◎リフレッシュ&トライ
(2006-05-27)
鉄山の瓊禅師は、例の雪巌禅師の下で修業して無字の公案に取り組んでいた。
『雪巌禅師が
「あなたがたは、長い間座布団の上に坐って居眠りしている。地上におりてぐるりと一回りして、冷たい水で顔を洗い、口をすすぎ、両方の目をパッチリ開いて、再び座布団に上がって、背骨をまっすぐ立て、山や岩が壁のように切り立っているように端座し、公案をひたすら工夫すべきである。
このように修行すれば七日間で必ず悟りを得るであろう。これは私が40年前に既に用いた方法である。」と。
私はそこで、第一日に雪巌禅師の言われたとおりにやってみたが、その工夫の仕方が普通と違っていることを自覚した。
第二日には、両眼を閉じようとしたが、閉じることはできなかった。
第三日には、この体が虚空の中を行くような気がした。
第四日には世間のこと、すなわち外界のあることを知らないような気持がした。その夜てすりに寄り掛かってしばらく立っていた。するとぼんやりして何もわからなくなった。
それで公案を点検してみたら、忘れてはいなかった。早速引き返して座布団の上に上った。するとたちまち、頭から足に到るまで、ちょうど髑髏を打ち割ったように、また万丈の深い井戸の底から空中に引き上げられたように感じた。
その時その歓喜を告げる人もなく、雪巌和尚に話した。ところが、和尚は「まだだ、もっと工夫して来い」と言われた。』
(禅関策進/筑摩書房から)
ここは七日間で悟りを得なかった。
最後の四日目のレベルも、初禅と言われる、うれしく、楽しい状態までも至らない、欲界定レベルではないかと思われる程度であるが、とにかく、とっかかりがあったことは事実である。
「潜在意識を使ったメソッドで、あなたは一週間で開悟できる」とは、最近流行のキャッチ・コピーそのものだ。禅では、願望が叶うとか、金がもうかるとか、先祖供養が足らないなどの無粋なことは一切言わない。
スピリチュアルな体験は、私だけの特別な体験であるものだから、誤解しやすいものである。すっかり有頂天になって、誤解してしまわないように、正しい指導者のいることはありがたいものである。鉄山の瓊禅師は、更に工夫を続けていく。