人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

モンロー主義とアメリカ・・・孤立が守る利益

2016-04-13 06:28:00 | 時事/金融危機
 

■ モンロー主義 ■

今でこそ「世界の警察」としてあちこちで紛争の火種を振りまくアメリカですが、第二次世界大戦以前は「不干渉政策」を取っていました。

宗主国として南米諸国に鑑賞するヨーロッパ各国に対して、「アメリカはヨーロッパに干渉しない、従ってヨーロッパもアメリカ大陸に干渉するな」というのがアメリカの主張で、1823年に当時のジェームス・モンロー大統領が教書演説でこの主張を打ち出した事から「モンロー主義」と呼ばれています。

この当時、中南米諸国はヨーロッパ大陸からの独立の気運が高まっていました。これに対してヨーロッパの宗主国は干渉しますが、アメリカはそれをアメリカに対する敵対行動だと見なすと表明する事で、中南米の独立運動を支持します。イギリスの自由党もこれを支持していたので、「モンロー主義」は実は大英帝国の戦略の一環であったとも考えられます。

当時のヨーロッパは絶えず戦争を繰り返していました。特に近代国民国家の成立以降は、戦争は職業軍人同士の戦闘から、国民同士の戦闘と変化し、その規模も拡大します。帝国主義の時代、国家間の利権の争いは戦争によって解決されていましたが、その結果戦争は大規模化し第一次世界大戦へと発展します。

モンロー主義を打ち出していたアメリカはヨーロッパの戦争に「不干渉」を貫き、戦争に巻き込まれる事を巧妙に避けていました。一方でヨーロッパの戦火を逃れた人々は移民としてアメリカや南米に渡り、豊富な労働力を提供します。

「モンロー主義」は第二次世界大戦前夜まで継続します。ヨーロッパではナチスドイツが台頭し、フランスが占領されイギリスも空襲に遭います。連合国はアメリカの参戦を望みますが、アメリカの世論はモンロー主義の継続を望みます。要は他国の戦争に巻き込まれる事を嫌っい、戦争による漁夫の利を求めたのです。

この気運を一変させたのが日本軍による真珠湾攻撃です。卑怯な奇襲攻撃に対し、アメリカの世論は「好戦的」に変化します。当時、ルーズベルトは真珠湾攻撃を事前に知っていたと言われていますが、あえて攻撃させる事でアメリカの参戦の切っ掛けとしたのです。

■ モンロー主義に回帰するアメリカ ■

第二大戦後によって荒廃した大陸ヨーロッパとは対照的に、本土が無事であったアメリカは戦後復興の好景気もあって一気に覇権国家となります。ブレトンウッズ会議によって基軸通貨がポンドからドルに変更されたのもこの時期です。

その後アメリカは「世界の警察」として積極的に軍事行動を展開しますが、ベトナム戦争を例に取るまでも無く、その目的は「社会主義の拡大の阻止」でした。その後、冷戦の終結と共に中露とイデオロギー戦争は一旦幕を閉じ、それに代わって「宗教の戦争」が始まります。中東を中心に「キリスト教 VS イスラム教」という新たな対立軸が生み出されたのです。

「宗教の戦争」はISとの戦闘という形で現在も表向きは継続していますが、アメリカ軍はISへの攻撃にあまり積極的ではありません。むしろISと共闘してアサド政権の崩壊を画策していましたが、流石にロシアがこれを許しませんでした。

一方、アフガニスタン、イランの米軍は撤退しており、オバマ政権の元、アメリカは徐々に中東地域から軍を撤退させて来ました。

共和党のドナルド・トランプ候補が「日韓はアメリカに頼らず独自に自国を守るべき」と発言していますが、1990年代後半から進められている「米軍再編=トランスフォーメーション』計画では、在韓米軍は2016年に撤退、沖縄海兵隊もその多くがグアムとオーストラリアに移転する事が予定されており、その準備も着々と進めらて来ました。

「オバマの弱腰外交」と揶揄されていますが、米軍自体が世界から撤退を始めているのです。ただ、国内的に「撤退」は印象が悪いので、「平和」的な印象の強いオバマを大統領とする事で国民の支持を保っています。

世間では「平和的なオバマ」と「軍産複合体やネオコンと癒着した好戦的なヒラリー」という対立軸で語られますが、ヒラリーはアメリカの外交を決めるシンクタンク「外交問題評議会(CFR)」のメンバーです。米軍再編の動きはCFRが主導するものと思われますから、オバマ対ヒラリーというのも国民や陰謀論者向けのポーズに過ぎません。

■ さらにモンロー主義的はトランプ ■

ドナルド・トランプ氏は選挙戦で「アメリカは世界の警察を辞めるべきだ」と主張しています。軍事予算が財政を圧迫する状況で、この主張は国民に支持されています。

現代のモンロー主義とも言えるトランプ氏の主張ですが、「平和主義」では無く「実利主義」が色濃い発言で、アメリカ国民も自分達の血税が他国の平和を守る事に使われる事を嫌っているだけとも言えます。

こうなると「軍産複合体が黙っていないだろう」というのが大方の陰謀論者の見方で、大統領選挙ではヒラリーに相当肩入れして、トランプ陣営を邪魔するはずだと予測します。

■ 軍事的空白の後には紛争が発生する ■

少し冷静に考えると分かるのですが、実は米軍という強大な軍事力が撤退した後には「混乱」が訪れこそすれ、「平和」がやって来る事はありません。

これは旧社会主義国の政権が崩壊した後に、旧ソ連や東ヨーロッパ諸国が民族間で分断され、戦闘が始まった事でも予測が着きます。

アメリカ軍は現在世界から撤退する一方で、その地域の軍事的、社会的バランスを崩してからそこを去っています。

リビアでも、イラクでも、そしてシリアでも、それまで安定していた「独裁」を壊し、さらに戦乱で国土を荒廃させてから軍を引き上げています。後に残されたものは「部族間対立」と絶える事の無い内紛です。この様に中東では、かつてイスラエルと敵対していた「独裁国家」は見事に無力化されてしまいました。

最後に残るのはイランとサウジアラビアですが・・・・アメリカはサウジアラビアと関係を徐々に薄めています。サウジとイランが対峙して双方が動きが取れない状況がイスラエルにとっては最も好ましいとも言えます。

■ アジアの置き土産 ■

アメリカは日本や韓国といった極東地域からも撤退を予定していますが、ここでも中東同様に対立の芽を残しています。

北朝鮮に核技術の供与したのはアメリカですが(6か国協議を無効化した)、これによって南北朝鮮の統合は永続的に妨げられます。

一方、尖閣諸島や南沙諸島での中国の台頭を見逃す事で、中国との新たな対立の火種を育てています。

在日米軍、在韓米軍、第七艦隊がアジアでの影響力を弱めた場合、日韓やASEAN諸国は軍備を増強して中国やロシアと対峙せざるを得なくなります。

アメリカ人の血税で軍隊を派遣する余力が無くなったので、自分達でお金を出して自国を守れと言う事です。但し、兵器はアメリカから買ってね・・・という注文が付くでしょう。そして安価で確実な「核武装」をアメリカは許しません。

■ 「核軍縮」に逆行する北朝鮮 ■

ケリー国務長官が広島を訪問するなど、オバマ政権は「核軍縮」を積極的にアピールしています。しかし、「核軍縮」を進めれば進める程、核兵器開発を続ける北朝鮮やイランは「悪者」のレッテルが貼られてゆきます。

オバマは「平和主義」の仮面を被っていますが、実は彼が平和を叫べば叫ぶ程、世界は不安定な状態に陥ります。

ここら辺はCIAの出先機関の北朝鮮ですから阿吽の呼吸で動いているのでしょう。

■ 世界の戦乱によって利益を生み出す「モンロー主義」 ■

アメリカがかつて打ち出した「モンロー主義」は一見平和主義の様に見えますが、その実は他国の戦乱から利益を生み出す政策です。

アメリカは運が良い事に、世界の他の大国とは海によって隔てられています。ですから、世界の戦乱が飛び火し難い。

モンロー主義は、戦火から離れた高台に立って戦争によって生まれる利益機会を伺う政策と言えるのでは・・・。

トランプの台頭は、実はヒラリーが大統領になるよりも「怖い」のです。