代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

水管理・国土保全局(旧河川局)の権限を拡大してダムに頼らない治水を

2013年01月13日 | 利根川・江戸川有識者会議
  1月21日から利根川・江戸川有識者会議が再開される。私も委員になった以上は、国交省の方々の協力も得て、ダムに頼らない治水を目指したい。

 国交省の水管理・国土保全局(旧河川局)の行政権限を拡大すれば、それは可能だと思う。これまで旧河川局の行政権限は河道の内部にしか及ばなかった。そのため、どうしても河道の内部にダムのような洪水制御施設を設けて雨水を貯留するという治水対策に頼ることになってしまった。しかしながら、もっとも有効な治水は、流域全体で雨水の浸透能を高めること。すなわち河道に貯留する「点の治水」から、流域全体での雨水の貯留量を上げるという「面の治水」へと転換することである。
 河川局の名前も水管理・国土保全局と変わった。ぜひ河道の外へと、治水行政の幅を広げる形で、治水政策を拡張して欲しい。これは自民・公明両党の政府与党に心から要望したい。

 流域治水を目指して、水管理・国土保全局の行政権限を拡大する方向で発展していけば、もっと効果的に防災・減災を行い、政権公約にある国土の強靭化を成し遂げることが可能になろう。

 考えてほしい。「点」と「面」のどちらの施策の効果が高いか。八ッ場ダムの湛水面積は300ha(3k㎡)程度。同ダムの夏季の治水容量は6500万㎥の予定である。300haの面積に平均して高さ20mほど雨水を溜めこむ計算になる。
 対して利根川の流域面積は1万6840k㎡である。もし流域全体の平均貯留量がわずか4㎜増大するだけで、流域全体で貯留できる雨水は6736万㎥になり、八ッ場ダムの貯水容量を上回るのである。
 そのための方策は幾重にも可能である。例えば・・・・・
 
(1)道路を雨水の透水性の高いアスファルトやコンクリートを用いた「透水舗装」に変えていくこと。

(2)駐車場や歩道などの舗装は、透水性の高いウッドチップ舗装に変えていくこと。(歩行者の健康のためにもよいし、ヒートアイランド対策にもなるし、森林整備も進むので一石四長の効果がある)

(3)行政が出資して各家庭に雨水浸透枡を設置していくこと。

(4)水田の畦畔をかさ上げするなどして、水田の貯留機能を向上させること。

(5)森林土壌を発達させるような混広林化を目指した森林整備を進め、森林の貯留機能を上げていくこと。

 まだまだある。とりあえず流域全体で上記の施策を実行しただけで、おそらくは八ッ場ダム10個分の治水機能は確保できるだろう。しかも、ダムが外水氾濫にしか効果がないのに対し、上記の施策は外水氾濫と内水氾濫の双方に効果がある。あきらかに流域治水の方が効果が高いのだ。

 問題は、(1)や(2)なら道路局の管轄になるし、(4)なら農水省だし、(5)なら林野庁・・・といった具合に、水管理・国土保全局では手が出せない分野であることだ。
 もし(1)を水管理・国土保全局がやろうとしたら、道路局とのあいだで「全面戦争」に突入してしまうだろう。(4)や(5)も農水省や林野庁との「戦争」に至るであろう。しかし、両局が利益を受ける形で、共同で事業を推進していく方策があるはずである。

 ここに政治の出番がある。流域防災・減災対策局のような部局横断的な新組織をつくり、従来の縦割りを乗り越えて、河川局、道路局、林野庁、農水省が共同で治水対策に取り組み、そうした組織に国土強靭化対策予算を付けていくのだ。
 
 安倍首相は、今回の財政出動に関して、「いままでの自民党とは違う。従来のようなバラマキとは違う」と強調していた。その言葉を信じたい。私はもとより、「公共事業は必要だが出し方を変えなければ効果はない」という趣旨で、「エコロジカル・ニューディール」と訴え、このブログを始めたのだった。
 行政の縦割りを崩さない限り、従来のバラマキ公共事業の延長になってしまう。自民、公明両党には、従来の公共事業のあり方を変えてほしい。水管理・国土保全局が納得する形で、ダムに頼らない治水のあり方が可能になるよう知恵を絞っていってほしい。

 


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