代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

まだTPPを潰すことは可能だ

2015年10月10日 | Stop! TPP
 日経新聞や読売新聞などは今回の「大筋合意」でもうTPP交渉は決着がついたかのようにお祭り騒ぎを展開している。彼らは、多くの国民が地獄につき落とされることをよほど快感に感じるようだ。

 そうした中で、東京新聞は「まだ終わりじゃない」「米揺らぐTPP承認」などと冷静な分析をしているので紹介したい。

 昨日(10月9日)の東京新聞の特報面では、アトランタの閣僚会合の現地にも行ってきたNPOのPARC事務局長の内田聖子さんへのインタビューを特集し、内田さんの「米国は最終的に大筋合意を優先させたが、多額の政治献金を拠出する製薬会社が(製薬会社が12年を主張していた医薬品特許保護期間の)8年の妥協に黙ってはいない。労組も1994年の北米自由貿易協定で失業者が増えた苦い経験がある。議会は大もめになる」などのコメントを紹介していた。
 
 東京新聞は同じ10月9日付け記事で、来年の米大統領選候補者の中で、共和党内首位のドナルド・トランプは「TPP大反対」、民主党の使命争いでデッドヒートを繰り広げているヒラリー・クリントンも7日に反対を表明し、クリントンを追い上げる「社会民主主義者」の左派・バーニー・サンダース候補はもちろんであるが大反対であることを紹介している。支持率で上位にくる3人が、いずれもTPP反対なのだ。オバマの任期中に議会がTPPを批准しなければ、TPPを流産に追い込むことはまだまだ可能である。

 米国議会は、日本が金融緩和で円安誘導し米国に輸出攻勢をかけることを懸念して、TPPで金融緩和による為替操作を規制する条項を設けるように強く主張してきた。
 日本で報道されるTPPの内容を見る限りにおいて、為替操作を規制するような条項は見当たらない。ここは日本政府が交渉で踏ん張った点かも知れないが、それが盛り込まれない限り、米国議会は協定を批准しないだろう。ヒラリーが「TPP反対」に回った主要な理由も「為替操作の対応が貧弱」というものだ。

 もっともヒラリー・クリントンは、もし大統領に当選すれば公約を裏切るだろう。彼女の過去の行動からして、まったく信用できない。ヒラリーは基本的に軍産複合体とウォール街に担がれた候補であり、当選するための方便として「反対」を主張したのであろう。「TPP反対」を強く主張する左派のサンダースに追い上げられ、それに対抗する手前「反対」と言わざるを得なくなったのだ
 裏を返せば、USTRに代表されるアメリカの財界の意志と、アメリカ国民の一般世論はかくも乖離しているということである。日本におけるTPP反対派は「日本はアメリカの言いなりだ」と嘆息しがちであるが、正しくは「日本政府はウォール街=軍産複合体の言いなりだ」である。アメリカ国民の多くは私たちの味方である。

 ウォール街=軍産複合体は、米国民の意向を無視して、暴走しているものの、国民意識としては急速に内向きになりつつある。いずれ米国は、グローバル資本主義の拡張路線を終わらせ、自由貿易からは背を向け、古き良きモンロー主義と保護主義の伝統に回帰していくくことは必然的であろう。あとは、遅いか早いかの問題でしかない。

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 さて、内閣府が公表した以下の文章を見て欲しい。 

TPP交渉参加国との交換文書一覧(※全て関係国と調整中)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/10/151005_tpp_koukan.pdf

 内閣府が「※全て関係国と調整中」と正直に告白しているのを見ても分かる通り、「大筋合意」というアドバルーンを上げているだけであり、細目の多くは「調整中」であり、決まっていないのだ。今後、どこで地雷が破裂するか分からない。
 ちなみに、この「調整中」文章の「投資」の欄には以下のように書かれている。

○投資
(日米)両国政府は、コーポレート・ガバナンスについて、社外取締役に関する日本の会社法改正等の内容を確認し、買収防衛策について日本政府が意見等を受け付けることとしたほか、規制改革について外国投資家等からの意見等を求め、これらを規制改革会議に付託することとした。

 
 驚くべき内容である。かつての「日米構造協議」や「年次改革要望書」をもしのぐ驚愕の売国政策といってよい。
 こうした売国協定を評価し「大筋合意」とお祭り騒ぎするマスコミ論調に辟易している皆さんは、まつだよしこさんによる以下の記事をぜひ参照されたい。
 
 http://asread.info/archives/2511

 まつだよしこさんは、日本の「規制改革会議が、TPPにより国内法を上回る存在となったと言ったら言い過ぎでしょうか。・・・・・日本の規制が、外国人投資家の意向で変えられていく危険を避けることができなくなります。何より、批准た後も、協定で約束をした以上の規制緩和を永遠に合法的に求められ続けていくことは大きな問題だと考えます」と分析している。

 安倍首相は、次期参院選挙で、「TPPをすみやかに発効させ、その後は、外国人投資家の意見に従って日本の規制改革を進めます」とマニフェストに明記すべきであろう。
 何せ、前回の衆院選の際の自民党の選挙公約といったら以下のようなものだったから。

  

 選挙のときだけ調子のいいことを言って、政権を取ったらすぐ財界にシッポを振って手のひらをひるがえす。米国も日本も同じである。ここまで舐められていいのか。日米両国民が覚醒すれば、まだTPPを葬ることは可能である。


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