人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

オフレコ流出?

2016-04-05 11:34:00 | 時事/金融危機
 

「マイナス金利まで導入して何で円高が止まらないんだ・・・」

「それは皆んな日本の資産を売りたいからさ、円が本当に安くなる前に売れって事さ」

「円が安全資産だからじゃないのか・・・」

「当たり前じゃないか。日本国債に何か仕掛けが無いか注意した方がいいぞ!」

「確かに、外国人投資家が買い増しているが、為替で利益が出るからじゃないのかい?」

「今、一番攻撃しやすいのが日本国債さ、なんせ金利がチョコっと上昇に転じれば・・」

「日銀には勝てんだろう・・」

「先物市場が曲者なのさ」

「選挙までは大丈夫だろうか・・・・」

「そこら辺は彼らもわきまえてるさ、逆らっちゃいけないのは誰かは分かっているさ」

「少なくとも、私で無い事は確かだな・・・。」

「あんたは良くやってくれたよ。感謝している」


・・・こんなオフレコの会話を妄想してしまう今日この頃・・・。

金融政策の限界・・・高度に発達したグローバル金融の元では金融政策は無効化される

2016-04-05 09:24:00 | 時事/金融危機
 

■ 日銀の異次元緩和は何故失敗したのか? ■

クルーグマンが来日して自民党の勉強会で「増税すべきでは無い」と発言した事が新聞の記事になっている様ですが、実か彼はこの勉強会で次の点を指摘した。


http://blogos.com/article/170289/より引用

(1) 経済の弱さは世界中に広がっている。多くの面で今は、我々はみな日本なのだ(In many ways, we are all Japan now) 。その結果、日本を含めて難しい経済運営に直面している。

(2) 主要国どうしの経済の結び付きが強い。その結果、資本の出入りが激しい。

(3) 大胆で非伝統的な金融政策をもってしても目的の実現が難しい。

(4) 金融政策だけでは不十分で財政出動が必要だ。

<引用終わり>


「緩和の規模が足りない」と主張していたクルーグマンやバーナンキですが、どの口が言うか・・・と飽きれるばかり。彼らは以前は下記の主張をしていました。

1)0金利でも回復しない経済では従来の金融政策は効かない(ゼロ金利の罠)

2)金利が0でも高すぎるので実質金利をさらに下げて景気刺激する必要が有る

3)大規模な金融緩和によって「期待インフレ率を引き上げ」ればインフレを生み出せる

4)インフレが達成されれば実質金利は0以下となるので資金循環が活性化される

5)資金循環が活性化されれば景気回復のポジティブなサイクルが回り出す


リフレ派の主張は「異次元緩和」と言う日本の経済実験によって見事に否定されたのです。尤も、クルーグマンは以前より「日本の人口動態は酷すぎる」と指摘し、異次元緩和が失敗に終わるであろう事も示唆していたので、「嘘つき」のレッテルを貼られる事を巧妙にヘッジしています。

■ リフレ派的なケインズ理論 ■

クルーグマンらリフレ派の面々はリフレ政策のみでは先進国の景気が回復しない事が判明すると、次の様に主張し始めました。

1)成長力の低下した先進国で不足する需要は金融政策だけでは補えない

2)これはリフレ政策で実質金利を下げても未だ金利が高すぎるからだ

3)この様に極端に需要の低下した経済では財政政策で需要を直接作るしか方法は無い

4)先進国の政府は緊縮財政を止め、財政を拡大して需要創出に励むべきだ

リフレ派がケインズ派に豹変した訳ですが、リフレ派は別に財政政策の効果を否定していた訳では無いので、彼らにしてみれば「実質金利を低下させる方法を追加しただけ」と答えるでしょう。

要は、リフレ政策という大きな集合の中の一つにケインズ政策も含まれるのです。(彼らの脳内では)

■ リフレ政策の最大の効用は国債金利の低下だった ■

ここで、注目すべきは「財政拡大しても財政負担が掛らない状態」に世界が在る事では無いでしょうか。実はリフレ政策の現実的な効果は、国債金利を極限まで低下させる事として現れています。欧州も日本も短期国債や、コール市場の金利がマイナスにまで低下しています。

欧州各国(特にドイツや北欧諸国)、日本は短期的には財政負担を気にせずに財政を拡大する事がで行きます。

なんだか三橋信者の勝ち誇った顔が見えそうでイヤな気分がします。

■ 緩和規模や財政規模の拡大が足りなかったのだ?! ■

では、はたして財政拡大が少子高齢化が進行する日本の景気を回復させる事が出来るでしょうか?

1)政府が支出を拡大して公共施設やインフラを整備、或いは公のITインフラを整備する

2)政府が補助金や助成金を出して民間のビジネスをサポートする

3)政府が国民に○○手当を支給し、直接お金を配る

財政が財政を拡大して民間にお金を配る方法は上記の三つの方法が有ります。

アベノミクススタート時に自民党が集票に使った「国土強靭化」が1)に相当します。
「ふるさと創生補助金」は2)に相当します。民主党の「こども手当」は3)に相当します。

いずれにしても国民にお金を配れば、当然使うでしょうから、その分消費も増え、GDPも拡大します。当たり前の事です。

これらの政策は日本はバブル崩壊後から継続して行って来ました。しかし、景気は回復していません。クルーグマンら「変質リフレ派」や「三橋教」(最早区分が難しくなった・・・)は、「規模が足りなかったのだ」と主張するでしょう。

確かに今日の生活にも困る人達は貰ったお金は直ぐに使います。スーパーの298円の弁当が半額になるのを待っていた人達は、吉野家で暖かな牛丼を食べれるかも知れません。お兄ちゃんのお下がりのランドセルで入学式を迎えようとしていた1年生は、新しいランドセルを買ってもらえるかも知れません。こうした「少しの贅沢」が蓄積すれば、消費は若干は上向くでしょう。

■ 最大の問題は「賃金の上昇」が起きない事・・・生産性が上がらない理由■

では、これで企業が設備投資を拡大する程消費は増えるでしょうか?答えはNOです。

最大の問題は企業は財政拡大の継続性を疑いますから容易に設備投資を拡大しませんし、雇用を拡大して固定費を増やす事もしません。

「生産性が上がれば賃金は上昇する」という意見も良く聴きます。しかし、少子高齢化で経済の規模が縮小する日本で起きている事は「生産性を低下させて雇用を増やす」事です。要は限られたパイを奪い合う為に過剰な競争が起きており、失注する仕事に多大な労力が割かれ、商品やサービスは適正価格より相当低い価格で提供されます。

「労働生産性の低さ=ワークシェアリング」ではありますが、「低い生産性=低賃金=ブラック企業」という悪循環を生み出しています。

1)将来縮小する需要を見越して企業は投資を控える
2)固定費となる正社員の雇用を拡大せずに非正規雇用を拡大する
3)無理が生じる所は、非正規の安い雇用を拡大するか、長時間労働で切り抜ける

日本の企業の多くがこの悪循環から抜けられずに居ます。そして現在起きているのは非正規雇用の人材の不足です。

■ コストカットが正義とされる社会で「賃金の回復」は実現しない ■

現在企業は「優秀な非正規雇用」を血眼になって探していますが、若年労働人口の減少でそれが手に入り難くなっています。本来ならば「賃金を上げ」て労働力を確保すべきですが、赤字ギリギリの経営が続いていれば、それは不可能です。

そこで企業は「もっと安い非正規雇用」を奪い合います。外国人労働者や、能力の低い労働者やの奪い合いが始まっています。

現在、東京の安い居酒屋でフロアーに日本語の通じる店員は少なくなっています。注文は液晶画面をタッチして済ませいます。或いはメニューを指さして、一つとか二つとか言いながら指をその数だけ立てれば大抵通じます。

建築現場でも「労働力の不足と労働者の質の低下」が大きな問題になっていますい。団塊の世代が抜けた後、それを補う事が出来ないのです。特に現場の作業員(職人さん)や、現場管理の人材が不足しています。(設計は足り過ぎていますが・・・)特に、現場監督を派遣の人材で済ませ様とした場合、派遣会社が中抜きをするので、派遣される人材のレベルも労働意欲も非常に低くなります。

これIT企業でも起きている事で、結局孫請け、ひ孫請けから人材が派遣される為、企業が支払う金額よりも相当に能力が劣る人材しか現場には来ません。結果的にシステムトラブルが頻発する様になります。


この様に「欧米型経営」が浸透した社会においては、需要の拡大が賃金の上昇に結び付き難いという現象が生まれます。ケインズ理論の根底に有る労働力不足からの賃金上昇を足掛かりにした景気回復が起こり難くなっているのです。

■ グローバル競争が解消する「偏差」・・・フラット化する世界 ■

現在日本の経済は内需型です。しかし、内需の多くを外需が支えている事も事実です。経済は無から有を生み出す事は出来ません。日本が完全に内需だけで成り立つ為には、自然がもたらす恵み(農業、漁業、林業)と天然資源が日本の消費を満たすだけ存在しなければなりません。それこそ、国内だけで経済を回したらGDPは明治時代以前に縮小してしまいます。

日本は「加工貿易」という外需型産業で外貨を稼ぎ、それで海外から食糧や品物を輸入している点は昔も今も変わらないのです。

確かに高度成長期に蓄えたストックによる「所得収支」も無視できない額に達しているので単純に外需依存では無いにせよ、輸出額の減少や、貿易収支の赤字化は確実に日本の国内経済(消費量)を減少させて行きます。

本来ならばインフレが発生して通貨が下落し始めるのですが、日本の場合は少子高齢化によって需要が縮小しているので、輸出量の低下が経済に与える影響は見えにくくなっています。

しかし、新興国のキャッチアップによって日本の輸出製造業は確実に衰退し、それは下請けの利益減少など内需にも確実に影響を与えています。これらが循環する形で、日本のサービス業を含めた内需産業の利益は圧迫され、結果的に「賃金上昇」を抑制します。

この様にグローバル化がもたらす「生産性の向上=製造コストの削減」は日本やアメリカやヨーロッパの先進工業国の利益低下の形で、これらの国のGDPの拡大を抑制してきました。これらの国では製造業からサービス業へのシフトが起きていますが、サービス業の労働生産性は製造業のそれに大きく劣るので、結果的にGDPを抑制します。

現在先進国が直面している「需要不足」の原因は、先進国が製造業からサービス業中心の経済になって労働生産性が低下した事による所得低下にその原因を求める事が出来るのではないでしょうか?


■ グローバル金融で利益を奪い合う時代 ■

先進諸国は「生産」や「労働」で効率的に富を拡大出来なくなったので、新たな手を考え出します。それが「グローバル金融システム」です。


1)先進国内で国民から投資という名目で資金を集める
2)集まった資金を新興国や途上国に投資する
3)新興国や途上国の経済が発展する
4)新興国や途上国で新たに生まれる富を資本を通じて吸収する

イギリスは第二次世界大戦後に覇権国家の座をアメリカに譲りますが、アメリカはかつてのイギリスの殖民地ですから、ドルを通じてアメリカに集まる富は資本を通じてイギリスに還流します。

この様に、グローバル金融システムは、庶民のお金をイギリスに還流させる装置とも言えますが、その中でドルの果たす役割は極めて大きな物があります。

■ 円もユーロもドルに変換される事でアメリカやイギリスに富を運搬する ■


1)ヘリコプターマネーとして政府が日本国民にお金を配る(財政拡大とバーター)

2)資金は国内の経済活動の結果、貧困層から比較的富裕層(老人など)の手に渡る

3)消費を超える分の資金は預金や投資を通じて金利の高い海外に引き寄せられる


FRBは金利を正常化しようと必死ですが、日本とアメリカの金利差が拡大すれば資金は一気にアメリカに流出します。リーマンショック前や、昨年はこの流れが顕著でした。円キャリートレードの拡大により円安が加速するので、為替差益を求めてさらに資金は海外に流出します。


■ 日本やヨーロッパが財政赤字を拡大した分はアメリカ(イギリス)が儲かる ■

先進各国の需要の低下は、新興国の輸出不振をも引き起こすので確かに全世界の問題です。

しかし、一方で、リフレ政策でばら撒かれたお金がグローバル金融システムを通じて誰かの手に渡った事で、実体経済にほとんど影響を与えられなかった事と同様に、ヘリコプターマネーも各国の国内景気(需要)を本格的に回復させる事は出来ずに、お金は金融システムを封じて誰かの手に渡るのでしょう。


クルーグマンは嘘はついていませんが、しかし本当の事も言ってはいません。


そもそもマクロ経済学は、景気回復の解答など与えてくれないのかも知れません。私達の実生活の豊かさは、昔も今も、額に汗して得た労働と、子供を生み育てる事で受け継がれてきたものです。

そうして生み出された富を、「マクロ経済学」という魔物が「金利差」を利用して収奪して行く。私には現在の世界はその様に見えてなりません。


そして「資本」という怪物は、「需要創出」や「生産設備の破壊によるリバランス」の手段として「戦争」を好む傾向に有る事に、私達は十分な注意が必要なのだと思います。


<追記>

マクロとミクロを同列で語るなとの指摘はあるかと思いますが、マクロ経済学は「人」をあまりにも軽視し過ぎているのでは無いかと感じています。

物理学で言うところの「理想気体」で議論が進められている気がしてなりません。実際の物理学においては「非線形」の現象は外に多く、経済においても「パニック」の発生で、「相」や「系」そのものが変化する事は往々にして発生します。

「ショック」や「パニック」は市場には付き物ですから、それを上手く利用すれば莫大な利益が得られます。中央銀行はバブルを抑制する事は出来ませんが、それを思い通りのタイミングで潰す事にかけては昔から天才的です。

陰謀論的には彼らこそ黒幕なのです・・・。