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ミサイル艇急襲!〜護衛艦「あきづき」体験航海

2017-02-22 | 自衛隊

前回、アメリカのロスアンゼルス型潜水艦と遭遇したことを
ここでご報告した時に、艦橋のモニターに潜水艦の「ニックネーム」
が書かれていた件について裏の人に教えていただいたので書いておきます。

海上自衛隊では海上の艦船同士は、お互いコールサインで呼び合います。
わたしが推測した通り、こちらはパイロットのタックネームみたいなもので、
外部者に聞かれた時にも特定されないようにする「偽名」ですが、
何とこれ、機密性保持のために毎日変更するのだそうです。

昔は陸空自衛隊に驚かれたりしたものらしいですが、今では
共同で動くことも多いので認知されているかもしれない、とのことでした。

しかしわたしが艦橋のモニターで見た「ニックネーム」がこれかというと違いまして、
その日の「あきづき」のように、一般人やあるいは広報の人間を乗せている時には
コールサインとはまた別にニックネームを使うのだとか。
わたしみたいに目ざとく見つけてブログにアップする人対策ですね。

つまりニックネームは特定秘密ではない_φ( ̄ー ̄ )と。

というわけであらためてすれ違った潜水艦のニックネームをご紹介しておきます。
その名も

「エースストライカー」!

うーん、かっこいいっすね。キャプ翼か?

さて、潜水艦とのすれ違いイベントが終わりました。
艦橋のチャートデスクでは、三角定規を使ったり電卓を叩いたり。

わたしが出港を見送り、帰国をお迎えした昨年度の遠洋実習航海で、
厳しい半年の訓練を経てここに配置された、新三尉のお仕事ぶりです。

何となく艦橋を出たり入ったりしていると、右舷側を白波立てて
ミサイル艇が通り過ぎて行くのに気がつきました。

こんなに急いでどこに行くのでしょうか。 

艦番号829、「しらたか」さんであることが判明。
「はやぶさ」型ミサイル艇の末っ子である6番艦です。

それにしても、この白波の立ち方をご覧ください。
全速力で航行したときの「はやぶさ」型ミサイル艇の速度は時速80キロ強。

先ほどアメリカの潜水艦をガードしていた海保の「すずかぜ」型警備艇で
さえ30ノット(時速55キロ)だそうですから、桁外れの速さです。

追い抜いて行った・・・と思ったら、先の方でUターンして戻ってくるではありませんか。
「きよみ丸」という漁船(ボート?)は停止してミサイル艇が過ぎるのを待っています。

すると右ウィングからミサイル艇に向かって、発光信号を送り始めました。
発光信号機は、レバーをカチャカチャ手動で動かします。

こういう時にはどんなことを通信するんでしょうね。 

向きを変えた「しらたか」は、瞬く間にこちらに近づいてきました。
マストの先端に翻る自衛艦旗が鮮やかです。
そして自衛艦旗の下に揚がっているのは回答旗です。 

「 回答旗は信号を解読したら全揚する」

そうですから、これが先ほどの発光信号に対して揚げられたものでしょうか。
そしてその下には「ご安航を祈る」の信号旗が!

わーい、ご安航を祈られてしまったよ。


それにしても驚くのはこのスピードです。

その舳先が分ける波の形が他では見られないものであることにご注意ください。
「はやぶさ」型は速度を時速44ノットに決めたとき、 艦首に、吃水線下を痩せさせた
ディープV系のハイブリッド船型を採用しました。

つまり、海を楔で切り裂きながら進んでいくようなイメージです。 

こちらは我が「あきづき」甲板上の乗員たち。
ハッチを開けて出航の時に使用した索を片付けていると見た。 

「しらたか」はわたしたちの右舷側横まであっという間に到達すると、
見ている前でドリフトを始めました。

初めて見たよ。船のドリフト航行。

我が国のマスコミ的には輸送艦「おおすみ」にプレジャーボートがぶつかった時などには
「大和」とほぼ同じ大きさの「おおすみ」がドリフトしたことになってるみたいですが(嫌味)、
これは船体が軽くスピードがあって小回りのきくミサイル艇ならではです。 

急ターン中の「しらたか」の雄姿。

「はやぶさ」型の船体は軽さを追求した結果アルミ合金となっていて、
同じ小型の艇でも掃海艇とは全く違う素材を貼っていることが
この写真の「829」の付近を見ていただければわかりますね。

なお、船体が小さくスピードが速い「はやぶさ」型はピッチング(前後が縦揺れ)が
どうしても避けられないので、人員の居住区は船の真ん中に集中させてあります。 

シートベルトは必須で、操舵室にいるときはもちろん、食堂の椅子にもあるのだとか。
キッチンはありますが、火が使えないため、調理器具は電子レンジと電磁調理器のみ。
従って航海中の食事は、弁当またはレトルト食品が基本だそうです(T_T)

ミサイル艇は基本長時間の航海はしない、ということなのだと信じたい。

艦内には「しらたか」とその後ろに「おおたか」が航過することが
アナウンスされました。

「しらたか」「おおたか」は共に佐世保地方隊所属です。
ちなみに6隻のミサイル艇が配備されているのは舞鶴と大湊、そして佐世保。
これらの基地の共通項は”外敵との対峙の可能性”・・・かな?
 

ウィングには艦長も出てこられ、そこにいたみんなに向かって

「手を振ってあげてくださいー!」

艦長はこの写真でも帽振れしておられますが、他の乗組員たちは
基本任務中にはそういうことは行わないようです。 

「しらたか」はドリフトを撮るのに一生懸命になってしまい、
艦長と隊員一人(カメラ記録係)、そして女性のラッパ吹きが
登舷礼しているのを撮り損なってしまいました。 

ミサイル艇にも女性自衛官が乗り込んでるんですね。

後ろに交差するような形で設置されているのが、90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)
三本煙突の形が面白いですね。
微妙に角度がついているのはこれもステルス性のためでしょうか。 

「はやぶさ」型は全部で6隻しかないので、観艦式には
この「しらたか」も「おおたか」もよく出演?しています。

海自 ミサイル艇 平成27年度 観艦式

観艦式では高速走行しながらIRデコイを発射するのがおなじみとなっています。
この観艦式では「しらたか」「おおたか」と大湊基地から「くまたか」が
三隻で行動展示を行いました。

「しらたか」の後ろの「おおたか」とすれ違う時には撮影に集中させていただきました。
艦長ともう一人(海曹)が敬礼、一人がラッパを構え、
そしてもう一人が写真を撮っています。 

「御安航」の信号旗が鮮やかです。

肉眼では見えませんでしたが、写真に撮って見たところ、
「帽振れ〜!」の掛け声がかかった瞬間でした。

そして「おおたか」のカメラマンは今わたしたちを撮影中。

まず艇長の帽振れ。

「帽振れ」と「ラッパ振れ」(笑)

ちなみにミサイル艇の乗員は21名です。

艇長、さらに両手振れ。
なんかこの方超渋くないですかー? 

掃海艇の艇長もこういう侍を思わせるきりりとした雰囲気の方が多いですが、
率いるフネの種類によって艦長の佇まいも微妙に違っている気がします。 

というわけで、「しらたか」に続き「おおたか」も高速走行で行ってしまいました。

・・・・・と思ったら・・・・

帰 っ て き た し(笑)

横でUターンして「あきづき」を追い抜き、前方に行ったかと思うと
こちらの航路を横切る形で3回目のUターン。

あとで「あきづき」艦長に伺ったところ、このようなことは
ミサイル艇以外にはできないということでした。 

今度は「あきづき」の左舷側をすれ違って行きます。
直前を横切り、対面ですれ違うのはもうあっという間でした。

これも艦長に伺ったところによると、このミサイル艇急襲は
「あきづき」艦長ご自身が体験航海に参加している人々に見せるために
確か同期であるミサイル艇艇長に頼んでくださったのだとのこと。 

ところで、冒頭話題にした「一般人向けのニックネーム」ですが、

「おおたか」は「ジェットストリーム」。
「しらたか」は「ミステリーホワイト」。

となっておりました。

ついでに、先ほど出港を見た

「はるさめ」は「スプリングドリズル」

・・・・・なかなか粋な直訳ですね。 

潜水艦との遭遇に続き行われた、滅多に見られない海上のイベントに
わたしたちはすっかりテンション上がりまくりです。

「さあ、それでは続いて艦内見学にでも参ろうか!」

意気揚々とデッキから艦橋に入ろうとしたら、なんと、「しらたか」「おおたか」
が、後ろでもう一度Uターンして、最後に右側を追い抜いて行きました。

一番手前の最初の、そしてその向こうの、追い抜いていったときの航跡が
どちらもまだまったく消えていないというのに・・・。

おそるべしミサイル艇。

 

続く。

 

 

 



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2 Comments

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ドリフトではなく (筆不精三等兵)
2017-02-22 13:50:30
時速80kmとはスゴいですね!
競艇のボートが同じ時速80km、水上のF1と呼ばれるパワーボートが時速120kmですから、ミサイル艇の大きさでそのスピードは迫力満点でしょうねぇ。
ちなみに競艇は300m程離れたターンマークというブイを左回りで3周しますが、ターンの際にほとんどの艇がドリフトします。
「全速ターン」と呼ばれる技術ですが、その時の体制や航跡などから「モンキーターン」「Vターン」などと呼ばれているそうです。
パワーボートでそれやったらほぼ間違いなくぶっ飛んでますが。
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ミサイル艇萌えになりそう(笑) (鉄火お嬢)
2017-02-22 14:52:13
エリス中尉、この体験航海記事をブログにアップしたら、我々はマニアのおじさんお兄ちゃん達に呪われるのではないか…と言いましたが、観艦式でさえ、ミサイル艇の魅力の1割も見せてない、この場面でようやく3割ぐらい見せてくれたのかな?と思いましたが……逆にこんなんに狙われたら、ミサイル飛んできて被弾して、からがら逃げようにも、韋駄天でトドメ刺しに飛んでくるわけでしょ。猛禽の名前は伊達ではない。ゾーッッ(((^_^;)
しかし、何だかすっかりミサイル艇にシビれた私。エリス中尉もご同様かと。あのスピードと切れ味、堪りません(笑)船酔い知らずの私、機会があればミサイル艇のシートベルト装着して、40ノットを体験してみたい、なんて野望がチラリと……。モーターボートやクルーザー、漁船の早いのは乗ったことがありますが、あれより凄いのか……ドキドキ(^q^)
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