
昨年、仲里依紗主演の傑作『 時をかける少女』を監督した谷口正晃監督が、今回は桐谷美玲を主役に迎えて2本の映画を作り上げる。ひとつは17歳の高校生を主人公にした青春映画で、もうひとつは20歳の短大生を主人公にしたミステリー映画だ。舞台も、設定も、もちろんドラマの方向性も全く異なる2作品を2本立として同時公開するという画期的な企画だ。今時ありえないアナクロ振りのアイドル映画だ。彼女のファンのためだけに作ったような映画なのだが、今時トップスターでも、アイドル映画なんか作られない時代に、この2本立はないだろう。
とはいえ、映画はとてもよく出来ていて、思いもしない拾い物だ。『時をかける少女』もそうだった。何を今更『時かけ』なんて、と誰もが思ったはずだ。だが、とてもよくできた映画で、今こんな『時かけ』が可能なのか、と驚かされた。今回も同じような驚きがある。こういうプログラムピクチャーの佳作を今の時代に見せられるだなんて、思いもしなかった。
しかも、2本ともとてもよく似た感触を残す。それは『時をかける少女』にも通じる感触だ。ここには甘酸っぱくて心地よい幸福感がある。谷口監督はそんなテイストで、子供たちの揺れる心を繊細なタッチで綴る。映画はいずれも2つの時間を行き来する。幼い子供時代と、今。10歳前後の子供の彼らと、20歳前後の大人の彼ら。ずっと同じ相手を思い続けること。自分の気持ちに正直になれないもどかしさ。そんなものが描かれる。この微妙に屈折した心情は、こんなにも設定が異なるにも関わらずどの映画にも共通する。とてもセンチメンタルで、絵空事スレスレの話なのだが、気にはならない。それはこの映画がリアルなドラマを見せようとするのではないからだ。こんなふうに心を持続できたなら幸せだと思える、そんなちょっとした理想像がそこには描かれる。今回は時をかけたりはしないけど、それと同じくらいに大胆な行動が描かれる。幼なじみの男の子と2人で旅に出る、とか、10歳の時に死んだ男の子を10年間も思い続けて、更に、今頃になって彼がまだ生きていると信じたり、しかもその消息をたどる、とか。そんなお話が用意されている。
『乱反射』の主人公は2歳年上の幼なじみの男の子のことが大好きだ。だが、彼女はその気持ちを認めたくはないし、今までその気持ちに気づかないふりをして、生きてきた。高校2年の夏。京都の大学に通う彼が帰省してきた。おなじ頃、煮え切らない彼女の態度に業を煮やしたボーイフレンドから拒絶された。自分がひとりぼっちだと気付いた時、自分の本当の気持ちを受け入れる覚悟が出来る。しかし、今では彼には京都に恋人がおり、彼女を受け入れることは出来ない。映画のクライマックスは、強引に彼について行き、彼の富山のおばあちゃんのところへ旅に出るシーンだ。そこで最後にはちゃんと自分の気持ちを彼にぶつける。そして、砕け散る。なんだか清々しい。
『スノーフレーク』は、話自体があまりに嘘くさくて、ちょっとついていけないけど、描こうとする想いはここでもちゃんと伝わる。10歳の時に、両親による無理心中で死んでしまった幼なじみの男の子を今も想い続ける女の子の話だ。三角関係というのもよくあるパターンだが、谷口監督らしい。2人の男の子とひとりの少女。残された2人の10年後。恋人未満の2人のもとに死んだはずの男の子が、現れる。彼は今も生きていて、ずっと彼女を見守っていた。はたして、それは本当なのか。ミステリーとしてはちょっと破綻があるし、設定も穴だらけの映画だけれど、描きたいことはわかるから許せる。
70分強という上映時間。長編映画としてはちょっと短いが、それは、ストレートに伝えたいことだけを見せるためにはちょうどいい時間なのだろう。桐谷美玲の魅力を満載した2本の映画を堪能出来るからファンには堪えられない作品だろう。だが、僕が見た劇場(心斎橋シネマート)には5人しかお客はいなかった。しかも、1日1回上映だし。大阪独占上映なのに。せっかくの映画なのに、なんだか淋しい。
とはいえ、映画はとてもよく出来ていて、思いもしない拾い物だ。『時をかける少女』もそうだった。何を今更『時かけ』なんて、と誰もが思ったはずだ。だが、とてもよくできた映画で、今こんな『時かけ』が可能なのか、と驚かされた。今回も同じような驚きがある。こういうプログラムピクチャーの佳作を今の時代に見せられるだなんて、思いもしなかった。
しかも、2本ともとてもよく似た感触を残す。それは『時をかける少女』にも通じる感触だ。ここには甘酸っぱくて心地よい幸福感がある。谷口監督はそんなテイストで、子供たちの揺れる心を繊細なタッチで綴る。映画はいずれも2つの時間を行き来する。幼い子供時代と、今。10歳前後の子供の彼らと、20歳前後の大人の彼ら。ずっと同じ相手を思い続けること。自分の気持ちに正直になれないもどかしさ。そんなものが描かれる。この微妙に屈折した心情は、こんなにも設定が異なるにも関わらずどの映画にも共通する。とてもセンチメンタルで、絵空事スレスレの話なのだが、気にはならない。それはこの映画がリアルなドラマを見せようとするのではないからだ。こんなふうに心を持続できたなら幸せだと思える、そんなちょっとした理想像がそこには描かれる。今回は時をかけたりはしないけど、それと同じくらいに大胆な行動が描かれる。幼なじみの男の子と2人で旅に出る、とか、10歳の時に死んだ男の子を10年間も思い続けて、更に、今頃になって彼がまだ生きていると信じたり、しかもその消息をたどる、とか。そんなお話が用意されている。
『乱反射』の主人公は2歳年上の幼なじみの男の子のことが大好きだ。だが、彼女はその気持ちを認めたくはないし、今までその気持ちに気づかないふりをして、生きてきた。高校2年の夏。京都の大学に通う彼が帰省してきた。おなじ頃、煮え切らない彼女の態度に業を煮やしたボーイフレンドから拒絶された。自分がひとりぼっちだと気付いた時、自分の本当の気持ちを受け入れる覚悟が出来る。しかし、今では彼には京都に恋人がおり、彼女を受け入れることは出来ない。映画のクライマックスは、強引に彼について行き、彼の富山のおばあちゃんのところへ旅に出るシーンだ。そこで最後にはちゃんと自分の気持ちを彼にぶつける。そして、砕け散る。なんだか清々しい。
『スノーフレーク』は、話自体があまりに嘘くさくて、ちょっとついていけないけど、描こうとする想いはここでもちゃんと伝わる。10歳の時に、両親による無理心中で死んでしまった幼なじみの男の子を今も想い続ける女の子の話だ。三角関係というのもよくあるパターンだが、谷口監督らしい。2人の男の子とひとりの少女。残された2人の10年後。恋人未満の2人のもとに死んだはずの男の子が、現れる。彼は今も生きていて、ずっと彼女を見守っていた。はたして、それは本当なのか。ミステリーとしてはちょっと破綻があるし、設定も穴だらけの映画だけれど、描きたいことはわかるから許せる。
70分強という上映時間。長編映画としてはちょっと短いが、それは、ストレートに伝えたいことだけを見せるためにはちょうどいい時間なのだろう。桐谷美玲の魅力を満載した2本の映画を堪能出来るからファンには堪えられない作品だろう。だが、僕が見た劇場(心斎橋シネマート)には5人しかお客はいなかった。しかも、1日1回上映だし。大阪独占上映なのに。せっかくの映画なのに、なんだか淋しい。