◎正受慧端の修行時代
(2005-08-02)
1.屋根の下から足を突く
正受は、師家の至道無難に付いて修行を続けていたが、ある日屋根の修復を命じられた。正受が屋根に登ったところで、師家は、下から杖を伸ばして老人の足を突いて、『香厳の樹上の公案はどうだ、さあ見解を言ってみろ、言ってみろ。』と責めたてた。
※香厳の樹上の公案:口に枝をくわえてぶら下がっているところで、正しい見解を言わねばならないという公案。言えば枝から落下して大けが、言わねば修行としては不合格。
2.師匠の著作を火に投ず
ある時無難禅師が、和文で書いた法語を出して、正受に与えて言うには、「これは、私の睡眠中のたわごとである」。
そこで正受は、これを開いて2~3枚読むと、立ち上がって、炉の中に投げ入れてしまった。
無難が「何をする」と言うと、正受は「老師こそ、何をなさいますか」と答えたところ、無難も黙ってしまった。
一人でも半人でも、得道した人間を育て上げるのは、得道した人間の使命であり、かつその育て上げた弟子は、師匠のレベルを上回っていなければならないと聞く。
中国古代の聖天子の一人、舜は、やはり屋根の上で、下から火をつけられたが、屋根の上で足を突かれる話は、それに比べると、ましかもしれないが、危機の中に陥れるという点では、十分な鍛え方と言えよう。
また、自分の法語を焼き捨てられるのは、師匠として、その場は非常に気分を害したろうが、納得した部分もあったのではないだろうか。師匠のレベルを越えるという意味で。