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その蜩の塒

徒然なるままに日暮し、されど物欲は捨てられず、そのホコタテと闘う遊行日記。ある意味めんどくさいブログ。

『一週間』

2011年12月01日 | 本・雑誌
 井上ひさし著「一週間」を読みました。一部満州も出てきますが、話の中心はシベリアの日本人捕虜収容所。最初の十数ページは、かなり取っ付き難い感じがしました。ところが、ダメダネフスキーとか糞尿の話、ハル・ステゴヴナ・ノーソワの名の由来あたりから、ウィットに富んで俄然面白くなりました。収容所には七大地獄というのがあって、寒さや空腹、水汲みといった苦行以外に旧軍隊制度が残っており、上官だけが跋扈するという現実。その上官は労働がないばかりか、捕虜の食事を掠め取るというせこさ。でもソ連側はその方が収容所内の秩序が保てるため黙認。そこへ待遇改善のため苦心惨憺する哲学者が撲殺されるという事件勃発。

 ただの労働力として60万人の捕虜が、戦争の後始末やインフラ等都市整備にと駆り出された挙句、短期間で5万人も死んだ背景には旧軍隊制度が大いに関係しているはずです。当時の軍隊の上層部は、戦時国際法とも言えるハーグ陸戦条規(ポツダム宣言の元となった)を知らなかったんですから。宗教や思想というのは怖ろしいものです。たとえば北を支えてる主体(チュチェ)思想や儒教、オウムの洗脳がすぐ思い浮かぶでしょう。

 そして小説は、軍医の脱走劇、レーニンの手紙を巡る攻防と息もつかせぬ展開をみせます。524ページもの長編小説なんですが、3日で読み終えました。モノ言えぬ捕虜下において、反逆精神が小気味よかったです。最後は残念な結果になってしまいましたが。。

今回も漢字を列挙してみました。
宣撫(せんぶ)~占領地で、占領政策の目的・方法などを知らせて、人心を安定させること。

水呑百姓~百姓は、たくさんの姓を持つ者という意味で、元々は民衆とか庶民を指していましたが、農民の意味は中世から。石高を有するのが本百姓と言われ、持たないのが水呑百姓。貧しくて水しか呑めないという意味で「どん(呑)百姓」も同じ。

粒々辛苦~こつこつと地道な努力を重ねること。米の一粒一粒が農民の苦労の結晶であることに由来。

朗誦(ろうしょう)=朗読、斥(しりぞ)ける、鶴嘴(つるはし)

侠客(きょうかく)~本書で言ってるように、広義には義人と解釈できます。

始中終(しょっちゅう)

面罵(めんば)~面と向かってののしること。

鬼籍(きせき)に入(い)る~死亡する。

玩(もてあそ)ぶ、厖大(ぼうだい)、膂力(りょりょく)~腕力、蔽(おお)う=覆う、迸(ほとばし)る、袂(たもと)

筆誅(ひっちゅう)~欠点や罪悪などを書きたててきびしく責めること。

私淑(ししゅく)~直接に教えは受けないが、ひそかにその人を師と考えて尊敬し、模範として学ぶこと。

清冽(せいれつ)~水が清らかで冷たいこと。

艶福家(えんぷくか)~女にもてる男。

幽(かす)かに、漸(ようや)く、仕合せ=幸せ

灰燼(かいじん)に帰(き)す~跡形もなくすっかり焼けてしまう。

要諦(ようてい)~物事の最も大切なところ。

鉋屑(かんなくず)、適(かな)わない