代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

沖縄ジュゴン訴訟勝訴: 在沖米軍基地全面撤去への道?

2008年02月03日 | 脱米
 マスコミ各紙でも小さく報道されていましたが、さる1月24日に米国のサンフランシスコ連邦地裁で画期的な判決が出たようです。サンフランシスコ連邦地裁が、米国防総省に対して、辺野古の基地建設予定地で、ジュゴンへの悪影響が出ないか否か、環境影響調査を命じた判決を出しました。
 米軍普天間飛行場の移設先の辺野古はジュゴンの生息地です。日本とアメリカの環境NGOなどが、米国国防総省相手に訴訟を起こし、ジュゴンの生態系に悪影響を与えないことが明らかにならない限り、基地建設を行わないように求めた訴訟でした。
ジュゴンネットワーク沖縄のブログ参照。 

 やっぱりサンフランシスコは裁判所もリベラルですねー。米国の首都をワシントンからサンフランシスコへでも移転させたら、さぞかし米国も平和を愛する国に変わるのではないでしょうか。

 それで、その判決の根拠になった法律がじつに面白いんですね。1966年制定の国家史跡保存法(the National Historic Preservation Act, NHPA)という米国の法律です。
 「えっ、ジュゴンって史跡なの?」と思って調べてみたら、何でも、国家史跡保存法は、すべての連邦政府の行為が法律適用の対象となり、「歴史的に重要な意義を有する史跡等に害を及ぼしうる計画が実施されようとする場合、連邦政府は、環境影響評価と同等の事前分析を行わなければならい」と定めています。もともと史跡保存を目的として制定されたのですが、その後の複数回の改正を経て、先住民族の文化や自然遺産にも適用可能な法律に拡張されているようです。
 
 さらに付加された第402条の修正条項により、「連邦政府の行為」とは国外にも及ぶので、国外の米軍基地であっても訴訟できたというわけです。これは外国人が国家史跡保存法を根拠に米国政府を訴えた始めての事例のようです。
法律の原文はここ

 その402条の修正条項とは以下のようなものでした。

Section 402 (16 U.S.C. 470a-2)

Prior to the approval of any Federal undertaking outside the United States which may directly and adversely affect a property which is on the World Heritage List or on the applicable country's equivalent of the National Register, the head of a Federal agency having direct or indirect jurisdiction over such undertaking shall take into account the effect of the undertaking on such property for purposes of avoiding or mitigating any adverse effects.

 つまり、合州国の外(外国)における、いかなる連邦政府の行為であっても、それが直接的な行為であれ間接的な行為であれ、世界遺産やそれに相当するような当該国の文化遺産に悪影響が出ないようにしなくてはならないというワケ。

 それで思ったのです。辺野古に限らず、沖縄そのものが世界遺産に相当する文化的価値を持っているのではないかと。辺野古に限らず、すべての在沖米軍基地が、国家史跡保存法に違反しているのではないか、と。

 米軍は、東洋の真珠とも評される、世界でもっとも美しい島の一つの自然を踏みにじり、平和を愛する人々の文化を破壊してきました。これが世界的な自然・文化遺産の破壊でなくて一体なんだというのでしょうか。

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3 コメント

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Unknown (Cru)
2008-02-04 23:26:11
あはは。まさにそのとおりですね。
スーパー301条より使えそうだ。

問題は「世界遺産やそれに相当するような」を測るモノサシではありますけどね。

イスラム文化だって文化遺産だ。
「抑圧的」とか「非民主的」とか、一方的なモノサシで攻撃することが許されるなら、バチカンも爆撃したほうがよいですね。

…すいません。ちょっと過激すぎました。
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Cruさま ()
2008-02-05 09:57:10
 確かに、バクダット空爆なんて、完全に国家史跡保存法違反ですね。
ビンラディンも、「サウジアラビアに米軍基地を置くという米国連邦政府行為は、イスラムの聖地を汚辱する行為であり、世界的文化遺産の破壊、全イスラム教徒の文化に対する冒とくである」と主張して裁判を起こしてたら勝てたのかも??
 
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Cruさま ()
2008-02-05 10:01:16
 追記です。そういえばキューバ政府は、ハバナの旧市街を丸ごと世界遺産に登録しましたが、あれは米軍が空爆できないようにするための予防措置だったのですね。アッタマイ~!
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