今夜はいつものように女房がいないので、
楽家に行った。
中学教師のKさんがいた。
マスターの髭は、
先週は鼻の下だけのちょび髭になっていたのに、
今日はまったくなかった。
やはり、かなり初孫を意識しているのだろう。
そうそう、お孫さんの名前は「小夏」とつけられた。
なかなかいい名前です。
やがて福祉関係のところに勤めていたTさんが来た。
(話をきくと彼は、
最近トップとケンカしてやめたという)
手錠大好き社会科教師の犯罪のことや、
障害者との素敵な付き合いなどの話題を肴に
楽しいひとときを過ごした。
9時過ぎ、おれはお勘定をして楽家を出た。
もっといたかったが、
家でやらなくてはならないこともある。
真面目な話、小説を書きたいのです。
ところが家に帰って焼酎を用意し、
テーブルの前に坐りテレビをつけると、
プロジェクトXが始まっていた。
「白サギ舞え、空前の解体工事」
姫路城の修理を行う一大計画の話だ。
終わるころ、うとうとしてたら、
NHKのアナウンサーがえらく興奮して話している。
ニューヨークの世界貿易センタービルに、
旅客機がぶつかった、と騒いでいる。
あの2つのビルにそれぞれ飛行機が飛び込んだ。
そのうち、そのビルたちが崩壊した。
ワシントンの米国防総省にも旅客機が飛び込んだ。
なんなんだ。
おれは、小説も九想話も書くことが出来ず、
さっき(1時半頃)までテレビを観ていた。
12時過ぎまで帰ってこない女房に、
「アメリカで大変なことがあったというのに、
どこにいるんだ」
というメールなんか打つはずはない。
もっと普通のメールは出した。
5分後に女房は帰ってきた。
テレビを観て、あいつは大騒ぎだ。
そのうちKが帰ってきた。
台所でコンタクトレンズの洗浄をしているKに、
換気扇の下で煙草を吸いながらおれはいった。
「おれたちが、ぼーっと暮らしているときに、
ずーっと前から、緻密な計画を練って、
実行するやつがいるんだよな。
やったことは許せないことだけど…」