らじかのよかん

ふっ急になんかわかんないんですけど↑

学ぼうシリーズ第六回_呼吸器系ウイルスの空気感染『Airborne transmission of respiratory viruses』を学ぼう

2021年08月31日 | こべっと19関係倶楽部
やあ。

学ぼうシリーズ第六回です。
このシリーズは具体的な方法にしぼっておおくりしますのですけども、
今回は読んでおもしろかった
「SCIENCE」August 27, 2021
(サイエンス 2021年08月27日)に掲載された論文
『呼吸器系ウイルスの空気感染』
『Airborne transmission of respiratory viruses』
を学んでしまうのだ。
やる気ある人は、リンクを読んでね。

例によってカンタンに書きますからだいじょーぶ。
※本稿は簡単のため説明をはしょってるから厳密ではないよ

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◆1 空気感染(くうきかんせん)はいつ頃からわかったの?
ななんと、2021年の春まで正式には認めませんでした。

100年以上前には、呼吸器にかかる感染症は、
感染者が吐き出す「病気の素のつぶつぶ」によって広がると考えられていた。
いい線いってたのよ。
事実をマジメに見て、常識で判断したらこうなるよね。

ところが。
1900年代初頭、チャールズ・チャピンは、空気感染を否定しました。
呼吸器にかかる感染症の主な感染経路は接触感染であると云いだしたのよねえ。
飛沫感染(ひまつかんせん)も接触感染一部だと。
理由がふるっていて
【空気感染って云うと、みんなが怖がって家にこもってしまうから】だって。
こーゆーこと云うヤツにかぎって【断言】するんだよな。

イロイロ都合がわるいから、空気感染は無かったことにしたのだ。

その結果、このウソが教科書に載ってしまったの。
もちろんこのウソでは実際におこったことが説明できないので、
どんどん言い訳がましくなっていったのだ。
つぶつぶが飛んで吸い込まないと説明できなくなると、
飛沫が出て、飛んでいる最中に乾き、粒の直径が小さくなって、それを吸い込むと。
んで、これだけを「空気感染」と云うとかね。←ホントです
どんどん説明が苦しくなっていくのだ。

しかも今回の場合、2020年当初に【断言】したことだし、
せっかく教科書でおぼえたのに、違っていたつーことに耐えられないんだろうな。
(そんなくだらない理由と、命とを比べて、【ウソのほうをとる】つーのがねえ…)

---当ブログ独自---
2020年03月頃から、
ソーシャルディスタン1~2mといってみたり、
手洗い歌にあわせて手を洗うとかの方法(イギリスの首相も歌っていた)とか、
顔を触るなとかは、
この飛沫感染や接触感染を防ぐためのものでした。
マスクも、顔を触るのを防ぐから有効だと、言い張っていたのよね。
(イギリス首相がナニかを発表するときのテーブルかけに、
距離をとれ、手を洗え、顔を触るなとか書いてあったなあ。マスクのまの字もなかったどころか、マスクすると具合が悪くなるとかのウソ八百)
---当ブログ独自ここまで---

ややこしいことに、
空気感染でも、距離を離すとウイルス入り粒子の「もあー」が空気にまざって薄くなり、
結果吸い込むウイルス入り粒子の数が減るため、多少の効果はあったのよね。

流行の初期~2021年春ころ、つまりついこの前まで、このウソは続きました。
一部の國では今も続いています。

2021年の04月と05月に、
とうとう世界保健機関(WHO)と米国疾病対策センター(CDC)は、
空気感染がコロナの感染拡大の主な原因であると公式に認めました。
やれやれ。

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◆2 いつ、どうして空気感染とわかったの?
集団感染(スーパースプレッディングイベント)のときの状況とかから、他にあり得ないと説明されましたよ。

教会とか合唱団の練習とかの屋内で、一度に多数の感染者がでました。
感染者からかなり離れたところの人にまでうつっていたんだよね。

もし飛沫感染とか接触感染がルートだったとすると、
これらのイベントに参加したほとんどの人全員が、
【同じ汚染された表面に触れたり、感染者の咳やくしゃみで発生した飛沫を至近距離で浴びて、感染を引き起こすのに十分なウイルス量に遭遇することはありえない】
ってなったのよ。

んで、
これらの屋内イベントに参加するすべての人に共通するのは、
【同じ部屋の空気を吸うこと】だけでしょ。
スーパースプレッディングイベントの共通点は、
屋内であること、人ごみであること、1時間以上の暴露時間、換気の悪さ、声の大きさ、マスクを正しく着用していないこと
だったのさ。

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◆3 空気感染(くうきかんせん)ってなに
ウイルス入り細かい粒子の「もあー」(エアロゾル)を吸い込んで感染することです。
飛沫(ひまつ)のように下に落っこちないで、さながらタバコの煙のごとく遠くまでただようのが特長ですよ。

呼吸とかおしゃべりや咳とかすると、
吐く息のなかに、細かい粒子の「もあー」が入ります。
この「もあー」をエアロゾル(aerosol)といいます。
スプレー式の殺虫剤とかの霧もエアゾールといいますね。
綴りはいっしょで、感じも似ています。

吐く息のエアロゾルなので、呼吸器系のエアロゾルといいます。
病気でなくてもエアロゾルは入っています。
ついこの間までは他人のエアロゾルをじゃんじゃん吸い込んでいて、別にナニもおこらなかったの。

呼吸器の感染症にかかると、エアロゾルにウイルスが入り込みます。
このウイルス入りエアロゾルを吸い込むと、
鼻の奥とか気管とか肺のカベにくっつきます。
そして感染します。
このパターンの感染のことを空気感染といいます。

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◆4 なんでエアロゾルが入っているの?
ここがポイントだよ。
呼吸する管とか肺とかが湿っているからです。

呼吸器系のエアロゾルは、エアロゾルを出す場所によって
肺胞(はいほう)エアロゾル、気管支(きかんし)エアロゾル、喉頭(いんとう)エアロゾル、口腔(こうくう)エアロゾルと呼ばれています。

一番わかりいい、気管支エアロゾルを説明します。
気管支エアロゾルは通常の呼吸のときにできます。
息を吐くとき、空気は気管支という管の中を通ります。
気管支の内面は、液体の膜でおおわれていて、濡れています。
空気が気管支を通ると、液体の膜に小さくだけど波が立ちます。
すると波頭をかすめて空気が通りますから「波しぶき」がたちます。
「波しぶき」は空気の中にまざります。
この「波しぶき」がエアロゾルの正体です。

「エアロゾルはさぞかし小さいんでしょうね」
そうよね。
でもウイルスはもっと小さいから、ウイルスからみれば十分大きいのです。

喉頭エアロゾルは、声を出すときの声帯の振動で発生します。
声帯の内面も液体の膜でおおわれています。
声帯がびりびりと振動すると、内面同士がくっついたり離れたりします。
このとき「液体の橋(つばきのスジみたいな)」ができます。
息を吐くとき、液体の橋が破裂してエアロゾルになります。

つまり、空気の通り道が濡れていると、自動的にエアロゾルができるわけです。
濡れた場所にウイルスが増殖していると、ウイルスの入ったエアロゾルになります。

飛沫感染の元である、
大きな(100μm以上:0.1mm以上)の液滴は、主に口の中のツバキから発生します。
これは目で見てわかるよね。

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◆5 エアロゾルの大きさは? さぞ小さいんでせふね?
小さいです。
0.1μm(マイクロメートル)~100μmです。
1μmは1/1000mmですから、0.0001mm~0.1mmですね。
参考:タバコの煙0.01~1μm(タバコの煙に例えているのわかるでしょ)
   ディーゼルの排気ガス0.02~0.3μm
   スギ花粉20~40μm

比較的最近になってエアロゾルの大きさが測れるようになりました。

呼吸器系エアロゾルの大きさは発生している場所によって違ってきます。
◆【気道の奥で発生するエアロゾルは小さくて、出口に近いほうは大きめ】です。
以下の大きさが測定されています。
0.1μm(0.0001mm)、
0.2~0.8μm(0.0002~0.008mm)、
1.5~1.8μm(0.0015~0.018mm)、
3.5~5.5μm(0.0035~0.055mm)

呼吸、会話、咳などのほとんどの呼吸器活動では、
5μm(0.005mm)以下のものが多く、
1μm(0.001mm)以下あります。
エアロゾルの大きさによって、後で説明するエアロゾルの中に含まれるウイルスの数が違います。
また、吸い込まれたときに気道のどこにくっつく→どこに感染するかも違ってきます。

以下は飛沫ですけど、
話すときは145μm(0.145mm)、
咳をするときは123μm(0.123mm)の大きさの飛沫が、主に口や唇から発生します。

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◆6 エアロゾルの数は?
通常の呼吸では、1リットルあたり最大7200個のエアロゾル粒子が放出されることがわかっています。
ちょっとびっくりでしょ。

呼吸中に排出される、ウイルスが入ったエアロゾルの数は個人によって大きく異なります。
また、病気の重傷度や、年齢、肥満度、既往症によっても異なります。

1分間の会話で、少なくとも1000個のエアロゾルが発生するという研究結果があります。
会話では100μm以上の飛沫に対して、100μm以下のエアロゾルが100〜1000倍発生します。

---当ブログ独自---
すると、従来問題にしていた会話の時の飛沫の数は、
・1分間の会話でエアロゾルは少なくとも1000個
・飛沫は100μm以下のエアロゾルの1/100~1/1000なので、
・飛沫の数は少なくとも0.1個~1個
ということになりますね。
少ないぞ。

ん?
・1分間の会話では、おそらく20回は呼吸するでしょ。
・1回の呼吸で最低でも0.5リットルだから、
・20回/分の呼吸では
・0.5リットル×20回=10リットル/分だよね。
・1リットルあたり最大7200個のエアロゾル粒子なので、
・10リットル×最大7200個=最大72000個のエアロゾルを出すのよね。
さっきの
・1分間の会話でエアロゾルは少なくとも1000個
と、
・10リットル×最大7200個=最大72000個
は「少なくとも」と「最大」とでは72倍も違うじゃん。
けっこう、だいたいの論文なんだな。
---当ブログ独自ここまで---

また、
子供の肺はまだ発達途上で、エアロゾルの通り道となる気管支や肺胞の数が少ないから、一般的に成人に比べてウイルスを含んだエアロゾルの発生は少ない、とされています。

ここからちょいと原文を引きますね。(少し意訳しています)
---引用---
咳をしてもその短い時間内でみると、多くのエアロゾルを発生させることができます。
しかし、連続的に行われる呼吸や会話に比べると、咳は散発的です。
無症状の感染者の場合の咳は、特に散発的です。
(引用註:症状がないのだから、咳もでないと云っている)
そのため、感染者の通常の呼吸や会話など、連続して出てくるウイルスを含んだエアロゾルの放出量は、
頻度の低い咳よりも多いと考えられます。
---引用終わり---
つまり咳はどきっとはしますが、よーく考えれば通常の呼吸とか会話のほうが、うんとアブナイといっているのだ。

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◆7 エアロゾルにウイルスはいくつ入っているのか?
うっひゃー。

ウイルスはあまりに小さくて一個一個は数えられません。
なので「どのくらい薄めるとうつらなくなるか」という測り方します。
なので以下では、多い/少ないとか、これこれはあれあれの何分の一とかで説明しますよ。

実際に、呼気や室内の空気サンプルからは、
インフルエンザウイルスや、ライノウイルス、麻疹ウイルス、
また問題の SARS-CoV-2 など、多くのウイルスが分離されています。

ここからちょいと原文を引きますね。(少し意訳しています)
---引用---
AまたはB型インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどに感染した人の、
呼気中で採取したエアロゾルのウイルスを調べたところ、
より小さなエアロゾルにウイルスが濃縮されていることがわかりました。

インフルエンザ患者の呼吸・会話・咳の際に採取したサンプルでは、
ウイルスRNAの半分以上が4~5μm以下のエアロゾルに含まれていました。

いくつかの呼吸器系ウイルスを対象とした研究では、
大きいエアロゾルよりも、小さい(5μm未満)エアロゾルにウイルスが多く含まれていました。

診療所で測定した環境エアロゾル中のインフルエンザウイルスとRSVの分布を調べたところ、
A型インフルエンザウイルスRNAの42%が4μm以下のエアロゾルに含まれていました。
RSVのRNAは9%しか含まれていませんでした。

また、診療所、保育所、飛行機内のエアロゾルを採取した研究では、
A型インフルエンザウイルスの半数以上のRNAは2.5μm以下のエアロゾルに含まれていました。

小さなエアロゾルには感染性ウイルスが多く含まれていますが、
ある数のウイルスにさらされたときの感染確率を規定する用量反応関係はまだ解明されていません。
感受性の高い宿主の場合、
最小感染量はウイルスの種類と気道内の沈着部位によって異なります。
したがって、肺の奥深くに沈む小さなエアロゾルを吸入すると
感染を開始するために必要なウイルスの量が少なくなる可能性があります。
---引用おわり---
ようするに、
◆【小さなエアロゾル(5μm未満)にウイルスが多くみつかる】ということだよね。
んで、
◆【エアロゾルの大きさは、呼吸器の肺とかの奥で作られると小さく】なり、
【鼻とか喉とかの出口に近いところで作られると大きくなる】。
するってーと、
◆【呼吸器の奥で作られる小さなエアロゾルにウイルスがたくさん入っている】ということだ。
んで、
◆【小さなエアロゾルを吸い込むと肺の奥にまで到達するから、ウイルス量が少なくても感染に至る可能性がある】
という、シビアな事実がわかったわけだね。

また、
---引用---
インフルエンザウイルスの研究で、ヒトが感染を開始するのに必要なウイルスの量は、
ウイルス入りエアロゾルを吸入した場合には、
鼻腔内に直接ウイルスを接種した(綿棒とかでウイルスを植え付ける)場合の100分の1程度でした。
---引用おわり---
ここからも、
【ウイルス入りエアロゾル吸入は、かなり効率的に感染させることができる】
という、シビアな事実がわかったわけだね。

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◆8 エアロゾルはどのくらい飛ぶのか?
風があれば、さながらタバコの煙のごとくどこまでも飛びます。
ただし屋外で、十分に離れていれば(1~2mとかでなく)、エアロゾルは空気に拡散してしまいます。

例えばツバキの飛沫。
100μm(0.1mm)以上の大きさの飛沫は、
約数秒で重力で下に落ちてしまいます。
だから飛べる距離もせいぜい1~2m程度です。
ソーシャルディスタンスは、この飛沫が飛べる距離を目安にして決められました。

ところが…
エアロゾルの直径が小さいと、空気の粘性とかもろもろの物理条件によって、すぐさまは下に落ちません。
ちょうどタバコの煙が下に落ちないのと同じです。
なので、飛ぶ距離だけを考えてもあまり意味がなくて、
飛んでいる時間のほうがより重要です。
例えば、
100μm←飛沫、5μm、1μmのエアロゾルが地上に落下するのに必要な時間は
それぞれ5秒←飛沫、33分、12.2時間です。

当然ですが、
呼気エアロゾルの濃度は、発生源(感染者)の近くで最も濃いです。
【呼気エアロゾルの濃度は、距離とともに周囲の空気と混ざり薄くなっていきます】。
屋外で、十分に離れていれば(1~2mとかでなく)、エアロゾルは空気に拡散してしまい、問題が小さくなります。
屋内だと拡散はするけど、逃げ場がないから充満することになります。
昔の会議室でタバコの煙がもうもうと立ちこめていたような状態です。
だから、換気なのだ。

また、
空気中に残っているエアロゾル大きさは、
(新たに供給されない場合には)
時間とともに変化し、大きなエアロゾルは地面などに落ちて除去され、
【小さなエアロゾルがいつまでも空気中をただよっている】ことになります。

加えて
呼吸器エアロゾルは、湿度100%に近い湿った環境から外に出て外気にさらされます。
だからエアロゾルが外に出たとき、外の空気に湿り気をうばわれて乾きます。
するとイカ→スルメのごとく、体積が減って直径が小さくなります。
乾くのに必要な時間は数秒です。
外気が乾燥していると、エアロゾルの乾燥も早いし、乾燥後のサイズもより小さくなります。
湿度80%以下では、呼吸器系のエアロゾルの最終的な直径は、
元のサイズの20〜40%になります。
だから
【小さなエアロゾルがいつまでも空気中をただよっている】ことになりますね。

前項◆7 エアロゾルにウイルスはいくつ入っているのか? でやったように、
【小さなエアロゾル(5μm未満)にウイルスが多くみつかる】
【エアロゾルの大きさは、呼吸器の肺とかの奥で作られると小さく】
【呼吸器の奥で作られる小さなエアロゾルにウイルスがたくさん入っている】
【小さなエアロゾルを吸い込むと肺の奥にまで到達するから、ウイルス量が少なくても感染に至る可能性がある】
ここに、
【小さなエアロゾル=ウイルスの多いエアロゾルがいつまでも空気中をただよっている】
が加わります。

さっそく防護を考えよう。
まずは、マスク。
そして、換気なのだ。

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◆9 エアロゾルに居るウイルスは死なないのか?
死にます。でも時間掛かります。
SARS-CoV-2ウイルス(コロナのウイルス)の半分が死ぬ半減期(はんげんき)は、
実験室でつくられたエアロゾルでは、1~3時間程度です。
すると生きてるのが1/10になるのに、約3~10時間かかります。
だからウイルスが死ぬ前に人に感染します。

温度
温度は低いほうが生き延びやすいようです。
インフルエンザはこの好例だよね。
だからといってコロナは夏場でも即死はしません。

湿度
湿度も低い方が生き延びやすいようです。
だからといってコロナは夏場でも即死はしません。
2009年A型インフルエンザウイルスパンデミックのときの研究では、
ウイルスは非常に安定しており湿度20~100%の広い範囲で安定した感染力を維持することがわかっています。

紫外線照射
紫外線照射は,空気中に浮遊するウイルスを不活性化するための効果的な方法で、実績もあります。
波長は太陽光の紫外線相当でよくて、急速に不活性化します。
でも、
光線の強度は相当強くないとダメでしょう。
夏場の屋外でも感染するので、太陽光の紫外線はやっぱり強度不足です。
太陽光の紫外線でどうにかなっていれば、
2020年の夏には収束してしまったハズで、今騒いでいません。
※紫外線は毒なので、紫外線灯を見てはいけませんし、扱いには相当の注意が必要です。

結局、
温度,湿度,太陽光の紫外線などの環境要因では、
コロナウイルスの感染を止めるには至りません。

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◆10 どうやってエアロゾルから感染するのか?
ウイルスを含んだエアロゾルが呼吸器の内面にくっつくからです。
くっついたエアロゾル内のウイルスに感染力があれば感染します。

ウイルスを含んだエアロゾルを吸入すると、
気道にウイルスがくっつく可能性があります。
エアロゾルの大きさによって、よくくっつく場所が変ります。

毒性のあるエアロゾル吸入をまともに扱ったのが、国際放射線防護委員会(ICRP)です。
原発とかでは放射能の細かいチリを吸い込むから。
どうりで呼吸器系ウイルスの空気感染対策が、放射能のときに似てるわけだ。
ただし、
放射能は新たに出なければ増えず、出たものは放っておくと半減期で減るけど、
呼吸器系ウイルスは【放っておくと増える】つー決定的な違いがあるんだよなあ。

ここの研究によって、
どの位の大きさのエアロゾルがどこにくっつくかがわかっています。
5μm以上のエアロゾルは主に鼻咽頭部(鼻からのどにかけて)にくっつきます。
87〜95%が鼻咽頭部にくっつくという研究もあります。
5μm以下のエアロゾルは肺にまで到達し、
さらに侵入して肺胞内腔(はいほうないくう/肺のつきあたりで血液とガス交換する部分の内壁)に
くっつくこともあります。

つまり
大きなエアロゾルは入口近くに、小さなエアロゾルは奥にくっつきます。

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◆11 ウイルスを含んだエアロゾルからの防護方法/環境編
基本は
換気(窓開け/換気扇)
空気の流れと風向き(ウイルスを含んだエアロゾルが人にかからないように)
空気のろ過(HEPAフィルターとかで部屋の空気からエアロゾルをこし取る)
空気の紫外線消毒(集中空調システムとかに組み込んでエアロゾル内のウイルスを殺す)
マスクの装着(別項でくわしく述べますよ)

飛沫は、重力のためにすみやかに落下します。
エアロゾルはなかなか落下しないので、
気流にのったエアロゾルはウイルスを遠く/長く運搬します。
だから、換気、ろ過、紫外線殺菌、気流、風向きが重要なのだ。

また、
呼気中のエアロゾルは、
呼気の温度が周囲の空気の温度よりも高いために、上に上がっていく傾向があります。
※昨年春にBBCでやっていたシミュレーションで、
電車の中で立っている人→↓座っている人というのがありました。
日本でもやってたかな。
吐き出されたつぶつぶが、座っている人に降りかかるように描かれていました。
あれは、飛沫の挙動だよね。
エアロゾルなら水平~斜め上に上がるはずなのだ。
事実
◆吐きだしたタバコの煙は斜め上に上がるもんね(燃焼温度の影響もあろうが)
つまり、
【呼気が下に下がるシミュレーションは飛沫の計算しかしていないから、空気感染では間違え】ですね。

結局エアロゾルは吐き出されると、
・初めは斜め上に向かい
・もあーっとたなびくように拡散します。
であるから。
気流は人から人に向かうのでなしに、人から窓にむかって流れるようにすべきです。
また、エアロゾルはタバコの煙のように拡散して、
放っておくと室内の空気全部にいきわたります。
ですから、部屋の空気を外に出す換気が重要です。

換気
ある高層マンションでCOVID-19の集団感染が発生しました。
そのマンションは、1本の送風管が垂直方向に部屋をつなげていました。
そのため、ある部屋で感染者が出ると、上下の階に感染者がでてしまいました。
ここから、
各部屋ごとに換気すべきだとわかります。

換気の目安として、空気中の二酸化炭素の濃度を使うことができます。
空気中の二酸化炭素濃度は約400ppmです。
人が呼吸をすると、空気中の酸素が減って二酸化炭素が増えます。
換気しなければ部屋の中の空気の二酸化炭素濃度はどんどん上昇していきます。
だから部屋の中の空気の二酸化炭素濃度をある値以下にするように換気すると、感染対策にもいいわけです。
二酸化炭素濃度を抑えるともちろん気分もいいし、作業能率もあがったりしますよ。
目標は、二酸化炭素濃度1000ppm程度です。
温度+湿度にプラスして二酸化炭素濃度も測れる環境センサーがフツウに市販されています。
別の論文によると、
二酸化炭素濃度を700〜800ppm以下に維持することが推奨されています。
元の二酸化炭素濃度の2~2.5倍ですね。

この論文では、
換気量を改善して建物内の二酸化炭素の濃度を3200ppmから600ppmに低減させ、
結核の二次感染率をゼロにした例を紹介しています。
これは換気量を一人当たり1.7リットル/秒から
24リットル/秒に増加させることに相当します。
分当りにすると、
1.7リットル/秒=約毎分0.1立方メートル/人
→ 24リットル/秒=約毎分1.5立方メートル/人

WHOは1人あたり毎秒10リットルの換気量を推奨しています。
分当りにすると、
約毎分0.6立方メートル/人
もし部屋に5人居るなら、
毎分3立方メートルの換気に相当します。

空気清浄機
HEPAフィルターの空気清浄機も効果があります。
HEPAフィルターは0.3μm以上のエアロゾル粒子を99.97%以上除去することができます。
空気清浄機を適切に配置し、
換気と組み合わせることで、感染性エアロゾルを減らすのに有効です。
いくらHEPAフィルターがいいからといって、それだけはアブナイからね。

集中空調システムの中には、
紫外線殺菌システムが組み込まれたものもあるようです。
エアロゾル内のウイルスを殺菌してしまうため、
その空気にエアロゾルがあっても感染することは無くなるわけです。

「ついたて」
---引用---
室内での咳やくしゃみによる飛沫を防ぐためのアクリルなどの「ついたて」は、
空気の流れを妨げ、さらに高濃度のエアロゾルを呼吸域に閉じ込める可能性があります。
---引用終わり---
と書いてあったので、元論文も読んでみたけど、
Household COVID-19 risk and in-person schooling
---引用---
デスクシールドの使用は,低いリスク低減効果(あるいはリスク増加)と関連しているが,これらは通常,他の多くの対策と一緒に報告されるため,飽和効果を反映している可能性がある.
---引用終わり---
とざっくりしてた。
まああれ、しょせん飛沫用だからなあ。

---当ブログ独自---
「ついたて」がものすごく高ければ、天井にまで届くとかね、いい感じだ。
且つ各々の「ついたて」内の空気を天井方向に(上に)抜いていればOKだ。
タバコで考えてみよう。
(タバコのエアロゾルの大きさは呼吸器エアロゾルに似てるよ)
「ついたて」の向こうでタバコ吸ったとしよう。
「これはクサイに決まってるわよ」とかおもえるようなついたてならば、
それはダメな「ついたて」だよね。
さらに、一旦「ついたて」内にタバコの煙が入ると、
出て行くのに時間掛かる=滞留する可能性もある、ということだね。
この場合は悪影響だから、有ったほうがわるいのだ。

また、
おならで考えてみよう。
「ついたて」におしりを入れておならしたとしよう。
「これはクサイに決まってるわよ」とかおもえるようなついたてならば、
それはダメな「ついたて」だよね。

「ついたて有るからいいだろう」という訳ではまったくないのだ。

なお、なにかのマジナイで口の前に名刺大の「ついたて」してる人がいます。
もしそれで感染防護OKだったら、
タバコ吸いが名刺大のついたてして、
ぱかすかタバコ吸っても、まったく問題ないことになりますね。
実際に「ついたてタバコ」を吸ったら、
バカアホマヌケクサイクサイなどと云われるゾ。
また、
おならがクサイ人が、
臭さを抑制するため名刺大のおならシールドしているのを見たことがない。
そんなの効かないに決まっているから誰もしないだけだ。
---当ブログ独自ここまで---

ディスタンス
---引用---
人と人との距離を置くことは、飛沫感染に対処するために導入されました。
エアロゾルの濃度は、感染者に近いほど高くなるから、
これはエアロゾルを吸い込む可能性を減らすのにも有効です。
WHOや多くの国の公衆衛生機関は1mまたは2mの距離を保つことを推奨しています。
しかしこの距離を超えて移動するエアロゾルを防ぐには十分ではありません。
大きな飛沫が感染の主役である場合は、距離をとるだけでSARS-CoV-2の感染を効果的に抑えることができたはずです。
---引用終わり---
このディスタンスも、タバコの煙で考えたらいいのだ。
タバコ吸ってる人の風下に立つと、2mでもまだクサイでしょ。
おならでもいい。
風下2mなら十分クサイ。
締め切った部屋の中では、時間が経つとタバコの煙やらおならが部屋の空気全体に拡散してしまう。
こうなると、もはやディスタンスとか風向きとかは関係無くなる。
だから【ディスタンス/距離だけではダメ】で、
【換気、風向き、マスク、+ディスタンス、+空気清浄機、+紫外線殺菌】と多層で防護しましょ。
あたりまえだけど、
【検査と隔離は伝染病対策の基本中の基本】だ。


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◆12 ウイルスを含んだエアロゾルからの防護方法/個人,マスク編
個人で簡単にできて、しかもこれといった害がない、マスクですよ。
少しお金が掛かるのが欠点かな。

多層構造で作られた不織布マスクは、
漏れなく適切に装着した場合、
0.5~10μmの粒子を最大90%遮断することができます。
しかし
◆マスクの素材と肌の間にわずかな隙間があるだけで、全体のろ過効率が大幅に低下します。
【2.5μm未満のエアロゾルでは、1%の漏れ面積で、ろ過効率が50%低下】します。
だからマスクのまわりのスキマは決定的にまずいです。

---当ブログ独自---
N95やDS2マスクの説明書には、
顔の寸法によってもれ率を測った表が出ています。
あるN95 の場合、顔の寸法によって/マスクサイズ違いでもれ率0.8~2.6% 
自分に合ったよりもれ率の小さなマスクを選べと書いてあるゾ。
別の測定では、
N95その1 もれ率0.15~0.47%
N95その2 もれ率0.23~10.07%
サージカルマスク もれ率21.61~70.61% だった。
顔に合っていないとN95マスクでもスキマがいっぱいできてしまう。
また、
サージカルマスク(不織布マスク)のスキマは、まあこんなもんだとおもうよ。

しかも、
一般に市販されている不織布マスクは特に規格がないので、ろ過性能もまちまちなのだ。
たまたまいいマスク買っていればいいんだけど、いいマスクかどうかを確認するすべがないのだ。

だからちゃんと規格され、試験して通ったものだけ売られている、ろ過性能も十分な
N95,DS2,KF94マスクがいいのです。
マスクについては過去記事
『学ぼうシリーズ第一回_感染症防護_特にマスクを学ぼう』を参照してください。
---当ブログ独自ここまで---

マスク比較
モデルウイルスを用いて、
N95マスク、サージカルマスク、布製マスクのウイルスろ過効率を比較した研究があります。
N95および一部のサージカルマスクのろ過効率は99%を超え、布製マスクは50%以上の効率でした。

別の研究では、
SARS-CoV-2 を含むエアロゾルで、
N95 マスク、サージカルマスク、布マスクの有効性を、対面式のマネキンを使って調査した。
その結果、N95マスクが感染性 SARS-CoV-2 を最も効率的に遮断することができました。
ほとんどすべてのマスクは、少なくともある程度の保護することができるが、100%の効果はありませんでした。

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◆13 考察

この項はまとめなので引用しよう。
めんどくさければ、読み飛ばしてもいいですよ。
---引用---
空気感染は、呼吸器系ウイルス疾患の感染経路として、空気感染は長い間あまり評価されていなかった。主な理由は、ウイルスを含んだエアロゾルの発生と輸送の過程に対する理解が不十分であることと、逸話的な観察結果が誤って伝えられていたからである。

SARS-CoV-2の空気感染の優位性を示す疫学的証拠は、時間の経過とともに強くなっている。屋内と屋外での感染の、明確な差異は飛沫感染では説明できない。なぜなら、重力で動く飛沫は屋内でも屋外でも同じ動きをするからだ。屋内でのスーパースプレッディングの頻度の高さから、空気感染の重要性が指摘されている。

屋内での感染と超拡散クラスタにおける換気の悪さの役割が実証されている。これはエアロゾルの場合にのみ当てはまるものである。飛沫やフォムライト(接触)による感染は換気の影響を受けないからである。

SARS-CoV-2の長距離空気感染は、感染が非常に少ない国のホテルの検疫所や、大規模な教会でも観察されている。

新種の呼吸器ウイルスが出現している間、リスクをうまく軽減して感染拡大を防ぐためには、すべての感染様式(空気感染、飛沫感染、排泄物感染)を認める、より包括的なアプローチが必要である。空気感染を認識して対策を追加する前に、サンプリングしたエアロゾルの感染性を示す直接的な証拠が必要とされるため、人々は潜在的なリスクにさらされている。

SARS-CoV-2、インフルエンザウイルス、およびその他の呼吸器系ウイルスの感染経路に関する従来の定義にとらわれなければ、100μm以下のエアロゾルによる感染の方が、ごく近距離にいる人の粘膜に吹き付けられたまれにしかない大きな飛沫による感染よりも、はるかに一貫性があると言える。

最近、WHOや米国CDCがSARS-CoV-2の空気感染を認めたことで、この感染経路に対する防御策を近距離・遠距離の両方で実施する必要性が強まっている。

空気感染のメカニズムが完全に理解した上で、エアロゾルによる感染は至近距離での感染が最大であることを認識すると、両者の予防策や緩和策(距離を置くことやマスクなど)に重複があることが明らかになる。近距離と遠距離の両方でエアロゾルによる感染を緩和するためには、特別な配慮が必要である。

具体的には、換気、気流、マスクの装着と種類、空気ろ過、紫外線消毒などに注意し、屋内と屋外の環境を区別して対策を講じる必要がある。知識は増え続けているが、呼吸器系ウイルスの空気感染をより確実に防ぐための防護策を追加するには、すでに十分な知識が得られており、「飛沫予防策」は置き換えられるものではなく、むしろ拡大されるものであることに注意が必要である。
(引用中略)
発症前の人のウイルス量は、症状の出ている患者のウイルス量に匹敵する。よって
【以下のような管理を行うことが重要】である。
症状のない感染者が話したり、歌ったり、単に息をしたりしたときに発生する
感染性ウイルスを含んだエアロゾルの暴露を防ぐための管理が重要である。
これらの人々は、自分が感染していることを知らないため一般的に社会活動を続けることができ、空気感染を引き起こす。
(引用註:検査と隔離だな)

医療施設は、呼吸器系ウイルスに感染した患者を収容する可能性が高い。そのため、医療従事者には、空気中の曝露を低減するための適切なPPEを提供する必要がある。室内にいる人、特に換気が悪くウイルスを含んだエアロゾルがたまりやすい混雑した室内環境では、高濃度のウイルスを含んだエアロゾルにさらされる可能性が高くなる。

◆【飛行機、電車、バス、船、クルーズ船などは、比較的狭い密閉された空間で、換気が必ずしも最適ではない場合がある。】
(引用註:まったくだ)
多くの研究では、屋外環境での空気感染のリスクは、屋内環境よりも大幅に低いことが多くの研究で示されている。しかし、屋外での感染リスクは近接した状況、特に長時間にわたって話したり、歌ったり、叫んだりした場合には、感染リスクがある。SARS-CoV-2 などのウイルスの寿命や感染力の増加に伴って屋外での感染リスクは高まる可能性があります。
(引用註:デルタ株だな)

また、ウイルスを含む廃水や病院の糞便のエアロゾル化は、潜在的な屋外暴露リスクがあり、これを過小評価してはならない。

超広域感染で繰り返し示されているように、空気感染は換気の悪い部屋で、居住者が感染性のある部屋の空気を吸い込むことで空気感染が起こる。距離を置くことは、呼吸器系プルームの最も集中した部分から人々を遠ざけることになるが、それだけでは感染を防ぐことはできない。換気やろ過、感染性エアロゾルを放出する人の数、密閉された空間で過ごす時間などの対策を考慮しなければ十分ではない。

特定の環境下に存在する無症候性の感染者の数が不明であることは呼吸器疾患対策の新たな課題です。エアロゾル濃度を低減させる換気、ろ過、紫外線消毒などの工学的対策が依然として、空気感染のリスクを減らすための重要な戦略である。

呼吸器系ウイルスの空気感染に関する認識が高まっているにもかかわらず、さらなる調査が必要な問題が数多くある。エアロゾルや飛沫中のウイルス濃度を大きさの関数として直接測定し、新たな感染を引き起こす可能性を調べる必要がある。

さまざまなサイズのエアロゾル中のウイルスの寿命については体系的な調査が必要である。エアロゾルや飛沫のウイルス量と、感染症の重症度との関係を定量化するには,さらなる研究が必要である。また、疾患の重症度がエアロゾルの大きさや数、気道に付着した場所と相関するかどうかを調べることも重要である。

明確な証拠が示すように空気感染は、SARS-CoV-2をはじめとする多くの感染症の主な経路であることが明らかになっている。
換気、
空気の流れ、
空気のろ過、
空気の紫外線消毒、
マスクの装着 などを中心に、
短距離と長距離の両方でエアロゾルの伝達を緩和するための追加予防策を実施する必要がある。

これらの介入は、現在のパンデミックを終息させ、将来のパンデミックを防ぐための重要な戦略である。室内空気の質を改善するために提案されたこれらの対策は、COVID-19のパンデミックをはるかに超えた健康上のメリットをもたらす、長期にわたる改善につながるものであることに留意する必要がある。
---引用終わり---

--------記事ここまで------------

ああ、疲れた。

「学ぼうシリーズ」第六回。
呼吸器系ウイルスの空気感染
Airborne transmission of respiratory viruses SCIENCE掲載論文を日常語に翻訳してみました。
足かけ4日間かかってしまった。

相当に読みやすく書いたつもりなんだけど。
(「◆13 考察」を除く)
どーだったかな。


お次は、今度こそ
3回目ブースター
淘汰圧
測定パルス体温体調メモ
検査PCR抗原抗体定量定性
このへんかな。


じゃあ、またね
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