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海の儀礼〜平成三十年度 海上自衛隊練習艦隊 体験航海

2018-05-31 | 自衛隊

晴海から横須賀までの体験航海もそろそろ終わりに近づいてきました。

簡単な艦内ツァーを行なった後、わたしたちはブリッジに上がり、
そこで入港の様子を見学することになりました。

最初、わたしは右舷側ブリッジのウィングに落ち着くことにしました。
そこに今回のツァーのアレンジをしてくださった幹部校の方がおられたので、
ご挨拶などをしておりますと・・・・・、

曳船YT10が「まきなみ」を右舷を軽やかに抜き去っていきました。

追浜が航路右手に現れるところにある防波堤には、ご覧の通り
赤い可愛らしい灯台が設置されています。

YT10の今日のお仕事は、「まきなみ」と「かしま」の間の防眩物を回収し、
それを晴海から横須賀に持って帰ることです。

上から見ていると、前甲板に運要員が出てきました。
舫などを出すハッチが開けられます。

ちなみに、右舷を歩いていく海曹さんを見てください。

朝と同じ位置に立ち、朝に持っていた同じ棒を手にしています。
舫作業は個人個人が作業を専門分担し、それが変わることはないようです。

舳先の赤メガホンの士官が甲板での作業を率いる指揮官ですが、
朝と同じくサングラス着用です。

そういえばどんな晴天下においても、海曹海士が制服姿でサングラスをかけているのを
見たことがない気がするのですが、禁止されているのでしょうか。

ハッチから太い舫が引き出されました。

「かしま」は米海軍基地の手前にあるブロックの向こう側を航行中。

このブロックですが、赤字で「航泊禁止」と書かれています。
向こう岸は米軍基地なので、海からの不審船の侵入を防ぐためのものでしょう。

米軍基地の白いビルに青文字で「 NEX Navy Exchange」とありますが、
ネックスは、アメリカでネイションワイドに展開する海軍直営の小売店です。
ファッション、雑貨、電化製品、家具、
とにかくなんでも扱っているようです。

「かしま」の入港を補助するために、タグボートが2隻、
湾口でこんな風にちゃんと並んで待っています。

あー・・・・・いじらしくって、萌える(笑)

女性海曹の持っている物体、朝も見ましたが何にするのだろうと謎でした。
軽い不織布で作られているように見えますが・・・・。

その時、右舷側のウィングを立ち入り禁止にする旨告げられたので、
私たちは左舷側ウィングに移動しました。

「かしま」とタグボート2隻が合流し、連れ立って逸見岸壁に向かう、
こんな後ろ姿を見ることができるのも「まきなみ」乗艦者の特典かもしれません。

左舷側にいると、米海軍基地の艦艇を見ながら通り過ぎることになります。
艦番号89は横須賀ウォッチャーにはもうお馴染み、「マスティン」。
横須賀に来て、もう足掛け12年になります。

YOKOSUKA軍港めぐりの船とすれ違いました。
年々人気が出て乗客が増加傾向にあるそうで、この日も満員御礼の状態です。

もう今年でオープンして10年になるそうですが、最初の頃は、
出航するたび米海軍から監視船がずっと跡を付いて来ていたそうです。

左から

85「マッキャンベル」

65「ベンフォールド」

54「カーティス・ウィルバー」

「アーレイ・バーク」型ミサイル駆逐艦三人娘。

「マッキャンベル」と「カーティス・ウィルバー」は、東日本大震災の時
トモダチ作戦に従事して災害救助活動を行なってくれました。

みなさんその節はありがとうございます。


ところで最近、震災当時横須賀地方総監であった高嶋博視氏著、

「武人の本懐」

を読みました。
あの未曾有の国難に当たって、海上自衛隊が災害と斯く戦ったかを、
災害地担当地方隊である横須賀地方総監部の指揮官が語るというもので、
ニュースやメディア媒体とは違う角度から見た震災の記録です。

同じように「トモダチ作戦」について、第7艦隊の中の指揮官によって書かれた
あの時の記録があれば、ぜひ読んでみたい、と思った次第です。

「かしま」後甲板には、すでに登舷礼の黒と白の列ができています。

信号旗は先ほどとは違うものが揚がっています。
「かしま」のコールサインは「JSUK」だそうですが、
わたしの乏しい知識でもこれが違うことくらいはわかります。

「横須賀港のどこそこに繋留する」

ということを意味するバース信号ってやつではないでしょうか。

 
 
ブリッジから実習幹部らしき三尉が出て来ました。
外を見ながらなにやらノートに書き込んでます。
 
斜めに線がいっぱい書き込んである・・。
 
 
こんな風に。
うーん、当艦の艦位を示してるんだろうけど、
具体的にどこがが何をしめしているのか想像もつかないぞ。
 
 
「マッキャンベル」さん、ちょうど正面から。
こうしてみるとマストの形とか、自衛艦とは全く違いますね。
 
 
左、記録を続ける三尉の右腕。

ほとんどの実習幹部は「かしま」に乗り組んでいますが、
「まきなみ」にも何人かが乗艦し船務を行なっています。
 
 
「ベンフォールド」さんの艦橋をアップにしてみました。
 
赤白のストライプの真ん中に蛇がいて、
 
たしを踏みつけるな」(Don't tread on me)
 
といっている軍艦旗「ファースト・ネイビー・ジャック」が揚がってます。
「ベンフィールド」、イージスシステムのレーダー補修中みたいですね。
 
 
おっと、「ベンフォールド」の舷側に腰掛ける海軍軍人の姿発見。
 
 
見ているともう一人やって来ました。
 
「どうしたんだよカルロス・・・元気ないな」
 
「ああ、ジムか・・。
彼女のマリアからメールが来たんだけどさ・・・終わりにしたいって」
 
「リアリー?まじかよ!」
 
「俺が日本に行ってる間に俺のダチと付き合いだしたんだって」
 
「オーマイガー、そりゃひどいな」
 
「ガッデム、ホセのやつ、サンディエゴに帰ったらただじゃおかねー」
 
みたいな?
まあ違うと思うけど、決して楽しそうな雰囲気ではないのよね。
 
 
ほらね?
ていうか、甲板でタバコ吸ってますが、いいんですかね。
 
 
と、そんな妄想をしている間にも、「かしま」の入港作業は始まっています。
「押し船」に右舷側を押してもらって、左舷側で着岸。
 
 
左舷側にはメルキュールホテルと、自衛隊の潜水艦基地が見えて来ました。
艦番号63は、これも「アーレイ・バーク」型の「ステザム」
 
 
 
初めて護衛艦に乗り、初めて横須賀基地で米軍艦を見た人たちは、必ず
 
「アメリカの船って、全然サビとか補修しないんだね」(その心は”汚い”)
 
などと口にします。
この時の艦橋でも、あちらこちらでこの会話が聞かれました。
 
特に「ステザム」さんの艦体はひどい。
これだけサビが筋になっているのに、なんとかしようという気ゼロ。
赤いのは錆止めだと思うんですが、工事中にも見えないし、
レーダーが真っ黒け、HEEEの文字もすげーテキトーに描いた感アリアリです。
 

ところで、本件とは全く関係ないですが、「ステザム」って、
ハイジャック事件(トランスワールド航空テロ事件)で飛行機に乗っていて
犯人に射殺され、たった一人の犠牲者となった水兵の名前なんだそうです。

駆逐艦に名前を残すのは、昔から基本的に名誉の戦死者ということになっていますが、
不慮の事故で亡くなった場合というのもあるもんなんですね。
 
 
さて、それではその前方に目を移して、遠目にも手入れの行き届いた
我らが海上自衛隊の潜水艦でお口(目)直し?をしましょう。
 
どちらも「しお」型ですが、右側が明らかに新しいのがわかります。
 
 
左側のセイルの上アップ。
二人の姿があります。

士官は作業服でなく冬服を着ているのに注意。
双眼鏡のストラップは青なので、艦長ではないと思われます。
 
 
あっ、右側の潜水艦の人はこっちを見てる!
どちらにも「UW2」、「ようこそ」の信号旗が揚がっています。

こちらも、冬服の士官と作業服の取り合わせです。
 
 
「まきなみ」が潜水艦を横から見る位置までやって来ました。
この写真を拡大してみます。
 
 
実は肉眼では、人がいることすら見えない距離だったので、
写真を拡大してみて初めてそうだったのか、と思ったのですが、
2隻の潜水艦のセイル上の、士官と青い作業服の組み合わせ、
そして甲板上の二人、全員が正対してこちらを見守っていたのです。
 
「ようこそ」の信号旗を、練習艦隊を迎えるために揚げて。
 
海軍の伝統に則った「海の儀礼」は、現代の海上自衛隊においても、
如是粛々と継承
されていることを、改めて確認した次第です。
 

続く。
 
 


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3 Comments

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さすがです (Unknown)
2018-06-01 05:28:37
おっしゃる通り、かしまに揚がっている信号は横付けする岸壁を示す「バース信号」です。一番上と一番下は国際信号旗ではなく、海軍専用の信号旗で、一般には開示されていないので以下省略します(笑)

米軍基地側の「航泊禁止」のブロックは消磁所です。艦船は鉄で出来ているので、どうしても磁気を帯びますが、年一回程度、この磁気を出来るだけ少なくするため、専用のケーブルをグルグル巻きにして、ここに長時間繋留し、船体固有の磁気を打ち消す磁気を発生させるべく通電します。気休め程度ですが、磁気機雷対策です。軍港巡りに乗られると消磁中の船に遭遇することもあります。

潜水艦の艦橋に揚がっている「UW2」ですが、これは信号旗を掲げているだけでなく、練習艦隊司令官に敬礼しています。この時に耳をすませば、潜水艦では「練習艦隊司令官に敬礼する。左気をつけ」と艦内放送が掛かっていたはずです。

艦橋に上がっているのは当直士官と航海科のラッパ手(曹士)で、当直士官の「気をつけ」の号令でラッパ手が右の場合「パァ~」一声、左の場合二声を吹奏した後にラッパ「気をつけ」(パッパ。パッパカパ~)になります。

お写真では舷門の当番も挙手の敬礼をしているのが見えます。

ちゃんと敬礼しないと「なってない」とあとでお叱りを受けるので、当直士官は入港予定時間の少なくとも10分前くらいには艦橋に上がって、双眼鏡でかしまの動静をチェックしているはずです。お写真でもこちらを見ていますよね。この辺はミリミリうるさいです(笑)
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ほんっとお肌の手入れ悪いアメさん(笑) (鉄火お嬢)
2018-06-01 08:56:39
先日、保安庁観閲式の前日は横須賀の三笠で菅野泰紀さんの鉛筆画見て、久々に軍港めぐりにも乗りましたが、まいど「あ~いつ見てもネイビーは艦の手入れがなってない、つかイージス艦(実は全部イージス艦なのは承知)のデザイン特に″顔付き″不細工だよなあ」と同盟国海軍には失礼なんですが、ブツブツ言っております。海自のイージス艦は目鼻立ちがちゃんとしてて、アンテナやマストなどの構造物もバランス良くて全体がスッキリしてるのに、あちらさんのは「どうしてこうなった」感充満(笑)まあ性能に関係ないのはどーでも良いとか言いそう。
それで海上保安庁の巡視船を見ると、残念ながら海自なみにピカピカではなく、たぶん日頃の巡視船の稼働の厳しさ、フネの手入れに回す時間人手のタイトさが滲んでるのかとも思いましたが、観閲式の最中に見た巡視船は、結構見るとあちこちがね……鳥羽や敦賀、尾鷲などでも、どれもかなりサビサビ。白いから余計目立ちます。それとも海上自衛隊がキレイ好きすぎるのでしょうか。。。 保安庁さんは塗り直しを海自みたいに自分たちでするのか、聞き損ないましたが。
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艦の手入れ (お節介船屋)
2018-06-01 10:55:55
まずエリス中尉の疑問
>女性海曹(本当は海士長)の持っている物体、朝も見ましたが何にするのだろうと謎でした。
>軽い不織布で作られているように見えますが・・・・。
この写真の4枚前の写真で左艦首の海士が膝を折って同じ物を取り扱っています。
ロープを通すクローズドフェアリーダーと呼ばれる索道にこれを取り付けています。
索の保護とフェアリーダーの塗料剥離防止を兼ねて乗員で帆布のようですが作製し使用しているものと思います。きめ細かい配慮ですね。

さてエリス中尉から褒めて頂いています自衛艦の手入れ状況ですが古い知識で解説したいと思います。
自衛艦の整備には造修補給所が艦側からの請求に基づき総監部経理部を通して造船所や修理企業に発注して、点検修理する物と乗員整備をする物があります。
官庁ですのできめ細かく細部まで決められていますが、国の事情が色濃く反映され近年の予算状況と省力化と少子化が大きく影響しています。また艦種によって修理時期、期間、オーバーホール機器等が違いますのでなかなか平易に説明できませんが、修理予算の日本の現状は気付かれておられると思いますが、歳出不足で予算カットは大きく、これをカバーするため国庫債務負担行為で年度を跨がって次の年で払う予算が大きくなっています。これを自衛艦の検査修理も受けて、修理時期や予算が左右されます。
で修理時期や使用時数でオーバーホールが必要になっても問題なく作動し、異音等も発生しなければそのまま使用される機器も多くあります。前コメントしましたが使用時数に達する機器特にガスタービンはオーバーホール済予備機と交換し、陸揚げした物はオーバーホールしますが、費用が多大であり使用実績を勘案しつつ使用時数の延長も図ったりしています。
その他の機器や船体等も艦と造修補給所が連携してやり繰りしている現状だと思います。
省力化と少子化を機器の自動化等で対応していますが募集について取り上げて頂きましたが、定員の削減で乗員数は減少していますがどの艦もこの定員ですら満たしているのは皆無と思います。艦艇の大型化に比較して乗員が少ないにも関わらず定員とおりの配員はなく、乗員整備が満足に出来ることもないでしょう。また充足率が毎年発表されますが、これ予算不足で給料を払えないので定員とおり募集しない事を宣言しているのです。たしか海自で3,000人定員減だったと思います。

塗装について説明します。
造船所で塗装するものと乗員整備で塗装するものがありますが船体の外舷、船底は造船所で塗装されますが年1回ですが、予算が充当出来ればこれも艦種で違いますが数年に1回の大きな造船所での検査修理時期に一端塗装を剥いで、錆止め、上塗り等を実施します。上部構造物等の外回りと内部は乗員整備ですが予算が確保されれば外回りの塗装は足場を含め造船所で実施となりますが潤沢な予算ではありませんので艦との調整がされますがおそらく造船所と乗員で分けての塗装ではと思います。甲板や艤装品はほぼ乗員によって塗装されています。外舷等も1年間そのままには出来ませんので補修が必要ですが海洋汚染防止法でペンキを海上に落としてはいけませんし、天象気象で塗れない時期もあり、ボースン掌帆長が悩む事となります。艦の威容に直接絡むため本当は四苦八苦だと思います。
米海軍のように割り切ってやる事も必要ではと思います。また日本在籍の米艦艇には横須賀艦船修理廠と言う力強い味方がおり、海自艦艇とは後方支援が大きく違います。また相当前の話ですが米艦艇は艦が修理予算を持っていたと聞いた事がありますが?本当はどうだったのか現在はどうなのかは分かりません。

今の塗装状況について海自OBは自分達の時代はもっと綺麗にしていたと言われるかもしれませんが現自衛官たちが大型化と少子化のなか苦労して実施している一端でもご理解頂ければと思い、お節介の説明でした。船屋の観点での説明ですので誤りや偏見がありましたらごめんなさい。
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