
二人がショートステイの週末。
例によって、お掃除おばさんへと変身。愚息の下宿へ向った。
・・・我が家を片付けるのが先だろう!という気もするが、もう少しの辛抱・・・と、思いたい。
ドアを開けると、愚息Ⅰは洗濯物をたたんでいた・・・うっそ~っ

調子を崩してから、こんな光景は初めてだったので、ちょっと感動!
台所も綺麗。まぁ、これは忙しすぎて自炊が出来ないからだそうだが、こちらはラッキー!
「いやいやいやいや~。いいね、いいねぇ。わははは!」なのである。
真っ黒けで無精ひげ、どこか精悍な顔つきになって「気ままな一人旅」から帰って来て一ヶ月が過ぎた。
帰るなり「足がおもろい事になった。」と、やおらズボンを下ろして見せられた驚くべき「ツートンカラー」もそろそろ色褪せたようだ。(目の前で脱ぐな!!)
これで、一件落着でもないし、明るい声で「おっと、薬を忘れてた!」なんて、
まだまだ薬のお世話にはならなきゃいけないのだけど、
人混みの中ですくんでしまっていたその足を、一歩前へ進めてくれるのは、
やはり、その人・・・達である事が少しは実感出来たとしたら、いい旅をしたんだよね。
で、この本。
こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」という漫画。
「これ、読みなさい。」と帰り際に差し出す。・・・何で私が偉そうに言われねばならんのだ

「ふ~ん、帰りの電車で読むわ。」と言うと、
「ん~、それはやめた方がいい。」・・・何故かと理由を聞くと
「泣くから・・・。」はいはい、成る程、よくおわかりで。
広島出身の作者が原爆投下10年後、またそれ以降のヒロシマを描かれたもの。
ほのぼのとした、見ていると微笑が知らず知らず浮かんで来るような優しい絵柄。
スクリーントーンは使わずに、細いペンで柔らかに描かれている。
決して、悲惨な生々しい場面が描かれている訳ではない。
「夕凪の街」「桜の国1」「桜の国2」の三つの短編集という形で、頁数も100P程度。
けれど、読み終わった後に「忘れちゃいけない物がある。」「知らずにいてはいけない事がある。」
と、静かに、けれど切々と問いかけ続けてくれるような、そんな作品だった。
映像化が決まっているようだけど、この世界をどう表現されるのかを観てみたいなぁ。
外界から閉ざされているような毎日の中で、本屋めぐりもままならない私にとって、
世間様の新しい情報が主に愚息達からしか得られないというのは、いささか不満でもある。
第一、彼等が幼少の折に「この本読んでごらん。」と薦めた名作達には目もくれなかった癖に、
何で今頃私の方が彼等に薦められた本を素直に読まねばならぬのだ

まぁ、素直に読んでしまう所がいかんのだろうが、この素直さ、ちっとは見習え!・・・え?
それにしても、いちいちツボにはまってしまうのがどうにもこうにも。
弱点を知り尽くされているようで、何となく落ち着かない。
子の言うなりになるなんて、親の沽券に関わるぞ!なんて冗談で言えるうちはいい。
今はまだ思いのままに動き回れて、大声で歌ったり叫んだりできる私ですら拗ねてみたくなるのだ。
かぁちゃん・・・。
自分の心と体が意のままにならなくなった時、悔し紛れに何度も思ったかもしれないね。
それ故に拗ねて、あれこれ困らせてくれたのかも。
やっぱり時代は巡って行くものなのかねぇ・・・なんてちょっと苦笑い。
だけど、巡らせてはいけない時代も確実に有る。
そんな事を思い出させてくれた、そんな一冊との出会いに、ありがとう。