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映画・演劇のレビュー

子供鉅人『バーニングスキン』

2011-08-26 19:45:06 | 演劇
この暴力的な作品の持つインパクトは強大だ。重度のアトピー性皮膚炎を患う女は、あり得ないような暴力を家族に対して奮う。妹も両親も為す術もなく従う。あげくには妹は殺されてしまうし、彼女の変わりにわけのわからない男がやってきて、妹を名乗ることとなる。このオープニングの一連のシーンは強烈な印象を残す。彼らの関係性は何なんだろう、と思う。不安にさせられる。凶暴な彼女の横暴に両親はただ怯え、従順に彼女の言うことを受け入れる。病気に対する負い目から抵抗が出来ないとかいう、おきまりのパターンなんか超越している。なぜこんなことになったのか、そこが知りたいと思う。だが、そんなこと、お構いなしに芝居は展開していく。別にそれは構わない。

だが、そこから先が続かない。同じような描写が連綿と続くとなんだか、予定調和に見えてくる。エスカレートする暴力はそれだけではただの見せ物にしかならない。しかも同じような描写はだんだん飽きる。砂漠のイメージが意味する物が見えない。それは彼女の中のユートピアなのだろうが、それだけではただの思いつきでしかない。4枚のカーテンを使い映画のワイプの効果を狙う。このめくるめく豊饒なイメージの万華鏡は見ていて楽しめるが、最初にあった怖さはどんどん薄れるばかりだ。

彼女の中にある暴力的衝動はなぜこんなふうに形作られたのか。そこが見えないまま、ただ破壊的行為を描くばかりだから、緊張感が持続しないのだ。確かにおもしろい芝居だとは思う。それは認める。だが、ここまで奥行きのない話では90分が持たない。


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