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12基目の3インチ対空砲〜重巡洋艦「セーラム」

2017-07-07 | 軍艦

マサチューセッツ州クインシーのフォアリバーで公開されている
展示艦、重巡「セーラム」についてお話ししています。

艦尾側にある入り口から甲板に上がり、見学をしながら艦首まできて、
そのまま一階上の主砲塔内部を見学し終わりました。

艦橋を守るため、3連装の主砲が2基、その周りを5インチ砲が3基、
対空砲として設置されています。

 そしてこれも対空砲として

Mk 33 3インチ砲

が、同じレベルにありました。(冒頭写真)
防空システムとして、艦首に1基装備している3インチ砲ですが、
5インチ砲の近くにもあり、設計が始まった当初、アメリカ海軍が
どれだけ防空、つまり日本の特攻機を恐れていたのかって気がします。

もちろんこの後、対空戦闘に対する考えどころか、海戦思想さえ変わり、
これらの考え方はすぐに時代からは取り残されていくわけですが。

「セーラム」の砲塔とその下のバーベットがよくわかる図。
3インチの対空砲は、艦橋の舷側に2基ずつあり、その一つがこれです。
第2砲塔のレベルから艦橋内に入って行きました。

レタリングの凝った字体で書かれた

Chief Of Staff

の看板。
スタッフのチーフ、などと直訳するとあまり偉そうに思えませんが、
例えば日本では海幕長のことは

Chief of Staff, Maritime Self Defense Force

ですから、アメリカでもきっと偉い人専用室なんだと思います。
例えば陸軍では「参謀総長」、空軍でも「参謀総長」をこう称し、
海軍の場合はなぜか参謀総長とは言わず、

海軍作戦部長(Chief of Naval Operations)

というようですが、何れにしてもそのクラスの人の部屋だということです。

艦内案内図にはここのことを「士官室」とだけ記されています。

廊下は黄色い誘導線の入ったグレー、壁は薄い緑色にペイントされています。

レイディオルーム5。無線室、別名シャックですが、戸は閉ざされていました。
コールサインらしきものが書かれているので、もしかしたら
未だにアマチュア無線などで生きているのかもしれません。 

ここまでがメインデッキを”0”とした場合の”01”レベルです。

 

階段があったので昇ってきました。
軍艦を見学する場合、自分でどう動いたか記憶しておかないと、
たちまちあとでどこの写真であったかがわからなくなります。

というわけで、ここからが(02を飛ばして)”03”レベルです。

オペレーションズ・オフィサーの部屋。

オペレーションズ・スペシャリスト、 OSというのは日本語でいうと
電測員で、任務は

航海・作戦行動に必要となる情報の収集、作図、整理、評価をし
各部署に配布することを目的とする(wiki)

ことで、現代の護衛艦では CICが勤務場所となります。

日本では電測長は1等海曹あるいは海曹長が勤めますが、
アメリカ海軍では士官がこれを行うようです。

ところでこれを検索していると検索予測で

operations officer navy salary

というのが出てきました。
いくらお給料がもらえるのか、みんな検索しているということね。
で、ちょっとわたしも調べてみたのですが、ボーナスなど手当を入れると

平均108,685ドル(約1184万円)

$66,872-$136,876(728 万円〜1491万円)

ですって。
自衛隊の相場というものをわたしは全く知らないんですが、
例えば公開されているお給料の目安として、陸海空将で

陸・海・空将俸給月額 706.000円〜1,175,000円

ってことなので、ボーナスを加算したこの数字と比べても随分高給取りだという印象です。
っていうか自衛隊、一国の軍の大将や中将の給料がこれって、安すぎない?

と思ったら、米海軍の提督の月収平均は、$ 15,583、約170 万円
トップの差はあまりないけど米海軍は平均値が高いという印象です。
 

1,175,000

デッキに出られるのでのぞいてみると、3インチ砲のマウントでした。
前にも言いましたが、この2門にはそれぞれ射撃手が一人ずつ、
装填が一人ずつ、弾薬運搬が一人ずつ、マウント全体でリーダーが一人。
合計7人で操作を行いました。

回り込んで同じ砲を前方から撮ってみました。

「デモイン」級のスペックによると、3インチ砲は全部で24門あるとのこと。
ということはマウントは12基あるということになります。 

どこにあるか、グーグルマップの写真に番号を振ってみました。
今見ているのは2番のマウントで、冒頭写真は3番ということになります。

艦橋周りに8基、艦首に1基、艦尾に2基。
あの、どこを探しても12基目が見つからないんですが・・・。

まさかテントの下ってことでもないだろうし・・・。 

マウントの横には、建造当時からあるらしい注意書きがありました。

ここがロッカー兼”clipping room”とあります。
クリップというのは日本語で「挿弾子」といい、
銃火器に複数個の弾薬を装填する際に用いる器具のことで
ボフォース40ミリ機関砲でも使われています。

ここを開けると、おそらく階下からクリップを補充できたのでしょう。

注意書きの中には、

「もし火薬をカートリッジからこぼしたら、”静かに”と命令する。
火薬がばらけて装填できない場合には不燃性のコンテナーに入れるか、
直ちに水に浸すこと」

などとあります。
稼働中は近くに水を汲んだバケツかなんかがおいてあるものなんですかね。

フラッグプロットに出てきました。
信号器のラックは完全に艦体に固定されています。

 

護衛艦の時鐘は大抵信号旗の近くにあるというイメージですが、
「セーラム」の時鐘も信号旗ラックの上部にありました。

この鐘には「U.S.N」(アメリカ海軍のこと)としか書かれていません。 

艦首側を向いた艦橋の一室に出てきました。
機材が一切取り払われ、ただのスペースです。

ここを「フラッグブリッジ」と言います。

そこから右舷側をのぞいてみました。
探照灯はGE製です。 

発光信号をだす、ここを「シグナルブリッジ」といいます。

そのデッキの後方は、扉のついた一室に繋がっていました。
ここを入っていきます。 

タクティカルプロット。

CICが戦後甲板下に設置されるようになる前はここが指揮所でした。

マニューバリングボード、日本語では「運動盤」と言います。
全く同じものが現在も海上自衛隊では使われており、
占位運動訓練の時に三角定規やらディバイダー、コンパスで計算を行います。

艦がある運動をするために必要な針路や速力、
相対風を艦首から受ける角度に必要な艦の針路・速力、
などといったことが算出できるそうで、航海科士官の必須知識です。

左側、透明アクリルの運動盤になにやら計算が書かれていますが、
攻撃の対象?らしきところに

「Tally Ho」

とあります。 
イギリス海軍の潜水艦に「タリホー」というのがいましたが(笑)
たぶんそれではなく、本来の意味、狐狩りの時にハンターが使う掛け声のことでしょう。
この計算なら結果は「タリホー!」状態だよ、と。(多分・・・違うかも) 

右側には艦隊の艦船とその艦番号が記されています。

VAQA ネプチューン DD679 (マクネア)

VAQB ギガ・ロー DD 879(リアリー)

VAQC エンANドラン DD866(コーン)

などとあり、コールサインであろうかと思われます。
かっこの中が実際の艦名ですが、「ネプチューン」とかはニックネームでしょうか。 

「パパさん」というのがある・・・・。

「ベイビーサン」という終戦後の日本の「パンパン」を描いた漫画を思い出しました。


サラトガ、セーラム、リアリー、コーン・・・・。

ただ艦名だけならわたしにもいくつか知っているものが・・。


AN/SPA-8Aという型番のレーダー。

以前戦艦「マサチューセッツ」について書いたとき、

艦隊の指揮を執る艦船を「フラッグシップ」といいます。
「admiral」とそのスタッフが坐乗しているということになり、
この一団を” THE FLAG" とアメリカ海軍では呼びます

と説明したことがあるのですが、「偉い人ルーム」が近くにあること、
そして「セーラム」はなんども旗艦となっていることを考えると、ここは
いわゆる「フラッグス」が勤務する

「フラッグ・シーキャビン」

いう指揮所の一つであると考えられます。 

フラッグプロットは、アドミラルがが指揮をとるのに必要な、レーダー、
無線、甲板の状況などすべての情報が集まるようになっています。

ちなみに、旗艦として司令官が乗ってくるときでも、艦の指揮を執るのは
その艦長であり、これだけは不可侵の権威となっています。


当然ながらその逆はあり得ないわけですが、かつてあのハルゼー提督が
マケイン艦長の艦に座乗し、台風コースに一度ならず二度までも突っ込んでしまったとき、
怒りのハルゼーはマケインに

「責任を取ってこの台風から抜け出せ!」

なんていって事態の回避を要求したということがありました。
艦隊司令が艦長に艦隊指揮を丸投げしたということ事態、
よく考えると結構トンデモないことだったんじゃないかと思うんですが、
結果この時も台風被害で艦隊は多大な損害を受けたのですから、
この時ハルゼーが降格にならなかったのが不思議なくらいです。
 

 

 

部屋の隅には執務用のデスクが。

さて、この上の階に操舵艦橋がありますので、行ってみることにします。

 

 

続く。




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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
12番目の76mm連装砲 (お節介船屋)
2017-07-07 09:29:13
本当は1番目の76mm連装砲の位置
艦首部分エリス中尉が1番の番号をふられている連装砲は2番です。
その前錨鎖が見えていますがその前艦首旗竿と錨鎖孔の間に設置されていました。
3艦との早々に撤去されています。
青波をまともにかぶるし、飛沫でも配員、射撃に支障が出たのでしょう。
返信する
チーフ・オブ・スタッフ (佐久間)
2017-07-07 13:59:12
エリス中尉、今年のボストンの夏はいかがでしょうか?チャールズ川のレガッタを見るだけで、暑さなど吹き飛んでいることと存じます。

もう、どなたかが既にご追加されていると思いますが、失礼します。

デ・モイン級重巡は、交代で第六艦隊旗艦を務めていましたので、艦隊司令官と共に、艦隊幕僚たちも載せていました。チーフ・オブ・スタッフは、第六艦隊司令部参謀長と訳すのでしょうか?イギリスのですが、海軍の指揮系統が載っていました:
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a5/Royal_Navy_Command_Structure_2010.png

その下に:
S 1, for manpower or personnel(人事・行政参謀)
S 2, for intelligence and security(情報参謀)
S 3, for operations(作戦参謀)
S 4, for logistics(後方・兵站参謀)
S 5, for plans(計画参謀)
S 6, for signals (i.e., communications or IT) (通信参謀)
などがいました。
返信する
諸々 (Unknown)
2017-07-07 18:34:14
お節介船屋さんがおっしゃる通り、31番砲は艦首にあったようですね。エントリ二枚目の船のイラストには描かれています。

艦尾のMk-33は海上自衛隊と同じように砲側に6発入りのロータリー弾倉がありますが、舷側のMk-33にはないようです。

Ready Service Lockerは自衛隊では砲側格納庫と言っていました。艦底にある弾薬庫からお写真の銀色(ピカピカ!)の筒で揚弾し、まずはReady Service Lockerに格納(一時保管)し、射撃の際には取り出して装填、発射します。

余談ですが、昭和の御代、ソ連海軍とにらめっこしていた頃の船は大抵、このMk-33でしたが、ソ連の船と並ぶと、わざと揚弾、砲側格納庫に弾を入れて、こっちもやる気満々だと見せ付けていました。

砲側格納庫の注意書きにクリップとあるので、3インチ砲弾もクリップしていたのでしょうか。

40ミリは5発まとめてクリップして装填しますが、一発4キロなので、5発まとめてもエッサホイサと装填出来ますが、3インチは一発15キロあるので、精々、2発(30キロ)でしょうね。3発(45キロ)だと重過ぎて給弾出来ないと思います。

Flag Bridgeも興味深いです。アルファベット4文字は各艦のコールサインで、その横にあるNeptune等はニックネーム(自衛隊では「いせ」がOcean Queenのような)です。訓練や実働ではコールサイン(毎日更新)を使い、広報等民間人がいる場合はニックネーム(固定)を使います。

Tally Hoは防空戦闘独特の表現で「目標視認」の意味です。

Operations Officerは自衛隊では船務長です。巡洋艦(自衛隊だとイージス相当)だと中佐(2佐)なので、乗組、航海手当込みだとそれくらいになると思います。上げていらっしゃるのは手当抜きの本俸です。

昔は年間200日、家に帰らなくても高給をもらえる海自志望が多かったのですが、今はケータイ(スマホ)の圏外は耐えられないという人が多く、本俸しかもらえない陸空(書かれているお給料は本俸なので、陸空の人の支給額です)の希望者の方が多いそうです。

セーラムは艦隊旗艦なので、司令官(Commander Xth Fleet)の次席は幕僚長(Chief of Staff)です。自衛隊では艦隊(自衛艦隊、護衛艦隊、航空集団及び潜水艦隊。司令官は海将=中将)の次席は幕僚長(将補=少将)なので、この部屋を使っていた人も恐らく少将(Rear Admiral)でしょう。

文民統制の原則があるので、米軍も自衛隊も陸海空各軍(自衛隊)トップは国防長官(防衛大臣)軍人(制服)はそのスタッフという意味で幕僚長(Chief of Staff)ですが、米軍でも自衛隊でも海軍(海上自衛隊)だけは言い方を変えています。米軍は書かれている通り、Chief of Naval Operations(CNO)自衛隊はChief of Maritime Staff(CMS)です。
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艦隊司令部 (佐久間)
2017-07-08 17:50:09
適当な事を書いてしまいましたので、少し調べました。と言っても、当時ではなく、今の第6艦隊です。

リーダーとしてあげられていたのは、ナポリの統連合軍司令長官ミッシェル・ハワード大将(女性)以下7名でした。

艦隊司令部旗艦に乗艦しているのは、第6艦隊司令官(中将)・副(Deputy)司令官(准将)・副(Vice)司令官(准将)の将官3名と、エリス中尉が部屋を見られた首席参謀(Chief of Staff)の大佐だと思います。

後は、最先任上等兵曹(Fleet Master Chief・Command Master Chief)の2名ですが、米国海軍でMCPOプログラムが採用されたのは1976年(海上自衛隊は2003年)で、重巡セーラムには部屋はなかったはずです。

DeputyとViceの違いもわからないくせに、大変失礼しました。
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