人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

無くなっては困るドル・・・ドルの意外な強さは自己暗示で保たれる?

2012-11-09 14:24:00 | 時事/金融危機
 

■ オバマ再選で下落したNY株式市場 ■

アメリカはオバマが再選して、金融緩和路線の継続が確定しました。
本来ならば、株式市場がご祝儀相場で上昇しても良さそうですが、
逆にダウ平均は300ドルを超える下落を記録しました。

これは、オバマ再選を嫌気した訳では無く、
米下院で、共和党の過半数が覆らなかった為、
アメリカは年末にもブッシュ減税の終了と、強制的な財政削減の可能性が出て来た為です。

いわゆる「財政の崖」と呼ばれる危機です。

アメリカの金融市場は「財政の壁」回避の為に、
政府と議会に無言の圧力を掛けています。
それが、今回の株式市場の下落の原因です。

■ 「財政の崖」を乗り越えられるか ■

前回のアメリカの危機は、2010年8月でした。

アメリカは国債発行残高の上限を議会が決めています。
国債発行残高がこの上限に達すると、国債の発行がストップして、
図書館など、国民の生活に申告な影響を与えない政府機関から閉鎖して経費の削減が始まります。

2010年8月は、財政拡大を主張する民主党と、
緊縮財政を主張する共和党の意見調整が付かず、
あわや、政府機関のシャットダウンの寸前まで紛糾しました。

結局、共和党が2012年末がいくつかの条件を付けて国債発行残高の上限引き上げに合意します。
この時共和党が付けて条件は次の通りです。

1) 2012年末で終了するブッシュ減税を延長しない
2) 2013年から、幾つかの財政支出を強制的に削減する

「財政の崖」が米経済に与える影響は6000億ドルに上るという試算もあります。
もし、米経済が「財政の崖」を転落するならば、米経済は不景気に突入すると警戒されています。

■ 共和党の仕掛けるチキンレース ■

アメリカ経済は度重なるFRBの量的緩和で、何とか崩壊を免れています。
しかし、FRBの供給したマネーは金融市場に停滞し、
なかなか、実体経済を活性化する事が出来ません。

景気回復が不透明な状況にあって、企業は設備投資を控えており、
民間の資金需要な無い為に、FRBが供給した資金が国民に還元されないのです。
その状況に中で、政府の財政支出が、アメリカの経済を下支えしています。

ところが、財政の削減を余儀なくされると、景気が底抜けする可能性があります。
実体経済に政府が供給していた資金が経たれるので、
国民生活に直接的な影響が出る事は避けられません。

アメリカの共和党は、米国経済と国民を人質に取って、
民主党にチキンレースを仕掛けているのです。

チキンレースに勝っても、民主党に突きつける要求は財政削減ですから、
民主党は共和党と安易に妥協する事は出来ません。

■ きっと崖は小さな段差になるのだろう ■

共和党も米国経済の現状を理解しているので、
きっと、直前になって妥協するはずです。

現状、「崖」と呼ばれているものは、実際には「段差」程度のものになるでしょう。

前回の国債発行財高の上限問題の際にも、
同様な騒ぎがありましたが、実際には危機は回避されました。

■ 小さな危機を繰り返して、大きな危機を隠す詐欺 ■

私は「上限問題」も「財政の崖」問題も、
共和党と民主党のパフォーマンスだと思っています。

回避可能な危機をことさら強調する事で、
人々は目先の危機に踊らされて、
より根源的な大きな危機への注意を怠ります。

前回の「上限問題」では、S&Pがアメリカ国債を格下げしましたが、
市場は、この重大な警告よりも、「上限問題」が解決した事に安堵して、
「米国債の格下げ」をことさら危険視する事はありませんでした。

世界経済の根本的問題は、世界はおよそ返済不能な額の負債を積み上げており、
その多くを、民間から政府に付け替えているという点にあります。

最早、政府や中央銀行が、民間のリスクを肩代わりしている状態です。

しかし、これらの問題の本質は、
「ユーロ危機」の茶番劇や、
「財政の崖」という茶番劇に隠されて、人々の目から遠ざけられています。

市場は、「ユーロ危機」のイベントや、米国財政危機のイベントをクリアする度に、
危機に慣れさせられてゆきます。

「危機だ危機だと言うけれど、大した事無いじゃないか」と考える様になっているのです。

 ■リスクは増大している ■

リーマンショックで露呈した世界の負債は経ていません。
むしろ、デリバティブ残高は増えています。

もう一度、リーマンショック級の危機が発生すれば、
世界経済は確実に破綻します。

既に、リスクを腹いっぱい詰め込んでしまった政府や中央銀行は、
次なる危機で、民間から不良債権を買い上げれば、
政府や中央銀行自信が、債務超過の状態に陥ります(既に陥っている?)

今度危機が発生するならば、その危機はソブリン危機(国債危機)に発展するはずです。

■ 有事のドル買い、米国債買い、円買い、日本国債買い ■

世間では、もし金融危機が再び発生したら、
資金はドルや円に集中すると主張する方も多い事も事実です。

民間の株や債券が暴落し、コモディティー市場も暴落して、
行き場を失った資金は、信用力の最も高い米国債に集まって来るはずと主張します。

確かにリーマンショック時にはドルと円が買われました。

有事のドル買いは理解出来ます。
では、何故、円はドルよりもさらに買われるのでしょう?

■ 円高で儲ける人達 ■

リーマンショック後、日本の株式相場は暴落しました。
売り抜けたのは、外国人投資家と言われる人達です。

買い支えたのは、年金資金やゆう貯資金や、個人の投資家の資金です。

この時円高が進行すれば、売り抜けた外国人投資家建ちは、
為替差益で利益を拡大する事が出来ます。

同様の事は、3.11直後にも発生しています。
あの未曾有鵜の災害の映像を目の当たりにして、
何と、円高に振れたのです。

保険支払の為に円が買われたなどと説明されましたが、
保険などは、震災後時間が経ってから支払われるはずです。

311直後に日本の株式市場は暴落を演じます。
外国人投資家達が一斉に売り抜けたのです。
東京株式市場は、閉鎖すべき所を、開場し続け、
外国人投資家の売り逃げをサポートします。

これと並行して円高が発生していたので、
彼らは損失を為替差益で補てんしたハズです。

■ ドルをファイナンスさせる為の円高 ■

リーマンショック後に、円が対ドルで急上昇した為に、
日本政府は為替介入を繰り返しました。

結果的には、相場はすぐに円高に戻ってしまうので、
日本政府の手元に米国債が積みあがるだけの結果となりました。

日銀は、介入で放出した円を不胎化で回収してしまうので、
円高から抜けられない事は当たり前の事です。

結局、円高によって米国債をより大量に購入できる為、
日本は米国のATMの様な状態で、アメリカをファイナンスし続けています。

それでも、米国債の消化に不安が生じている為に、
前原氏は、日銀が米国債を直接買い入れるべきだなどと言い出しています。

■ 既に世界経済はオワコン ■

結局世界経済の行く末は、米国債が消化し続けられるかに掛かっています。

しかし、中国は米国債保有を減らしてきており、
その分を日本が買い支えています。

日本国債の消化が危ぶまれる中で、
いつまで日本が米国債を買い支えられるのか?
多分、FRBはQE2同様に、米国債の購入をせざるを得ないでしょう。

ところが、今度は再び、「上限問題」がクローズアップされます。
米国債の大量発行は、国際発行上限への到達時間を早めます。

こんな事を繰り返していれば、
いくら楽観的な金融界と言えども、
米国債危機を意識せざるを得ません。

米国債にもしもの事があれば・・・・・そう、世界経済は破綻します。

■ 日本政府の資産は米国債に偏重している ■


米国債購入は外為特別会計で行われる為、非常に不透明ですが、
短期国債を発行して財政赤字が膨らんでも、
政府資産の米国債が増えるので、負債と資産は一見バランスしています。

ところで、日本政府はいざという時に米国債を売却できるのでしょうか?

近年の米国債は「帳簿記載方式」で発行され、
「米国債」という券面を政府が保有している訳ではありません。
多分、アメリカが管理する電子的な帳簿の上で、
所有者が変わる事で売買が成立するのでしょう。

もし、日本の財政がひっ迫して米国債を売ろうとしたとします。
アメリカがダメ出ししたら、日本政府は米国債を売却出来ないのでは無いでしょうか?

それなら、券面が発行されていた古い時代の米国債を売れば良いという人もいるでしょう。
ところが、ネットの噂では、日本政府保有の米国債の券面は、
連銀の地下倉庫に保管されていて、日本政府の手元には無いそうです。(ウワサですが)

もし、このウワサが本当であるならば、
日本政府は、アメリカの許可なくして米国債を売却出来ない事になります。

ドルに次ぐ信用と流動性を持つ米国債ですが、
日本政府保有分に関しては、流動性はゼロに等しいのかも知れません。

■ 米連銀は日本やドイツの金を保管している ■

日本や中国は外貨準備の多くを米国債で保有しています。
この2国だけで、米国債保有額が突出しています。

韓国は、さらに怪しい債権で、外貨準備を運用しています。

ところが、欧米諸国の政府資産の7割近くは、金で保有されています。

しかし、その金の多くがアメリカの連銀の倉庫に保管されているのです。
NY連銀地下倉庫と、フォートノックスの倉庫にあると言われています。

ドイツは1536トンの金を米連銀に預けています。(強制的に預かられているのでしょう)
ドイツ国民はかねてより、この金をドイツ国内に取り戻そうと政府に働きかけています。
さらには、連銀が保有する金が本物かどうか、確認させろと主張しています。
この要求は、連銀に拒否され続けて来ましたが、
とうとう連銀は50トンの金をドイツに3年掛けて返却します。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121107ddm003070070000c.html
(毎日新聞)

しかし、1536トンの内の50トンを3年掛けて返却というのは、
一気に返却出来ない訳があるのではと疑わざるを得ません。

同様に日本政府の金(世界5位の量)も、連銀の倉庫の中です。
日本国債の券面が連銀の倉庫に保管されていても、何ら不思議はありません。

■ クローズアップされる金 ■

ニクソンショックでドルの金兌換が停止されてから、
金に通貨的な価値はありません。
金の価格は、あくまでも需給バランスで決まります。

一方、金兌換停止後の通貨は、物理的制約を受けずに発行出来ます。
ニクソンショック以降、アメリカはドルを大量に発行し、経済を拡大します。

現在の通貨は、「信用通貨」です。
国家が通貨の信用を保証しています。
ここで言う「国家の信用」とは、国の資産であったり、生産力であったり、軍事力であったりします。

国家が消滅したりすれば、通貨の信用も消失します。
ソ連の崩壊で、ルーブルは紙くず同然に暴落しました。

又、通貨を大量に発行し過ぎても、通貨は信用を失います。
単純に、通貨を二倍発行すれば、通貨の価値は1/2になります。(経済成長が無い場合)
実際にドルの価値は、ニクソンショック後から、円に対して1/4に減価しています。

リーマンショック後、FRBもECBも大量に通貨を増刷しています。
当然、通貨の価値は下落するはずですが、
為替レートは相対的な価値(量)で決まりますから、
ドルとユーロが同じ比率で増えるならば、為替相場は変動しません。

実際にはドルの供給量が上回っていますが、
ユーロ危機がクローズアップされる事で、ドルの価値が優位に保たれています。

一方、日銀は量的緩和に消極的なので、円高の傾向が続いています。

しかし、世界の人々は増え続ける通貨に恐怖を感じています。
物の量が一定で、通貨だけが増え続ければ、物価が上昇するはずです。
ところが、世界はデフレで物価は下落傾向です。

では、大量に供給された通貨は何処へ行ってしまったのでしょう?
これらの通貨は、過剰流動性として、金融市場や商品市場を徘徊しています。

米経済は決して回復していませんが、
ダウ平均はリーマンショック前の高値を更新しています。
これは、金融市場のインフレに他なりません。

もし、金融市場に危機が訪れた場合、金融機関は決済の為にドルを手元にため込みます。
ドルの流動性が一気に失われるのです。

当然FRBは大量のドルを供給し、
金融機関は先を争うようにドルを求めます。
ここまでの筋書きは、リーマンショックの時と同じです。

リーマンショックの時は、この後にドルの暴落が心配されました。
大量に供給されたドルによって、ドルの希釈化が生じ、
ドルが暴落するのではないかと思われたのです。
サルコジ大統領や中国はIMFのSDRを基軸通貨にする動きを見せました。

ところが、先述した様に、あらゆる通貨が増えたので、結局ドルの暴落は防がれました。

さて、世界はもう一度同じチャレンジを繰り返そうとしています。

今回も前回同様の結果となるならば、
通貨の信用とは、意外にも強固なものなかも知れません。

しかし、リーマンショック時よりも危機は深化しています。
はたして、今回は大丈夫なのか、誰もが不安を抱えています。

そこで、不安を払しょくする為に、とりあえず金を手元に置いておきたい。

アメリカ共和党も、金兌換制度の検討会を設置しました。
世界は金を無視できない状況に置かれており、
それは裏を返せば、通貨やドルの信用が、失われつつあり事を意味します。


さて、ドルの信用が失われ、米国債が暴落した時、
日本の資産のどれだけが失われるでしょうか?


ドルは暴落すると言われて続けて暴落していません。
(ゆるやかに暴落続けていますが・・・)
これは、ドルに代わる基軸通貨が存在しない為、
ドルを攻撃すれば、金融や貿易な成り立たない為にドルがも守られている状態です。

皆なが持っているから大丈夫。
他の通貨よりは、安全だ。
ドルが無い世界は成り立たないから無くなる訳が無い。

だから、ドルは暴落しないと誰もが自己暗示を掛けているのが現在の世界の姿です。