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原油安とサウジアラビアの財政問題・・・中東の地雷

2015-12-10 14:47:00 | 時事/金融危機
 

■ シリアより影響が大きいサウジアラビアの財政赤字 ■

中東情勢はシリア国内のISISに注目が集まっていますが、実はサウジアラビア問題がラスボスとして控えています。

原油価格が40ドルを切っていますが、中東の雄と言われるサウジアラビアの財政が均衡するのは107ドル/1バレルだとか。現在の原油価格ではサウジアラビアは財政赤字に陥ります。

その為、オイルマネーを世界の市場に投資していたサウジアラビアは一気に投資を引き上げて財政補てんに充てている様です。その金額は全世界で10兆円とも。日本株市場からも、サウジアラビアの投資が引き上げられてと言われています。

■ シェール潰しのはずが・・・ ■

原油安の原因はサウジを始めとする産油国の利益を度外視した増産に有ると言われています。その目的はアメリカのシェール企業潰しだという意見を目にしますが・・・ここら辺は少し怪しいかと・・・。

確かにシェール起業の採算ラインは70ドル/バレル程度なので40ドルではとても利益が出ません。その為、シェール企業は効率の良い油井に生産を集中して原価を下げています。現在、アメリカの生産を続けている油井は最盛期の1/3に減少していますが、日量平均は900万バレルとそれ程減少はしていません。

一方、シェールビジネスはウォール街から資金調達していましたが、これが難しくなっています。そこで、手持ちの株や有価証券などを売り払いって急場を凌いでいます。原油も価格が少しでも改善した時に先物市場でヘッジ売りをして利益を拡大しています。

このヘッジ売りが原油価格の上値を抑えてしまうので、原油価格は安値を脱する事が出来ない。

結果的にシェール企業も青色吐息ですが、原油安の継続はサウジアラビアやロシアなどの産油国の経済や財政を等しく圧迫しています。

■ サウジ独裁政権を支える高福祉 ■

サウジアラビアの国民には所得税が有りません。公共サービスの多くは無料で提供されています。これは、サウジアラビアの石油を国家が管理し、その売却益を国家予算に繰り入れる事によって可能となる政策です。原油価格が下落すると、この財政赤字が拡大して、このシステムが維持不可能になります。

サウジ王家は「ワッハーブ教」という非常に戒律のキビシイ宗派の信仰を国民の強要しています。当然、国民の間に不満が高まりますが、それを無税や無料の公共サービスによって和らげています。

このまま原油価格げ低位で安定した場合、サウジ政府は高い水準の無料の社会福祉政策を維持出来なくなり、国民の不満が高まる恐れが出てきます。「アラブの春」がサウジで起きる可能性が高まるのです。

■ 戦争を欲する原因になるサウジの財政問題 ■

原油価格の下落の要因は供給過多と、世界的な景気後退と言われています。しかし、株式や債券に比べ現物市場は資金循環の影響を強く受けます。FRBの利上げを見越して、原油を始めとする商品価格はバブル状態から本来の価格に戻ったという見方の方が正しいのかも知れません。そもそも原油価格の適正は40ドル台/バレルだとも・・・。

ところが、サウジを始め中東産油国は原油価格バブルに合わせて財政を拡大しています。ここに中東における混乱の火種が隠されています。

原油価格は中東有事の際に上昇します。サウジアラビアが財政的に追い詰められた場合、中東有事を仕掛けて原油価格を引き上げる「誘惑」が高まります。

サウジはスンニ派のISISに資金援助を行っていると言われていますが、サウジ国内でシーア派をISISが攻撃するテロも発生しています。


イスラエルとサウジアラビアとロシアといった今までは想像もつかなかた国々の接触が度々報道されています。中東情勢はイスラエルVSアラブという枠組みが壊れ、シーア派VSスンニ派の対立に変わりつつあります。

シリア情勢よりも、サウジアラビア情勢の方が世界に与える影響は巨大でしす。原油価格下は様々な問題の起爆剤になる事に警戒が必要でしょう。