懐かしい成井豊の脚本だ。昔はHPFでも大人気で何度も何度も取り上げられていた。キャラメルボックスは高校生御用達の劇団だったけど、今はあまり聞かない。
久しぶりに見た成井芝居(これ自体は30年ほど前の作品なのだが)は相変わらずのハートウォーミングで、それを成蹊のみんなはとても丁寧に演じた。
小学5年を終えたばかりの少年が主人公だ。彼は母とふたりで暮らしている。母は彼に私学中学の受験を求める。本人にはその気はないのに。さらに、彼は別れている父の再婚話にも心痛める。
あまりに「いかにも」な設定に鼻白む。甘いばかりで、まるでフックがないお話は定番の展開をして優しい結末を迎える。冒頭から登場するストーリーテラーである兄(の秘密)も「如何にも」で、彼が何者なのかは最初から読めるし。
ちゃんと安心して見ることが出来るけどそれだけ。ただ、演じるみんながドキドキしながらも冷静に、一緒懸命にこの作品を作っていることはちゃんと伝わる。彼女たちが頑張っているのがちゃんと伝わってくるのはよかった。それだけでこの芝居は信じられる。なんだか心正しい高校演劇を見ている気分だ。(もちろんこれは高校演劇だけど)
1時間20分に及ぶ作品はめりはりはないけど。さらりとしていて、気持ちよく見ることができた。やはりこれは正しい高校演劇だ。