絵に描いた餅ですね。
 
 
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Unknown (12434)
2015-11-01 21:38:24
ピグマリオン症の場合も多いでしょうけど、きちんと仕組みを理解した上で「絵に描いた餅」を主張する人も少なくないのでしょうね。詐欺みたいなものだと思います。

小規模農家を切り捨てたら補助金も足りるとかいう話もよく聞きますが、その財源が根本的に変わるわけですから、「新しい財源は本当に確保できるのか?仮に確保できても、それをやろうとしたときに国民の多くが納得できるのか?」という問題はどうしてもでてくるでしょう。
そもそも少数精鋭的にやるとしても限度があると思います。担い手の数をそれなりに維持しなければ、農産物の持続的な安定供給は無理でしょう。
貿易自由化の話になると毎回のように「輸出による攻めの農業」が話題になりますが、自国内の安定的な食糧確保を犠牲にする「攻めの農業」など万死に値します。
もちろん、「攻めの農業」を主張する人たちは食糧の確保も両立できると考えているのでしょう。しかしそれも無理です。あきらかに無茶な博打です。2008年の食糧危機と同じことが、また起きてしまうでしょう。
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